第3話 懐かしい射的①
僕らはいい大人なのに……とも思いますが、僕も実はうずうずしていました。
数年とは言え、病気療養でこういった行事などにも参加出来ませんでしたから。
長野に来て、まだまだ日は浅いですが……
妖怪さん達の生活事情については、まだまだ初心者ですが……せっかくの催し、沙羅ちゃんのご飯探しもですが、僕も楽しみましょう!
それともうひとつ、
「
賢也君の首根っこを掴んでいた颯太君に聞くと、『ああ』と彼は頷いてくれました。
「事情を話してあるとは言え、あんまり人間がこちらに来る機会は少ないからね? しかも、君達は術師でもなんでもない……言わば、ただの人間。沙羅ってケサランパサランがいたって、興味の尽きない存在だからさ? 僕が術を使って、その浴衣に施したんだよ。『なんともない存在』に見えるように」
「「なんともない存在??」」
「あう」
「そう。言っちゃえば、客のひとり……害のないあやかしか人間かわからなようにさせているだけ。僕も面倒だから自分には掛けているんだー」
だから、他の妖怪さん達……狐さんやたぬきさんのような耳や顔をしている人からは、何も声を掛けられないと言うことですか?
これは、やはり魔法か何かのようで凄いです!!
「凄いですね、颯太君!!」
「ふふーん、褒めて褒めて〜? じゃ、賢也君が待ちきれないようだし、射的やる? お金は普通の日本円で大丈夫だよ?」
「俺はやるで!!」
と張り切った調子で、久しぶりの射的に挑んだ彼でしたが……ものの数分後、落胆した調子に変わってしまいました。
作りは人間側と同じものだったんですが……数発当たるかかすった程度で終わったんです。
「まあまあ、賢也君」
「なんでや……びくともせぇへん!」
「んー? 別に普通の射的だけどねー? ねぇ、お兄さん?」
「へぇ、イカサマなどありやせん。ごく普通の射的ですぜ?」
「
「……沙羅ちゃんをお願いします」
「うーうー!」
せっかくなので、まだ比較的取れやすそうなお菓子にしましょう。
沙羅ちゃんが食べられるかもしれませんし、僕はお金を猫耳の店主さんに渡してから射的用の銃を受け取りました。
『シューくん、頑張ってー!』
懐かしいです。
亡くなった……姉とも一緒に、昔は夏祭りでよく射的や金魚すくいをしたものです。
もうあの人はこの世にいませんが……今は今、としっかり銃を構えてから、引き金を引っ張りました。
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