第2話 界隈の入り口
外見だけだと、ごく普通の浴衣ですね?
「うんうん、出来たね? んじゃ、行こっか?」
今日はお店を夕方にクローズさせたので、颯太君が来るのを待っていました。
颯太君はいつも通りの和装ですが、それがトレードマークのようなものだそうです。
お店に入ってきて、僕らの支度が終わったのを見ますと……まず、お店の外に出るように言われました。
「……どっから、その会場に行くん?」
賢也君はタバコ代わりに果林ののど飴を舐めながら、颯太君に声をかけました。沙羅ちゃんのために、ちょっとずつ禁煙を頑張ってくれているのです。
「そこ」
颯太君が扇子を向けたのは……街道すぐそばにある鳥居でした。長野でもこの地域は大きな神社から小さい神社。石碑などが数多くありますので、道の途中に鳥居があるのも珍しくはないんです。
「そこからですか?」
「あう?」
僕は、沙羅ちゃんを抱っこしているのであやしながら颯太君に聞きました。
「通り道、抜け道。あやかしの世界に通ずる自動ドアみたいなもんだよ? 昼間でも行けるけど……僕がいないと三人とも迷子になるだろうから、絶対後ろからついてきてよ?」
「お、おん」
「わかりましたー」
いざ、あやかしワールドへ!!
颯太君の案内から絶対離れないようにして、鳥居をくぐりますと……静かだった道が、いきなり騒がしくなりました。
なんにもなかった道が、いつのまにか……縁日の入り口に到着していたんです!!
これが、魔法か何かですか!? と叫びたくなりましたが……沙羅ちゃんもいますし、年甲斐もなくはしゃぐのはやめておきました。
「……ほんまに、来た」
賢也君は、来るまで信じられなかったようで口をポカーンと開けていました。
「ふふ。ようこそ、あやかしの夏祭りへ」
颯太君が楽しげに扇子を開くので、僕らは改めて妖怪さん達の世界に来たんだなと実感出来ました!!
「あーう、あう!」
沙羅ちゃんも興味津々で、僕に抱っこされながらも手を前に伸ばしていました。
「そうでした、颯太君」
「なに?」
「ここでなら……沙羅ちゃんのご飯の代わりになるものがあるでしょうか?」
「どうだろう? 沙羅は
そこは、試してみないとわからないようです。
「なあなあ!? 射的とかあるで!!?」
そして、賢也君はやっぱり楽しみにしていたのか……すぐに屋台の内容に飛びつきそうでした。
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