第五章 綿ぼこり祭りに

第1話 お誘い

 夏も終わりに近づき……僕らの天使ちゃんことケサランパサランの沙羅さらちゃんが双樹そうじゅにやってきて半月程。


 食事は相変わらず、コーヒーと豆カスくらい。通常食は、未だに興味を持ってもリバースばっかりです。


 豆離れするのはまだまだ難しいようですねと思っていた時に。元沙羅ちゃんの所有者で、座敷童子の颯太ふうた君がチラシを持ってきてくださいました。



「じゃじゃーん!! あやかし主催の晩夏に開く夏祭りだよ〜!!」



 人間にはありますが、妖怪さん達にも行事があるとは驚きですね?



「夏祭り……ですか?」


「うん! ちょーっと、上と掛け合ったんだけど……柊司しゅうじ君は沙羅の主だし、是非参加してほしいって!!」


「颯太君の上司さん??」


「みたいなものかなあ?」


「……胡散臭いわ」


賢也けんや君……」



 僕は少し興味を持ったのですが、賢也君は心配だからと不機嫌な表情になりました。せっかくのイケメンさんが台無しです。



(……しかし、夏祭りですか?)



 ちょっと病気していた時期もあったので、かなり久しぶりです。昔は両親や姉、賢也君とも縁日などにはよく行きました。



「あーう、あう!」



 沙羅ちゃんは興味があるようで、颯太君が彼女の前でひらひらさせているチラシを掴もうと手を伸ばしていました。



「沙羅も行きたい〜?」


「あう!」


「……沙羅はチラシだけに興味あるんとちゃう?」


「賢也君も夏祭り好きじゃなかったですよね?」


「好きやけど、妖怪がわんさかいるんやで!! 危ないやんか!!?」


「危ないなら、人間誘わないって〜?」



 颯太君はけらけら笑いながら、もう一度僕にチラシを見せるのにカウンターの上に置いてくださいました。そこいらの広告代理店顔負けの、綺麗なポスターを縮小したかのようなチラシでした。



「……あ。開催時期は来週なんですね?」



 書体などは、人間にも読みやすい文字だったのですぐに読むことは出来ました。



「そうそう! 出店の中身は出来るだけ人間に合わせているから、柊司君達でも楽しめると思うよ〜?」


「「出来るだけ??」」


「うん。ちょっと人魂出たりするけど、大丈夫大丈夫!!」



 たしかに……妖怪さんや幽霊関連だと、人魂が出ると思われがちですが……そうですか、本当にあるんですね?


 僕は……僕は!



「ワクワクしますね!!」


「……柊司ぃ」



 何を隠そう、僕はホラー系が大好物なのです!!


 目がキラキラ輝いている自覚がありますが、こんな凄いお誘いに乗らないわけがありませんとも!!



「じゃ、せっかくだから……僕から目くらまし用の浴衣をプレゼントするよ!」



 と言って、既にご用意されていたのか。大人ふたり分と赤ちゃんサイズの浴衣をカウンターの上に広げてくださいました。

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