第4話 格闘ゲーム 対戦開始
「ラウンドワンッ……ファイッ!」
ゲームがスタート。
カイバラはまるで相手の出方を見極めるように、キャラクターを前後させます。2D画面のゲームですから実際には左右に動かすといった感じですが、攻撃する意思は無くむしろその滑らかな動きを楽しんでいるようでした。
女は右指を動かしボタンを適当に押しているだけで、パンチやキックは出せるものの、移動を行えず全く無防備な状態。
「添えている左手のアナログスティックでキャラが動くよ」
カイバラのアドバイスに反応して、ようやくファ・メイが前へと動き出しましたが、カイバラの繰り出す強パンチに、自ら進んで当たりに行ってダウンする始末。
会場からは失笑が漏れました。
ファ・メイが立ち上がるも、これといった反撃もできず、カイバラも得意の「咆哮拳」を一度も出すことが無いまま、カイバラの完勝で一ラウンド目を終えました。
「ブーブーブー」
両手親指を地面に向けて、会場全体がブーイングを鳴らします。
それは女に対してではありません。ゲームの知識などカケラも無い、ホームレス相手にもう少し手加減してやれ、という抗議のブーイングです。
「カイバラさん、もう目隠しして闘ってくださいよッ!」
そんな声が飛び交いました。
「それでも勝っちゃうけどいいのかい?」
しょうがないといった表情を浮かべたカイバラは肩を竦めました。
すると会場が少しざわつき、群衆の後ろの方では踵を返す者が現れ始めたのです。
「観戦する価値もねえよな」
見どころが無いと感じたファンの中に帰り始める者もちらほら。
「ラウンドツーッ ファイッ!」
二ラウンド目——
誰もが一ラウンドと同じように一方的な虐殺で終わると思っていました。ところが実際は違ったのです。
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