前世の恋人


いつもの朝。いつもの寝顔。

私は、姉の事が好きじゃない。


神様の嫌がらせだろうか、姉は目を覚まし、微笑み、私の唇に軽いキスを落とす。こんなことをする姉妹や双子はこの世に私たちくらいだろう。


『おはよう、○○。よく眠れた??』


『うっ、うん...おはよう』


私はあまりこの空間には居たくない、ベッドから起き上がりリビングに行こうとする。


『もう行っちゃうの?たまにのお休みくらい、ゆっくりしてたらいいのにさあ...』


『い、いいの。ちゃんと規則的に生活しないと、私、すぐだらけちゃうから.......』



ガタッ......



『っ、ひゅっ.....お姉ちゃ、』



後ろを急いで振り向くと、姉が起き上がろうと思ったのかバランスを取れず前のめりにベッドから落ちていた。直ぐに戻り、体制を元に戻してやる。姉が座る正面に私は両膝をつく。




『あ、ごめんね?、ちょっとバランス取れなくて』


『出来ないことがあったら言ってって、言ってるよね?!やめてよ....!』


涙が滲んでくる。


『...泣かないの。私が悪かったわ!ごめん。次からはちゃんと言うから....』


頬に手を当てられる。

静かな部屋にガタンっとまた音がたったのだ。次はなんだと、パニックを起こしそうになる。



『ははっ、お隣さんも宜しくやってるみたいだね.....○○、大丈夫。怖くないよ.....』



『私が着いてるんだから』



目にキスを落とされる。



『お隣さん、楽しんでるみたいだね.....?』


姉が言った。この借りている部屋は防音がそれなりにあったはずだが.....何を楽しんでいるというのか.....


『私達もはじめよっか.......』



私はいつも私を見る姉の目が嫌いだった。サラサラの髪も、綺麗な声も、すらっと伸びた背も.......受け入れているつもりで、それらは私を否定するのだから


『?!?!』


押し倒された。床の冷たさが酷く背中をいじめる。私を否定する、世界は私を否定する。



『ねえ、キスして?フレンチじゃいや』


過呼吸を起こしそうなくらいに脈が不安定だ。


『いやっ!!やめ、やめて......お姉ちゃ、やめてよ!』


両手で何とか抵抗する。

......静かになった...??



_____ポタッ。




え......



『え、なんで...?』


『○○は、私が持ってない両手で私のことを否定するんだね.....悲しい.........』


『....!..............あ、あ....ごめんない。泣かないで....ごめんなさい、私のせいで.......私のせいで』


『.....いいの、私が○○の為にしたことなんてっ、ぐすっ、些細なことなんだもん』


目に光がなく、ホロホロと涙が溢れ、泣き出す姉。姉は昔は絶対に人前でなんて泣かない冷酷な人間だと思っていた。でも今は違う、ネジが外れてしまったのだきっと。どうしよう、どうしよう。どうしよう、どうしよう。


『!!違う、ちがう!!ううっ、うっ、うっ』



『.....じゃあ、キスしてくれるのっ、ぐすっ』


人間の皮を被った悪魔が目を光らせて私を喰らいにくる。



『わかった、分かったよ!すぐする、んっ、うん、んっ....ちゅっ』


昔はもう少し肉の着いていた肩に手を置き、キスをする。二人の空間、沈黙と、白いこの部屋と、少しの呼吸音。少し落ち着いたのか姉はいつも通りに戻っていた。


『ふふっ、今日の夜、最後までしようね』


『大好きだよ、○○』




私はしてやられたのだ。

言っておく、私はあんたなんて大っ嫌い。

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