第27話 いつもとは違う夢



 久しぶりにアベル以外の夢を見た

 初めての視点の割には鮮明に残っている

 でも、少しふわふわした感覚で、見ているだけのものだったが、強烈な印象があった。

 それは昨日の惨劇の夢からすぐの事で、記憶が新しいものであったかもしれない。



 惨劇はまだ続く。

 わたしは車列の先頭のトラックを運転している。

 さっきは大きな爆発で死ぬかと思ったが、何とか生き残れた。

 港にたどり着いたら、皆を降ろして戦わないといけないけど、さっきの攻撃を見てて勝てると思う方がおかしいと思う。

 一瞬で皆、死んでいったし、もう終わりかもしれない。


 トラックは目的地を残すところ約1キロのところに来た時だった。

 2台のトラックが港から出てくるのが見える。

 すると、こちらに向かって荷台の機関砲や機関銃を射撃をしてきた。

 こちらも応戦したが、こちらの機関銃とは比べようもないくらいの大きな弾がトラックに当たって、衝撃で道の脇に横転しながら突っ込んだ。


 トラックの車列への射撃は止まらず、後ろのトラックは燃え上がった。銃弾の雨と砲弾でボロボロになっていく。 


「もうやめてくれ。」

 私はトラックの無くなったフロントガラスの部分から外に出て、トラックの陰でうずくまる。


 すると、ボロボロになったトラックが、大きな音がして森の方へ吹っ飛んだ。

 続けて、同じように海の方から森に向けてトラックが吹っ飛ぶ。

 4台目だけ、吹っ飛ばずに爆発して燃え上がった。


 やっと止まった攻撃だったが、もう戦う気力は無く、恐怖でうずくまるしかなかった。

「もうごめんだ。家に帰りたい。」

 暴れるだけの集まりだとは解かっていても、参加するしか生きて行けないのでやってただけで、本気でやってた分ではない。


 生き残ったものは僅かで、10人くらいだろうか、拡声器で投降を呼びかけている。


 わたしはその場で手を挙げて拡声器の方向へ歩き出す。

 今までお互いに裏切らないように牽制していた他の仲間など、どうでも良くなっていて、助かるために大きく降伏する意思を見せる。


「わたしは何もしていない。運転していただけだ。」

「殺されたいか。静かにしろ。」

 軍の兵隊が出て来て死ぬかもしれないと思った。

 わたしを押さえつけて手錠をかけられた。


 他の仲間もわたしを見ても何も言わず、手を挙げるなり、腹ばいになって降伏していく。

 中には殺されると思い込んで、頑なに陰から伺っていたが、隠れているところを見つかって捕まった。


 指揮官が生きていたら、ここから出たとしても殺されるだろうけど、そうはならなかった。

 船の奴らが殺したと言っていた。

 仲間内では絶対に言わないが、死んでホッとしたに違いない。

 殺してくれたことに感謝したいくらいだ。


 丘の向こうで黒焦げになった奴は気の毒だが、生き残った奴もいた。

 軍のキャンプでトラックに載せられ、刑務所へ直接連れていかれて、犬小屋のような鉄の檻に放り込まれた。

 扱いは悪い。

 仕方ない、わたし達は悪いことを散々してしまっていたから。


 これで刑務所で大人しくしていれば、いつか帰れる日が来るかもしれない。

 叶うならなんだってするのだが。




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