第25話 上陸



 貨物船はギニア湾を東へ航行している。

 ここまで何度か襲撃が更にあったが、同様の対処で撃退した。

 中には、先日のような大きな規模ではなく、何隻かで襲ってくるようなものもあったのだが、これはポッと出の何も知らないで襲ってきた奴かもしれない。


 大きい規模では軍の哨戒艇が出てきたが、それもこの船の高射砲で沈めてしまった。

 哨戒艇が燃え上がる様はすさまじかった。


 まさか貨物船に高射砲のでかいやつを積んでいて、撃ってくるとは誰も思わない。

 相手もやる気満々の機関砲を積んでいたが、コンテナから出てきた高射砲で撃たれた時には血の気が引いたに違いない。


 船の予定ではカメルーンの南の方にある陸地が目的地となっている。

 そこから内陸へ少しのところへ荷物をトラックごと置いてくるまでが依頼となっている。

 この時は戦車は無いはずで、装甲車かテクニカルが敵になるはず。

 陸で最も気を付けないといけないのが、ロケットランチャーと機関砲かもしれない。


 そして、最も危険な時が、陸へ荷物を下す最中だろう。

 接岸して荷物を降ろしている時に襲われるのが、一番不利になる。

 おそらくは、港に船を着ける瞬間をどこかで見張っているような気がする。


 先ずは、できるだけ叩いておきたいが、出てこない以上叩けない。

 あっさり、船は捨てて陸戦に集中するか。

 接岸して敵が現れるようなら、直ぐに離岸するか。

 幸い、タグボートが無くても接岸できるように牽引ロープを予備まで用意してある。


 積み荷を降ろす人夫やクレーン、トラックは手配が出来ているはずで、港に着く前に現地にいるはずだ。


 その人達の情報をできるだけもらってから上陸するようにしようという事で、エッカルトと特殊部隊の連中と僕とで、先にボートで港に向かう。


 その間に、船の左舷に高射砲や対空砲、機関銃を残った人員で並べて、陸からの攻撃に備える。



 港には軍の関係者、港湾職員、現地の運送業者、人夫頭、地元の有志などが集まっていて、我々の到着を待っていた。

 物資を降ろす用意も整っていて、いつでも運んでいけるそうだ。

 ただ、予想した通り、この諸国周辺に勢力を持っている武装勢力が、この船の荷を狙って、この近くで駐留しているという。

 おそらくは、輸送中に襲うか、荷降ろし中に来るだろうという事だった。


 そもそも、この船の荷物はそれほど重要な先端技術や武器は積んでいない。

 高価ではあっても、一つ一つは重要な物資と言うわけではない。

 強いて言うならば、国を安定させるためのインフラを整備するための物資である。水道事業や高速道路事業、空港や石油事業等、いくらやっても困らないくらいの地域なのだ。

 そして、それらの事業を展開して困る人たちが妨害をするために物資を狙って襲ってくる。

 表に立ってやっているわけではないが、この国の資源を狙う他国の支援を受けているに違いない。

 この国を混乱に陥れるのが目的なので、狂った行動は殺してしまうまで収まらない。



 エッカルトは武装勢力がどの程度の力を持っているか把握していた。

 近くで駐留している軍は400人程度。

 車両は装甲車とトラック等が30台あり、移動は早い。

 機関銃や擲弾で武装した農民だが、指揮官は他国の軍のエリートだ。

 この港から北へ50キロのところへ駐留している。

 今頃はこちらに向かう準備をしている事だろうと言う。


 相手の目的は物資を奪うか、破壊するのが目的のはずなので、降ろしてしまって、荷物が各地へ散って行く前に襲った方が良いに決まっている。

 なので、この近辺で必ず戦闘になるはずだ。



 しかし、エッカルトは違う見方をしていた。

 どうせ戦闘になるならば、こちらが有利になるようにした方がいいので、こちらから仕掛けると言った。


 大まかに言うと、駐留しているところを挟撃して煽ったら、こちらまで誘導してきて、有利なところで叩いてしまうという作戦だった。

 その中で重要なのが、その組織の中心人物達の殺害を含む壊滅に追いやって、他国の侵略の尖兵を砕く事。


 彼の図では、リストが挙がっていて、全ての破壊が終わるまでが、私たち傭兵の今回の渡航の仕事になる。

 僕としても、家族を守る事にも繋がるので、是非ともやり切って帰りたい。


 その手始めに、武装勢力の殲滅である。

 軍の協力が不可欠であるが、表立っての行動が限られるため、燃料、爆薬、機材の提供がされた。


 運送業者は安全が確保できるまでは、申し訳ないが待機してもらうことにした。いくら何でも、襲われると分かってて運ばせるわけにはいかない。

 地元の人たちには避難してもらった。

 出来るだけ遠くが良かった。

 運送業者と地元民に内通者がいるかもしれないので、近くに置きたくないというのも理由の一つだ。

 なので、港湾内でいるトラックや施設は念入りに調べておいた。


 そして、軍と港湾施設の人間だけになったところで、行動を開始する。

 先ずは、ここへ武装勢力のトラックが来ることを想定して、ここの3キロ手前でIEDを仕掛ける。

 フランスから持ち込んだ大量の硝酸アンモニウムと軽油で大量の爆薬を作ってを4ガロン缶に詰めて、無線の起爆装置と一緒に道路脇にショベルで埋めていく。

 約200メートルに渡って仕掛けられた爆薬に、一瞬でトラックの列は半分が無力化されるだろう。


 軍の兵士に、周囲から敵が来ないか見張りを頼んで、僕たちは作業を進めていく。

 その日には少ししか荷降ろしが出来なかったが、戦いの準備は整った。




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