第21話 見えない敵



 あれから、夢の中ではっきりとした意識を持った時に、突然、覚めてしまう事が多くなった。

 続きは見たいのに・・・。


 パターンは、はっきりとしてきた時に深呼吸。

 大声とか、運動とかは関係ないようだった。

 忘れてて深呼吸をして目覚めてしまうと悔しかった。

 DOQN嫁がうるさいって、鼻つまんで起こされない限り、寝言も鼾も無いはずなので、静かなものなのだろう。


 あ。そうそう。

 うちの嫁。意外とピュアでした。

 DOQNなのは兄のせいもあって、大人しくしていられないらしくて、自然とこうなったとか。

 いや、信じよう。

 たまにキュンとなる所を・・・見せてあげたい!


 それから、喧嘩したら殺し合いになるとか、無いと思う。

 少尉のアレは照れ隠し?のような気がする。

 だって、めっちゃ女らしいよ?

「やだ。怒らないで!」とか、悶えるよ?



 それは置いといて。


 夢では少々問題が起きていた。

 はっきりと誰とは判明しないのだけれど、荷物にいたずらをされるようになった。

 最初はコンテナの税関検査に掛かる時に、デタラメなタレコミがされた。禁止薬物とか、迷惑過ぎる。

 それから荷物が妨害を受けたり、家に銃弾が撃ち込まれたり。

 そんなことがあり、しばらくプラハへ引っ越すことになった。


 またマフィアのボスの家に行き、挨拶すると歓迎してくれた。マフィアに属することは無いが、友人としてならいいと思う。


 仕事に関しては、おじさん関連の仕事を重点に置いて、鉄鋼業の機械とか資材の販売を主にしようとしている。

 少しならチェコ語もわかるし、親世代の人ならドイツ語も解かる人は多かったし、それほど問題にはならないだろう。



「お久しぶりです。少尉。」

 僕は新しいプラハの家で電話をかけている。


「少尉はやめろ。今はただの傭兵だ。エッカルトって呼べ。」

 少尉の名前はエッカルト。元上官だ。

 久しぶりの会話に心臓がバクバクしている。

 瞬間的にソ連やハンガリーでの事が思い出してくる。


「エッカルトさん。お元気でしたか?」


「相変わらずだ。今はアフリカで傭兵してる。」


「アフリカ?」

 アベルにとってはアフリカは偶然ではない一致がある。

 例のマフィアが、アフリカで何やら、きな臭い事をやっているという情報があったからだ。


「俺も、まさかお前と話すことがあるかと思って驚いてるよ。

 お前、問題を抱えているだろう?」


「なんでそれを知っているんですか?」


「お前、最近、税関検査でやらかしただろ?あれはしくじったかもな。」


「えっ?」

 そんな事まで知っているとは思ってもいなかった。


「そん時の検査官がマフィアの仲間でよ、お前の事を逆恨みしてるぞ。」



「獄中から傭兵に依頼してたらしいが、みんなお前を襲うなんて有得ないから断ったけどよ。」

 そういう事か。

 ありがたい話だ。

 今になって、必死で守った仲間に助けられる。


「それでも、その辺のカス共までは止められねぇからな。」


「ありがとうございます。何とお返しすればよいか・・・。」


「それよりか。アフリカへ荷物を運ばねえか?」

 よし。何でも受けよう。


「アフリカですか?運べますけど、地域によります。行けるところまでなら聞きますよ。」


「いや、そんな難しい地域じゃない。モノもクリーンだ。ただ、海賊が出る。それも正規兵並みのな。」ちょっと歯切れが悪い言い方をする。

 という事は、海賊だか、正規兵かもしれない軍隊と戦う用意をしろと?

 少尉らしいというか、いつもながら危ない仕事をする人だ。


「・・・。それは難しい地域と言いませんかね?」


「そっか。わははは。俺らにとっちゃあ、難しい地域ではないからな。」

 それを難しいと言うんです。


「何をお手伝いしたらいいんです?」


「金は即金で出るだろう。

 運ぶモノのリストは直ぐに送る。

 コンテナはフランスの港に運んでから出ろ。

 部下が細工して船に乗せるから、書類を作ってくれ。

 船はこっちが用意する。

 船の検査は困るからフランス船籍だ。

 目的地はカメルーン。3週間後だ。

 食事は出るぞ。」


「あ。それはひょっとして、もう私が乗ることになってます?」


「乗せようと思って、連絡したんだよ。」


「そりゃ、お誘いを受けたら乗らないわけないですけどね。むしろ行きたいですからね。」


「もう気が付いてると思うのだが、マフィアの本拠地があっちにある。ついでにやっちまおう。」


「確かに。という事は。少尉も船に乗るんですね?」


「ああ。」

 一息あってから、自慢げに続ける。

「それから・・・いつものメンバーを集めてある。」


「なんですって?すごいな。」

 これにも驚いた。生きていたんだな。ただでは死なない人ばかりだったけど、流石にすごいと思う。


「あー。実はな、偶然なんだけど皆、そのマフィアを潰したいか、カメルーンに用事のあるやつばっかりなんだ。」

 そうなんだ。カメルーンに用事とは・・・?

 今はわからないけど、いいや。そのうちわかると思う。


「じゃあ、遠慮なく仲間に入れさせていただきます。」


「早めに頼むぞ。運ぶモノが多いからな。」




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