第3話 どこかの街並み



 この夢だけはいつも西洋だ。

 街並みはすべて石か木で造られていた。屋根は明るい茶色で、植木鉢のような色だ。

 行き交う全ての人が白人らしい白い肌で髪の色は明るく、目の色も明るい色をしている。

 僕のように黒い髪の黒い瞳の人はいない。服はいろんな人がいて決まったスタイルは無いんだけど、日本ではありえない服だった。


 この夢を見ていることで気になるのがもう一つ、匂いが感じられない事。

 どちらかといえば、匂いには敏感な方だと思っていたので、当てが外れた気分になる。

 もしかしたら、鼻だけ自分の部屋の匂いを嗅ぎ取っていて、個々の匂いには関係なくなっているのかもしれないな。

 見せられる部分によっては腐った残飯や野菜、動物の死骸なんかも出てきたから、案外、そのほうが良かったかもしれない。


 荒れ果てた市街区に行くと、なぜか茶色い袋があちこち並べられて置かれていて、血がついて気持ち悪い。

 よく考えてみると青ざめる。

 それ以上考えるのは、止そうと思う。


 それから、なんかマニアックな檻付きの墓とか、変な儀式みたいなものを見せられるとげんなりする。

 真新しいお墓に鉄格子のようなものを被せてある。

 なんだろうね。何かに恐れているような、そんなイメージが沸くけど、実際はどうなんだろう。


 決まって僕の見ている世界は、人に乗り移ったようにその人の見ているものを僕が見せられる形だった。

 ただ、少しだけ感情を表に出すことができるらしい。といっても、同じ感情の時にだけみたいだ。

 こんな暗い世界で同じなんてごめんなんだけど。


 だからかその檻については、なんとなく理解できた。単なる泥棒除けみたいだ。

 泥棒?そっちの方が解らなくなるけど、彼らにとっては奪われる対象が身内の亡骸ということもあって、切実な気持ちというか、必死なのが伝わってくる。


 まあ、そうだよね。よくわかんないけど。


 身内を失って深い悲しみの淵にいる。そういう人の気持ちをなんとなく理解した気がする。

 僕にはまだ身内で死んだ人はいない。

 祖父母も親も兄弟も。

 その時が来るまで、まだ時間はあるようだし。


 それらの体験は、僕を悲しみに突き落とすことなく体験させる。

 そこには、いくつかズレがあるかもしれないけれど、この後の体験では怯まずにいられる良い経験となった。





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