それぞれの世界

シヨゥ

第1話

「世界だと思っている世界は、その人の中にしかないのさ」

 焚き火を囲みながら団らんの中で、話を求められた兄弟子がそう話しだす。

「世界は脳で作られる。五感をすべて使って収集した情報を統合して脳で作るもの。それが世界だ。それぞれの脳で作り上げるものだから世界は無数にある。これは分かるか?」

「なんとなく」

「同じ脳は絶対にない。だから同じ手順を辿って作られた世界は存在しない。つまりこうやって同じ世界を生きているようで俺たちはバラバラな世界を生きているんだ」

「それってなんか悲しい」

 誰かがポツリとそう漏らす。

「そうだな。同じ世界を生きられないのは悲しいな」

 兄弟子もそれに頷く。そして、

「だから言葉を交わすんだ。自分の世界を知ってもらうために。そして理解してもらうために」

 と続け、

「だから俺たちは理解しようと努力しなければならない。そして他の世界があることを認めなければならないんだ」

 そうまとめた。周りを見ると誰もが頷いていた。かくあるべし。そう思ったのだろう。

「ということでみんなの話も聞いてみたい」

 そう促されると逃げるわけにもいかず。ひとりひとり身の上話なんかを始めた。

 ぼくも2、3エピソードを披露することになりなんだかんだで盛り上がった。

「今日はみんなの世界が知れて面白かった」

 そう兄弟子がまとめたように普段見ぬそれぞれの顔が知れた一夜だった。こんな一夜がまたあれば。そんなことを思ってしまうほどにいい夜だった。

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それぞれの世界 シヨゥ @Shiyoxu

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