第2話 遊び人、途方に暮れ……ず
「はあ……これからどうしよう」
ドラグロアの中央公園、その噴水前のベンチに腰掛け、勇者パーティーを解雇された遊び人・ヴァルス・ナバールは大きなため息をついた。
クロードたち一行は、公爵からの手紙を握りしめながら呆然とするヴァルスに見向きもせず、そのまま宿を去っていった。そのまま、このドラグロアを出発し、北のアーベルハイムに向かったという。
しばらくして、気の毒に思った宿屋のおかみさんからあと1泊は泊まっていいと言われ、従業員に促されてヴァルスは部屋に戻った。……が、1時間後、様子を見に来た娘さんのお尻を触ったことがばれ、即刻叩き出されることとなった。
宿屋を追い出されたヴァルスは、まず銀行に行った。
しかし、30万Gほど預金されていた口座はすでに公爵家によって凍結されており、1Gも引き出すことはできなかった。
財布に残る320G……。これがヴァルスに残された財産だった。
1Gあれば、パンを買うことができる。
安い宿であれば、1泊30Gで泊まることができる。
だから、320Gあれば、とりあえず今日、明日、路頭に迷うことはない。
だが、銀行を後にしたヴァルスが向かったのは、この町唯一のカジノだった。
遊び人らしく、ルーレットやスロット、ポーカーゲームと遊びつくし、気が付けば320Gは……
なんと!70万Gになった……。
「……お客様。ど、どうかご勘弁願いたく……」
カジノ店が誇る最強のディーラー相手に、ポーカー勝負で15連勝した後、黒々としていた毛髪が一気に抜け落ちてしまったハゲ支配人に懇願され、ヴァルスはカジノ店を後にした。
なお、金は新たに作った口座に預金し、財布には元の320Gが残されている。
「よし!こうなったら剣に決めてもらおう」
この中央公園は東西南北の各門からの道が交わる場所である。
ヴァルスは、祖父から貰った大切な氷雪剣を抜き……上空へ、高く放り投げた!
カラン……
石畳の路面に落ちた剣の先は東に向いていた。
ちなみにだが、この氷雪剣、公爵家の秘宝の一つであり、売ると1億Gは下らない名剣である。
もちろん、こんな使われ方をしていいようなものではない。
「東……だな。でも、なんか嫌な予感がするから、西に行こう」
ヴァルスはベンチに置いていた魔法かばんを肩にかけると、西門に向けて歩を進めた。
そして、そのままどこにもよらず、町を出た。
魔法かばんの中にはエロ本はあっても食べ物や水、寝袋といった旅に必要なアイテムは一切入っていない。加えて言うなら、地図も入っていない。
しかし、何のためらいもなく、夕日が沈む西に向かってヴァルスは進むのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます