とある御宅の怪備忘録
秋来一年
とある御宅の怪備忘録
らのちゃんのお誕生日、今年はどうやってお祝いしようかな。2021年11月頃、そう考えてらのちゃんとの思い出を振り返ろうとしたのだけれど、最初の一年については活動一周年記念でもうすでに怪文書を錬成してしまったし、その後というとらのちゃんの活動は徐々に縮小されていった印象があって。だから、思い返されたのはらのちゃんに関する記憶よりも、その魂である〝あなた〟に関する記憶ばかりだった。
そこで私はふと、あることに気づく。
あれ、らのちゃんの誕生日ということは、あなたの誕生日でもあるのでは。と。
らのちゃんの誕生日はきっとたくさんの人がお祝いをするのだろうし、だったら私くらいはあなたの誕生日を祝ってもいいのでは? なんてことを考えたりして。せっかくだからと、何がせっかくなのかは自分でもよく分からないままにあなたとの思い出を振り返ってみた。が、思っていた以上に気持ちの悪い上に独りよがりの文章になってしまった。なので、お祝いのメッセージではなく、もう私個人の備忘録として公開することにする。
あなたについて書くとは言ったものの、オフで対面しているときもあなたのことはらのちゃんと呼んでいるので、ここからはいつもみたいにらのちゃんって呼ぶね。
【2019年2月23日】
初めてらのちゃんと会ったのはこの日だった。正直緊張と、純粋な時間経過であまり詳しく覚えていないのだけれど、とにかくふわふわと夢見心地で、生きてるといいことあるんだなぁという気持ちと、せっかくの機会なのに緊張でろくに喋れていない自分への不甲斐なさみたいなものは何となく覚えている。隣に座っている女の子から本山らのの声がしていて何だか不思議な心地だった。あの時はジュースを飲んでいたらのちゃんが22歳に……時の流れは早い……。
お店を出てからの道すがら、「よければまた遊びましょう~」みたいに言ってくれて、緊張でろくに喋れていない自覚があった私は「え?! また遊んでくれるんですか?!」って結構ガチ目に驚いた覚えがある。あの時はとても嬉しかったです改めてありがとうございました。確かお家が近いと分かったのもこの日だったかな。
【2019年6月8日】
初めてのオフラインコラボということで、この日もすごく緊張していた。
この怪文書を書くにあたってDMを見返したら、「(配信前に打ち合わせもかねて)カフェとかで軽くお茶しませんか?」みたいなやり取りをしていたんだけど、確か本屋さんでラノベ見てからカラオケに行ったような気がする。カフェ、記憶にないけど記憶にないだけか? もっと早く備忘録作るべきだったな……?
カラオケに行ったら、なぜかファミリー向けの遊具がある部屋に通されて、なんかシュールだった。配信は私のスマホ一台だけで行ったので、音量の関係で二人の距離がめっちゃ近くてどきどきした。無駄に広いカラオケボックスの一室で、推しがすぐ隣にいるんだぞ。オタクの情緒めちゃくちゃになるわ。二人で恋愛サーキュレーションをデュエットした流れは今にして思うとわけわかんないけど、歌詞が状況とリンクしていることに後から気づいて帰りのホームで一人にやけていた。神様ありがとう運命のいたずらでも巡り合えたことが幸せなの。
【2019年9月14日】
オフラインコラボ二回目。この日のメインはフライ先生の原画展だったのだけど、時間に余裕があったため、青山ブックセンターに行ったり、ポムポムプリンカフェに行ったり、なんていうかもうデートと言っても過言ではなかったと思う。(過言)
この時もやっぱり私は緊張していて、っていうかそもそも会話のデッキが貧弱なので緊張してなくてもあまり喋るのは上手くなくて、だから一緒にいて楽しんでもらえているのか不安に思っていた。だから、「友達と遊んでるだけで配信ができて、一石二鳥、みたいな」というような旨の言葉(詳細は忘れた)に大分ほっとした。
この時期には本山らのさんの動画投稿等の活動は縮小気味になっていて、実は私は、らのちゃんのラノベへの熱も少し落ち着いてしまったのかなと、内心思っていた。でも実際にはそんなことはなくて、インターンに行ったりなんだりと、ラノベへの愛はそのままに、編集者になりたいという夢の実現に向かって進んでいることが分かった。素直に、すごいなと思った。尊敬した。
私は元々vtuber本山らのさんの、可愛い声、言動から感じられる聡明さ、目標へ向かって進む行動力、そしてライトノベルへの真っすぐな愛が好きでファンになった。目の前に座る女の子は、それら全部を持っていた。
配信が終わった後、ねぎしで牛タンを食べた。前回のオフラインコラボでは配信後すぐに解散してしまったので、まだ一緒にいてくれるんだ! って嬉しかった。
私は食べるペースがそんなに早くなく、らのちゃんを待たせてしまいそうだったのだが、「じゃあ、私がごはんをおかわりすればいいんですよ」という天才的発想で同じくらいのタイミングに食事を終えることができた。らのちゃんは天才。いっぱい食べる女の子っていいよね。
【2020年2月2日】
宅飲みコラボである。らのちゃんが、私の家に、きた?! 今考えてもわけわからんな。推しが家に来る。え、なに。やば……。
らのちゃんと、ライトノベル以外の共通の話題が見つかったのも、確かこの頃だった。詳細は省くが、ラノベ以外でも、好きなものについて語るらのちゃんは生き生きしていて可愛いということだけお伝えしておく。お酒が飲めるようになったらのちゃんと、私の家の近くにあるイタリアンのお店で色々と話すのは楽しかった。宅飲みコラボも楽しかったので、情勢が落ち着いたらまたやりたいですね。
【2020年2月28日】
それなりの人数だった&私とらのちゃんの席が離れていたこともあって、あまりらのちゃんと会話できないままお開きとなってしまった。(その分ほかの方とお話ができたので会自体は非常に楽しかったです。)みんなでぞろぞろと駅に向かい、いつの間にからのちゃんとはぐれてしまった。一緒に帰れるんじゃないかってちょっとだけ期待していたけど、まぁ仕方ないか。そう思っていた私の元にLINEの通知が。
「せっかくなので一緒に帰りませんかー?」
いや、もう、好きになっちゃうじゃん。ずるくない? っていうかもう好きだったわ。はー。
ところがここで、想定外の事態が起こる。なんと、なかなか合流できなかったのである。
「もしかしたら別の改札から入ってしまったのかもしれません。ホームで待ち合わせましょう」「では、4番ホーム待ち合わせで」「1号車付近に出てしまったので真ん中の方まで向かいます!」「電車きちゃいましたね、乗りますか?」「次でも大丈夫ですが、何号車付近にいますか?」「いま2号車です」「すれちがっちゃいました……!」
やってきた電車が、ホームにいた人を乗せて去っていく。降りた人々が階段を降り、ひらけたホームでようやく出会えて、なんだかおかしくて笑ってしまった。
次にやってきた電車に乗って、ふと思った。これは次の遊びの約束をいれるチャンスでは、と。私は人を遊びに誘うのが苦手で、でもほしいものは自分から動かないと手に入れられないから。
「あの、この前の配信でみなさんにいただいたお酒、結構まだのこってるんですよね。よければ、半分くらい飲んでもらえると嬉しいなって思うんですけど、」
でも、今日はもう遅いですし、取りに伺うのは……と至極まっとうな返しをするらのちゃんに、私は言葉を重ねる。
「あ、えっと、そうじゃなくて、よければまた、オフラインコラボしませんか? 宅飲みでもいいですし、遊びに行ったときにお渡しするんでもいいですし。あ、でもそれだと荷物になっちゃうか……」
その日の私は珍しく積極性を発揮し、3/13に二回目の宅飲みの約束をしたのだった。しかし、結局その約束は叶わなかった。新型コロナウイルスの感染拡大が、ついに日本でも起こってしまったのである。
【2021年2月3日】
あのあと、オフラインコラボは難しい情勢となってしまい、そうこうしているうちにらのちゃんは大学三年生となっていた。6月にオンラインコラボをしてから半年ちょっと。らのちゃんからLINEがきたのはそんな時だった。
なんでも就活の課題について、アドバイスしてほしいという。もちろんいいけれど、なぜ私に? 私なんかに頼んでよいのか? そう思う私だったが、私に頼んだ理由はらのちゃんからのメッセージ中に書いてあった。
「私の友達の中では、一番文章力が高い方だと思っているので……!」
ソファの上でね、身悶えましたね。嬉しくて。私はとても心の醜く自己肯定感の低い人間なので、(らのちゃんは作家さんや編集者さんといった文章のプロの方と交流があり、かつ、とても賢い子なので、私以外の人にも同じような文章を送っているのかもしれない)と、とても失礼なことを考えて気持ちを落ち着かせようと思ったけどまぁ無理でしたね。だって文章の前半部分だけで、友達認定されているだけで嬉しいんだもん。そもそも年下の可愛い女の子に頼られて嬉しくないやつおる?
【2022年1月6日】
この日は関東にしては珍しい雪の日で、私の誕生日だった。外は凍えそうなくらい寒いけれど、前々から楽しみにしていたケーキの食べ放題は諦めたくない。雪の中お店までやってきた私を待っていたのは、「従業員が安全に帰宅できるよう、閉店時間を早めます」という張り紙だった。ケーキ食べ放題は、雪のせいでその日に限り、一時間以上前に締め切られていた。とてもとても悲しく、いい年をした大人がケーキを食べられなかったくらいで泣きそうにへこんでいるのも我ながらキモくて本当に最悪だったのだけど、らのちゃんからLINEがきて一気に最高の誕生日になった。
推しに誕生日を祝われるとか、前世で私はどれほどの徳を積んだのだろう。らのちゃんは不思議と、私が落ち込んでいるときに連絡をくれる気がする。
心に映りゆくよしなしごとを書き綴ったら、マジでとりとめもなくただただ気持ち悪いオタクの日記が生まれてしまった。隙がないのに延々と自語りをするオタク……。ただまぁ、個人的には忘れる前に書いとけてよかったなと思うし、せっかく書いたから公開するか~くらいの気持ちで出してみようと思う。問題があれば消すので言ってください。あ、一番大事なこと言い忘れてるね。
らのちゃん、22歳のお誕生日おめでとう!!! 素敵な一年になりますように。
おわり。
とある御宅の怪備忘録 秋来一年 @akiraikazutoshi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます