13「飲み会をストーク(捕食)」

 三人は屋敷に戻り応接ダイニングに入った。ワインとオードブルを楽しんでいると、ほどなくして来客用のディナーが運ばれる。

「じゃ、ゴチになるぜ」

「先に頂きます」

「うむ。今日の目標、セルモンティ・フランチェスカは教会に通っているそうだ」

「そっちはデメトリアの専門だなー」

「調べておきました。西の管轄で奉仕活動に参加しているようです。その関係でレイ西・カチェル教会に通い近くの孤児院なども手伝っているとか」

「デメトリアはどのように係わっているのだ?」

「教会騎士に登録しておりますので、そちらのクエストで奉仕しております」

シスター修道女の補佐もしてんだろ?」

ヒール癒しグレースも少しは使えますから」

「そのレイ西・カチェル教会について情報を集めてくれ」

「分かりました。信心深くお優しいお方と評判のようですね」

「そうだろ、そうだろ。さすが我が君だ」

 次々に運ばれてれる料理を片付けつつ、カールラはワインをボンボン開けた。シルヴェリオは冒険者話などに耳を傾ける。【サンクチュアリ】の活動はいずれダンジョン外にも及ぶと考えていた。先を読まねばならない。


 ほどなくしてチェレステが帰る。

「ただいまニャーン」

「早かったな。どうだった?」

「健全な学生さんたちニャン」

 どうやら羽目を外して,おかしなゲームなどは強行しなかったようだ。

「凄いご馳走ニャン。ずるいニャン」

「悪かったな。すぐに用意してくれ」

「かしこまりました」

 イデアはうやうやしく頭を下げた。

「悪いなー。私たちいつも酒場ビールだしな」

 ビールは庶民の飲み物だ。貴族の子弟たちが何をたしなんだのか、シルヴェリオは興味が湧く。

「学生どもは何を飲んでいたんだ」

「ホッピーニャン」

「!」

 そのような酒の名を聞いたことがない。シルヴェリオは敗北感に顔を歪めた。今、眼前になら並ぶのはたかだか二十年物のワインだ。

(高級酒か? 恐るべし、冒険サークル【サンクチュアリ】……)

 落ち込むのはホドボトにして続きを進めねばならない。シルヴェリオは不安になった。

「その……、どのような感じだったのだ? 酔ってたとか……」

「アルコール度数高めを飲んでたニャン」

「女子たちを酔わして何をするつもりなのだ!」

「男子は皆ベロベロだったニャン。女子たちは強いニャン」

「酒豪令嬢か……」

 シルヴェリオひとまず安心する。懐から硬貨の入った封筒を取り出す。

「これが追加の報酬のだ」

「ごっつぁんニャン」


「さて――」

 チェレステの胸から追跡光球出てきて、それはテーブルの上に浮かび大きくなった。そに打ち上げ会の様子が映る。シルヴェリオは手をかざして特定の映像を決めた。

「ぼんやりとだが情報をつかめる」

「シルヴはそんなスキルばっかりですね」

「壁に耳あり、扉の隙間に目ありだな-」

「有力なスキルだよ」

「使いようだよなー」

 長いテーブルに男女が差し向かいで座っていた。フランチェスカは新人なので端にいる。隣は学院の広場で話しかけてきた女子だ。向かいの男子は背中しか見えない。

「こいつはしきりに話しかけている。狙っているな。間違いない」

「幹事だから気をつかっているだけニャン」

「こいつはフフランチェスカの方ばかりなめ回すように見ている。許さんぞっ!」

「もぐっ……。その隣にいる女子が気になってるみたいニャン」

 チェレステは料理にパクつきながら答えた。

「やれやれ。せっかく情報を得ても分析がこれじゃなー」

「先入観が先に立っていますね。もう少し客観的に考えねば」

「そうか……」

 シルヴェリオは自身の前のめり感を反省する。すると突然フフランチェスカが隣の女子と爆笑した。

「! 何を笑っているのだ?」

「ダンジョンでの戦いを面白おかしく話しているニャン。もぐ……。リーダーが頑張ってるニャン」

(令嬢の気を引くための話術か。なかなかしたたかなリーダーだな)

「スゲー盛り上がってるな。冒険者の酒場もこんな感じだぜ」

 シルヴェリオは猛烈な疎外感に襲われた。自分の世界とはずいぶんと違う世界だ。冒険者のノリとはこんな感じかと、令嬢の笑顔に見入る。

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