そういう時代に生きているから

上手くいかないことばっかりだ

人が出来ることを当たり前に出来ずに

言葉の行間ばかり気にして

今日も帰路は止まない土砂降り


「自分を肯定しろ」と人は言うが

過ぎ人に分かるわけないと思うのも事実で

自分に似合わない服を「似合う」と言われるから

その苛立ちは収まることを知らない


「逃げるのも必要だ」と言う自己啓発本は

結局のところ教科書となんら変わらない

皆同じ顔をして自分には何も当てはまらない

処方された抗うつ剤は今日も減っていかない


「自分を好きになる」ことはそう容易くない

いやむしろこんな自分を好きになれる訳が無い

才能不在で欠けた自分を誰も愛さない

寧ろ愛してくれる人を僕は見てみたい


人の共感を得たい訳じゃない呟きに

同じような顔をした人間が分かった顔をするから

「自分のことなんて何も知らない癖に」と言うが

自分を曝け出した事がないから共感なんてない


そういう時代に生きているから

何も出来ない癖に卑下ばっかりが得意科目で

それ故、今日も駅では接触事故

人の気も知らない奴らの舌打ちが充満する


そういう時代に生きているから

少なくとも欠けた人間である理由が必要だ

趣味であれなんであれ無くしてくれるな

それこそが唯一の君の存在意義だ


そういう時代に生きているから

今日の君が飲み込んだ言葉を忘れてくれるな

何も躓くことが悪いことばかりじゃない

今日の君の失敗がいつか誰かを救うから


そういう時代に生きているから

土砂降りの中を帰る人よ

僕は今日の君を否定しない

だからその濡れた体躯をどうか冷やしてくれるな


そういう時代に生きているから


そういう時代に生きているから

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