5周目
5周目
人生上手くいかねえ
それ故時に自分を見失う
自分のやりたいことは何だっけ
自分が描きたかった風景は何だっけ
あの日抱いた「いつか見てろ」のいつかは過ぎた
復讐から始まった物語は既に終わった
その復讐の道中はとても綺麗だった
取り戻せない日々から出られない僕にとっては
そして今日も雨が降る
孤独と焦りで体は底冷え
誰かが喜んでくれるから、と書いた作品も
今じゃすっかり冷めた料理同然だ
隣の芝は青いと言うが
目の前を過ぎ行く着飾った人々が
今日も誰かと馴れ合ってるから
誰も来ない店番をふてくされていた
そんな時に見覚えのある誰かが言うんだ
「向上心は捨てるな」
「身の回りの人で馬鹿にする人はいないぜ」
いつか好きだった人の笑顔でそう言うんだ
信じられなかったな
そういう人が居るだとか
そう言える人が居ることだとか
そう言ってくれる日がまた来るなんて
それが幻かどうかは分からない
それでも気が付いたら僕は書いてた
出来損ないの言葉で
才能不在と罵った作品を
だがそんな僕だから辿り着けたのがここだ
「案外悪くねえな」と笑える日々だ
そんな今日を迎えられた僕が描くものが
悪い訳が無いんだよな
それなら塞ぎ込むのも時間の無駄か
もう時間は限られてる
それに気づけたならやらないでどうする
走り出さない理由は無いんじゃないか?
なりふり構ってられるか
口を閉ざしてたまるか
今までだってそうやってやってきた
誰かに「ざまあみろ」と言ってやる為
そんな時代はもう終わった
孤独前線は終わったが
それでも僕の戦いは終わってない
僕が僕である理由を掴む旅は終わってない
次の敵はつまりそれだ
世界を恨んだ分、その借りを返すのが今だ
「ざまあみろ」と言う為の4周目なら
傷だらけの僕を終わらせるのが5周目だ
未だここ補助競技場にて
補助競技場なら誰も見てないのが当たり前
まだ「僕」の本気を知らない誰かの為に
その「本気」を見せしめる為の助走がここだ
やってられないから匙を投げた
それでも諦められないから今日まで生きてる
そんな自分を「作家」と言って誰か文句あるのか
そういう奴を言い負かすための今日、5周目
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