第4話 儀式
ペットボトル飲料に懐中電灯、最低限の持ち物だけを持ち運び、三人は裏山の山道を歩いていた。
周囲にそれらしい建造物が無いか確認しながら進む。
こんなド田舎なのにアスファルトで舗装されており、軽いピクニックに最適な道だ。
小さなさびれた神社が途中にあるものの、連続した鳥居ではない。
簡単に見つかる代物ならば、それは噂ではなくなるのだが・・・
「・・・こういうカルト話には儀式だったり、特別な日時だったりがつきものだけど、何かあったかな?」
伊保は腕を組み、首をかしげながら、噂話について何か情報は無いかと唸る。
「名前と言い伝えからして、人の怨霊だと思うけどその人はどうして『シラコ様』になったのかしら?こういう儀式って、その人が怨霊に至るまでの経緯を準えたものだったりするからね」
尋桃は人差し指を口に当てて、空を見上げながら呟いた。
真月は何か思い当たるようで、頭をボリボリ掻きだした。
「試してみる価値はあるか」
そういうと、雑木林の方へと指を差した。そこは「立ち入り禁止」の看板と、錆びついた鉄製の柵で塞がれた小道があった。
しかし、柵の端からくぐり抜けてしまえば、なんとか通り抜けられそうだった。
「この先に雑木林の中の小池に続く小道があったと思う。そこでちょっと試したい事がある」
「鳥居なんてないよ?」
「祖父から口酸っぱくして言われてたことがある」
---池の前で生き物を生きたまま磔にしてはいけない。やってしまえば最後呪いによって道連れにされてしまう
「それが生き物なら何でもいいのか、指定があるのかまでは聞いてないけど、何度も何度も真剣な顔で聞かされてきた」
「・・・『シラコ様』と関係あるのか分かんないけど、この辺で池なんて、ここくらいしかないねえ?」
伊保も面白そうだと口角を吊り上げ、やる気満々の様子。
「ま、今日はカエルかバッタで試してみて、ダメなら噂についてなんとか聞き出す方法を考えようか」
真月はポケットをまさぐると、祖母から渡されたお守りを取り出した。
「尋桃、これ持ってて。気休めにはなると思うから」
「かっこいいねえ。怪異が襲ってきても知らないよ?」
「その時は伊保を身代わりに逃げるさ」
「ひっどーい」
尋桃は彼からお守りを受け取ると、「ありがとう」と返してギュっと握りしめた
三人は細道を進み、池の前へとたどり着く。
無造作に生えたチガヤのような長い葉を持つ雑草と小枝を駆使して十字架を作成する。
手のひら大のトノサマバッタを捕まえて、その場で十字架に括りつけた。
「・・・あまりいい気分はしないよね」
尋桃はこの磔作業には消極的で、憐れむ目でバッタを見つめる。
「娯楽、道楽のためだけに自由を奪うんだ、優しい子にはできないよ」
「まるで自分は優しくないって卑下してるように聞こえるけど?」
「アハハ、それは僕の事を優しい子だと言ってくれているのかな?」
真月は暴れるトノサマバッタが張り付けられた十字架を池の前に突き刺した。
「!?」
その時、3人共くらりと貧血を起こしたような錯覚に陥り、一瞬だけ瞳を閉じる。
十字架はバッタの力強さに解け、どこかへ逃げて行った。
3人がほぼ同時に目を開けると、そこはまるで夜のように暗かった
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