第6話 「あの、試験官は殺してもいいですか?」
村から出ている馬車に乗って、この辺りで一番大きな街へ向かう俺とスズネ。
一緒になった人達から蔑んだ目で見られたが、隣にスズネがいるので文句を言って来たり悪口を言う奴はいなかった。
さて、見えて来たようだ。
冒険者の街、エルドラフ——
この辺りは強力なモンスターが出現しない地域だが、人間の脅威になるのは強力なモンスターばかりでは無い。
ウルフのようなモンスターでさえ、ステータスの低い人間にとっては脅威だ。
そんな人のために存在しているのがギルド。
金さえ払えばモンスターの脅威を排除してくれる。それを代行するのが冒険者だ。ステータスに自信がある者が冒険者になる。
俺は、とりあえずその冒険者になろうと考えている。
恐らくステータスが低いので馬鹿にされるだろうが、俺にはどんな相手もねじ伏せることができる持続ダメージがある。
どんな奴であろうと、必ず跪かせてやるさ。
そんなことを考えていると、もう街の中に着いたようだ。
「俺はそのままギルドに向かうけど、スズネはどうする?」
「もちろん、私も着いていく」
だよね……まぁスズネであればギルドに行った瞬間に上位ステータスの者から声がかかるだろう。
「そうか。それじゃとりあえず向かおう」
近くに街の地図が張り出されていたので、それを見てギルドの場所へ向かう。
この街では俺はまだ無能だと知られていない。
もちろんステータスを見られれば知られてしまうが、すれ違う人のステータスを逐一覗き見る変わり者はいない。
だが、ギルドは違う。
俺とスズネがギルドの入り口にを通ると、外にまで聞こえていたざわつきが一瞬で静まり返った。
冒険者は、必ず他人のステータスを見る。何故なら、それが単純に序列に関わることだ。
ステータス至上主義の中心とも言える場所。
そんなところに俺のような雑魚が来ればもちろん。
「ガハハっハハハアッハ!! なんだあいつ!?」
「ATKとVITが1だって!? 何しに来たんだ」
「依頼者は裏の受付だぜ。それにしても可哀想なくらいのステータスだな」
「隣の子はすげぇ才能だな。あれは高ランクパーティーから声がかかるぞ」
そりゃこうなるよね。今はシカトしてとりあえず冒険者登録だ。
俺は全てをスルーして受付へと向かう。
「あの、冒険者登録をしたいのですが」
「え、あ……え? その……ステータスで……いえ、冒険者登録ですね」
動揺しすぎだろ。その反応が一番傷つくぞ。
「それではこちらの用紙に……ご記入をお願いします」
「私の分も頼む」
「はい! 同じようにこちらに記入をお願いします!」
おい、俺とスズネで随分対応が違うな。そりゃこのステータスであれば未来の英雄候補だ。畏まりもする。
「それでは、最初のランク決めのための試験を行いますので、奥の訓練場へお越しください」
試験か……これはちょっと厄介だな。
「あの、すみません」
「なんでしょうか?」
「試験はどのようなことを行いますか?」
「それは……試験官との模擬戦ですが……」
やはりな。
「すみません、それは試験官を殺してしまっても問題ありませんか?」
その時、ギルド内に今日一番の笑い声が響いた。
リオ
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LV:12
HP:80
MP:45
STR:1 攻撃力
DEX:22 命中力
VIT:1 防御力
AGI:59 俊敏力
INT:9 魔法力
スキル:持続ダメージ LV:1
効果 :1秒間に自身のSTR値の攻撃を与え続ける。ON、OFF切り替え可能。永続。防御不可。
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