第5話 ケツイ

「父さん、母さん、話があるんだ」


 俺は家に帰り、父さんと母さんに村を出ることを告げる。


「そうか……リオももうそんな年頃か」


「学園に通っていてもおかしく無い年頃ですものね」


 この世界の子供達の自立は早い。10歳にもなれば自分自身の足で生きていく子供も珍しく無い。


 確か父さんと母さんも10歳の頃には冒険者になっていたと聞いたな。


 スズネは……ほら、依存しているから。


「わかった。でもリオ、絶対に忘れるんじゃないぞ。父さんと母さんは、いつでもリオの帰りをこの家で待っているからな」


「そうよリオ。私たちの愛しい子。必ず帰って来てね。さ! 今日はリオの大好きなシチューにしましょう!」


 ありがとう。父さん、母さん。


 こんなゴミステータスの俺を愛してくれて。


 父さんと母さんがいなければ、俺はとっくにこの世界からドロップアウトしていた。父さんと母さんが愛してくれたからこそ、二人のために生きていようと思った。


 でもね、力に目覚めてから、どこまでいけるか知りたくなっちゃったんだ。


 だから——


 必ず世界最強になって帰ってくるよ。


 俺の名前を聞いただけで恐れるような。誰も俺を蔑まないような。

 そして、父さんと母さんも傷つかないような。


 父さんと母さんは、元冒険者ということもあって普通の人よりステータスは高い。それでも、村の中では肩身が狭かった。


 それは、俺が生まれたからだ。


 こんなゴミステータスの俺を産んでしまったがために、父さんと母さんもゴミの親として蔑んだ目で見られていた。


 それが俺には耐えられない。


 だからこそ全てを見返す必要がある。

 俺だけではなく、俺の大切なものを傷つける奴らを。


 その道は荊の道だ。決して輝かしい栄光の道では無い。人を騙して上に立ち、掌握してねじ伏せる。


 心が折れるかもしれない。痛い思いをするかもしれない。恨まれて命を狙われるかもしれない。


 それでも、俺は行く。


 この持続ダメージで、頂点を目指すんだ。



 母さんの温かいシチューを食べて眠る。俺の大好物だ。心も身体も温まる。

 このシチューをまた食べれるのはいつになるだろうか。次に食べる時は、みんなで心の底から笑って食べたいね。


 次の日の朝、父さんと母さんに別れを告げる。


「それじゃ、行って来ます」


「リオ、頑張ってこい」


「リオの帰りを待ってるからね」


 最後まで俺を愛してくれた二人。しばらくは会えないけど、必ずここに帰ってこよう。


 家の扉を開けて外に出ると、そこにはスズネがいた。


「リオ……泣いているのか? 大丈夫か?」


「あ、あぁ……これは雨だよ」


「今日は晴天だが……そうか」


 スズネ、ちょっとは気を使ってよ。


「それじゃ、行こうか」


 俺は頬をつたる雨を拭って歩き出す。


 茨の道の、その先の景色を目指して——



 リオ

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 LV:12

 HP:80

 MP:45


 STR:1  攻撃力

 DEX:22 命中力

 VIT:1  防御力

 AGI:59 俊敏力

 INT:9  魔法力


 スキル:持続ダメージ LV:1

 効果 :1秒間に自身のSTR値の攻撃を与え続ける。ON、OFF切り替え可能。永続。防御不可。

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