第2話 お前の命は俺の掌の上だよ?

「おいリオ、早く干し肉を盗んでこい」


「そうだぜ雑魚リオ。走ることしか出来ねぇんだからな」


「可哀想な奴だよな。STRもVITも1なんて」


 リオとは俺のことだ。こいつらはいつも俺をいじめてくるクソガキ3人衆。ドンとブラとコッコだ。


「悪いけど、もう君たちの言いなりにはならないよ」


「なんだと!? てめぇ雑魚の癖にイキがりやがって!」


「これは教育が必要だな」


「後悔しても遅いからな!」


 村にある裏路地で3人に囲まれている俺は側から見たら絶体絶命だろう。

 なぜならステータスが雑魚すぎるからだ。


「調子に乗るなよ!」


 ドンが襲いかかってくる。AGIが高い俺だが、この裏路地ではそれも発揮出来ない。


 俺はドンの攻撃を受けた。流石に痛い。俺は痛みに耐えきれず地面に蹲る。


 ドンのSTRは15。俺のVITは1なので14のダメージが入る。

 残りのHPは36/50だ。


「ドン、やりすぎて殺すなよ!」


「わかってる! ギリギリまで痛めつけてやるだけさ!」


「うぅ……ちくしょう……いてぇ……」


「馬鹿が! こうなることはわかっていたはずだ! 泣いても勘弁してやらねぇぞ!」


 そのままドンが追撃してくる。これで俺のHPは22/50。

 流石にHPが50%を切ると、全身へ負担がすごい。ただ殴られてるだけなのに体の至る所が痛いのはどういう原理だ、ちくしょう。


「ご、ごめんなさい……ごめんなさい……」


「思い知ったか! ここではステータスが全てだ! 雑魚は雑魚らしく強者の言うことを聞いてればいいんだよ!」


 蹲る俺の髪の毛を掴んでそう言うドン。もう少し、もう少しだ。


 そのまま顔を地面に叩きつけられて、残りのHPは8/50。ヤバいまじ死ぬ。


「今日はこのくらいにしておいてやる。おい、いくぞ」


「馬鹿な奴だ」


「次はねぇからな」


 そんな言葉を俺に浴びせて、背中を向けて立ち去ろうとする3人衆。



 馬鹿め——



「あれ?」


 ドンが膝から崩れ落ちる。効果が出て来たな。


「おい、どうしたんだドン?」


「ブラ! ドンのステータスを見てみろ!?」


「ステータスがどうした……なんだこれ!? なんでHPが減っていってるんだ!?」


「おい、俺たちのHPも減り始めたぞ!?」


「ブラ、コッコ……体が……言うことをきかねぇ……なんだこれ……」


「やっと気づいたようだな」


 俺はHP回復ポーションを飲みながら立ち上がり声を掛ける。

 モンスターをたくさん倒して、得た素材を売って今日の日のために準備したポーションだ。大変だった……


「リオ、てめぇドンに何をした!」


「あまり、上から物を言わない方がいいぞ?」


「なんだって!? てめぇ……」


「お前達の命は、既に俺の掌の上だ。お前達のHPは、俺がやめない限り永遠に1ずつ減り続ける。最後に待つのは死だ。現に、ドンはそろそろ限界が近いんじゃ無いか?」


 ドンのHPは、82/200だ。


「お、おい……まじで1ずつ減ってるぞ……」


「止まらねぇ! どうすればいいんだ!」


「頼む……助けてくれ……ブラ……コッコ……」


「おい、リオ早くやめろ! このままじゃドンが死ぬぞ!」


「だから……どうした?」


 今の俺は悪い顔をしているだろう。


「どうしたって……お前人殺しになるつもりか!?」


「何を言ってる? 俺のステータスでお前らを殺せるわけが無いだろう? 誰もお前らの話なんて信じない。どうやって俺がドンを殺したと証明するんだ?」


「お前……本当に俺たちを殺す気なのか……」


「散々今まで馬鹿にされて来たからな。これでおあいこだ。死をもって償って貰おう。ただ、一つだけ提案してやる。今後は俺に逆らわないと誓うなら生かしてやってもいい」


「なんだと……どこまでクソ野郎なんだ!」


「いいのか? ドンはあと20秒もしないで死ぬが」


「わか……った……すまなかった……俺たちが……悪かった……頼む……殺さないで」


 泣きながら懇願してらぁ。ざまぁみろ。


 俺はドンの持続ダメージを止める。


「ドン、今後俺に逆らったら殺す」


 ドンの残りのHPは15/200。よく最後のセリフが言えるまで意識を保っていたな。最後の俺の言葉は届かなかったみたいだが。


「さて、ブラ、コッコ。お前達はどうする?」


「本当に……お前にそんなことが出来るのか……?」


「ブラ! そう言ってる間に俺たちのHPも減り続けてる! ドンのHPの減りは止まった! 信じるしかない!」


「ち、ちくしょう……悪かったよ……だからやめてくれ」


「そうだ! これからは絡んだりしないから!」


「おい」


 こいつらは物の頼み方を知らずに育って来たんだなぁ。


「聞こえないな。お願いするときはどうするのが正解だ?」


 化け物を見るような目で俺を見るな。全面的にお前らが悪いだろ。

 ブラとコッコは顔を見合わせると、二人で正座をした。


「「お願いします……やめてください……」」


 屈服してらぁ。ざまぁみろ。


「お前らも今後俺に逆らったら命はないと思え」


 言葉を残し、3人の間を通り抜けて裏路地から出る。


 そのまま走って村はずれの草原を目指して走る。


 初めて強者に勝った。心臓がバクバクしている。

 目的もなく走りたい気持ちになった。俺はこの世界でもやっていける。


 そうだ、俺の物語は、ここから始まるんだ——



 リオ

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 LV:5

 HP:50

 MP:30


 STR:1  攻撃力

 DEX:12 命中力

 VIT:1  防御力

 AGI:33 俊敏力

 INT:6  魔法力


 スキル:持続ダメージ LV:1

 効果 :1秒間に自身のSTR値の攻撃を与え続ける。ON、OFF切り替え可能。永続。防御不可。

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