第34話 ヒロvsドミニデス


※ヒロサイド


 これはやばいと、肌でピリピリ感じる。そして、とてつもないプレッシャーを放っている。悲しみの中にも優しさが見え隠れしていたドミニデスはもういない。再びステータスを確認してみると、


名前 ドミニデス レベル35

職業 ウォリアー


ステータス

HP 6000/6000 (4000+2000)

MP 350+175

物攻 480+240

物防 350+175

魔攻 200+100

魔防 300+150

素早さ 180+90


特殊スキル

支配の恩寵


 全てのステータスが50%ずつ上がっている。ステータスだけでいうとBOSS級レベルだと思う。これが支配の恩寵の力なのかな? 

 これは勝てない。そう確信した。私のステータスを遥かに超えている。


 ドミニデスは不敵な笑みを浮かべながら、こちらに近づいてくる。


「こないのか? こないならこっちからいくぜ」


「待って! さっきまでのドミニデスはどこにいったの? 私はできるなら、戦いたくないよ!」


「ふんっ。そんな戯言たわごとなんか本気にしてたのか。俺はただ支配さえできればいい。勝利さえも俺は支配する!」


 戦うしかないのかな。何もしなければ、このままやられてしまう。今のドミニデスにダメージを与え続けたら元に戻るかな? 分からないけど、これに掛けてみようと思う。杖を前に突きだし、


「ごめんね。正気に戻って。『煌めく星』!」


 私が放った『煌めく星』は真っ直ぐドミニデスに向かう。

 ドミニデスは手をバチンッと叩き、


「遅いっ! 『ハウリングフィアー』!」


 バチンッと鳴らした衝撃波から、耳障りな嫌な音が鳴り響く。『煌めく星』は、その衝撃波によってドミニデスに届く前に爆発してしまった。

 私は『ハウリングフィアー』の効果を受けると、ステータスが下がる効果音がした。

 『ハウリングフィアー』は相手の魔法攻撃力と魔法防御力を一分間10%低下させる、ファイター系統のスキル。魔法攻撃力が下がるのは、ウィザードの私には痛手である。


(『ハウリングフィアー』のCTは確か、90秒。ここは魔法を撃ちまくって、ザーハックさんがくるまで時間稼ぎするしかない。私……時間稼ぎしかしてないな……)


 私は距離を適度に取りつつ、スキルを使う。


「『スパイラルマジック』!」


 ドミニデスは微動だにせず攻撃を受けた。ガハハハッハと高笑いをしながら、


「やはり、この力は素晴らしい。あの男の言う通りだ。お前は恩寵を知らなかったな。では、この素晴らしい恩寵の能力の一つである、『恩寵スキル』をお見せしよう。瞬きするなよ」


 そういうと、ダッシュで近づく。その速さに私は反応できなかった。


「これが恩寵スキルだ。『毒祭どくさい』」


 私は二メールくらい飛ばされ、壁にぶつかった。気づくと、毒状態になっていた。毒状態は十秒毎にHPの5%のダメージを受けてしまう。


「この『毒祭』は攻撃対象のステータスが低下していれば、確定で毒状態を付与できる。そして、さらに、二つ以上のステータスが低下していれば、元々のCT20秒のところ、10秒でまた再使用可能になる。まさに、毒のフェスティバルだ!」


「能力も大幅に上がって、恩寵スキルってのも使えるんだ。それにスキルのインフレだよ……。スキルの効果なんか、最高職レベルじゃん」


「おいおいおい! こんなんでくたばってくれるなよ!? 恩寵スキルの凄さはこんなもんじゃねぇ! もっとすごいもん見せてやるからよぉ! レベル差やステータスだけではないってことを教えてやらんとな」


「その恩寵がなんなのか分からないけど、悪い力に支配されないで……。そんな『呪い』なんかに負けないで」


「俺は支配されていない。支配しているのは俺だ! 恩寵は呪いじゃない。お前は恩寵の素晴らしさが分からないのか」


「分かりたく……ないね。暴走して自我がない人に大切な人を守れるはずがないでしょ。それに、さっき言ってた、『支配の恩寵』は、その男から貰ったってこと?」


「ふんっ。暴走などしていないわ。弱いやつを守る義理なんかない。強いやつがだけが生き残り、弱いやつは朽ちていくだけだ。あぁ。そうだ。恩寵はあの男に貰った。俺ならこの『恩寵』の力を使いこなせるとな」


「さっきと言っている事が逆だよ。ちょっと意味わかんないし。使いこなせてないよ。その恩寵かその男に操られているんだよ。目を覚まして!」


「なんとでも言うがいい。俺はこの力を使いこなし、強くなりまたあの男と決着をつける。お前らはその礎となっていればいい」


 様子がおかしいのは恩寵の所為だと思っていいね。早く元に戻ってさっきのドミニデスに戻さなきゃ。


「『ライフドレイン』」


 倒れながらも、杖を向け、スキルを使うも、ドミニデスには効いていない。ここまでか、もう終わりだと確信する。だが、ドミニデスは拳を握りしめると、


「ウィザードの基本スキルか。与えたダメージの10%回復だったか。俺にダメージはほぼない。最後の力を振り絞ったのだろうが無意味だったな」


 と言い捨て、ドミニデスは高く飛び跳ねどこかへいってしまった。私は助かった。まだ良心が残っていたのかな? 何かを葛藤していたように見えた。


 回復をしっかりとおこない、私もドミニデスが向かったであろう場所へと駆けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る