第31話 侵入!ドミニデス帝国!
※ヒロサイド
トワ君に先に向かっててと言われた、私とルナちゃん、ユナちゃん、グーファーさんの四人は、トワ君を信じて、先にドミニデス帝国の側まで来ていた。
私たちは身を潜め、王国内を見渡していた。中に侵入を試みても、警備が多すぎて入れそうにない。なので私は一つの提案をしてみる。
「ねぇ。ルナちゃん。ここ以外にも中に入れそうな場所あるかな? 警備を突破しても次々にプレイヤーが来たら、とてもやばい気がするんだ」
すると、ルナちゃんは、
「あります。ですが、少し問題が……」
「問題? 何かあるの?」
ルナちゃんは深刻そうな顔をして言った。
「王家の者しか伝えられてないのですが、ここからちょうど反対側に回れば、隠し通路があります。そこから王宮に直接行けますが、ドミニデスって男性がいた王室に急接近する事になりますので、鉢合わせるリスクが高いかと」
「ドミグラスは強いの? 私たちじゃ倒すの厳しいかな?」
私の質問にグーファーさんが答えてくれた。
「俺がレベルを見た時は35レベルでした。正直、我々が束になって挑んだところで返り討ちでしょうね」
「そっかぁ。35レベルって凄いね。私もレベリング頑張ってたんだけどなぁ。ザーハックさんも心配だし、どうしよう」
「ザーハック様も心配ですね。あれからお見えになっていません。もう王国内に入られたのでしょうか?」
「そうだと思うよ。今、警備が厳重なのは、ザーハックさんたちが攻めてきたから、これ以上敵を入れないためじゃないかな?」
「なるほど、さすがヒロさんです。なんだか、トワさんみたいでしたね」
そういってくれたのはグーファーさん。
トワ君みたいって、そりゃあ、リメイク前の『イベントストーリークエスト』で、同じようなシチュエーションがあって、その時にトワ君が言っていたセリフなんだもん。なんだかあの頃が懐かしいな。
「まあね! えっへん! とりあえず、その隠し通路から王宮に入ろう。ルナちゃんのお母さんやお父さんも心配してるだろうし」
「ママとパパに会えるの? もう大丈夫なの?」
ユナちゃんが弱々しい声でそう言った。
私はユナちゃんを心配掛けまいと、
「きっと大丈夫! 私が絶対に会わせてあげる!」
すると、ユナちゃんは安心したのか、私にくしゃくしゃな笑顔を向けた。この笑顔を守りたい! 守らなきゃ!
「よし、じゃあ、裏道から王宮内に侵入して、敵の位置と人数を把握して、ザーハックさんと合流だぁ! よし! とりあえずやってみよー!」
「分かりました。では、ご案内しますわ。こちらです」
「みんな! 頑張ろうね! 危なかったら逃げてね。私はHPが尽きても、また時間が経てば復活できるから、気にしないでね」
こうして私たちは、王国の裏側へ向かった。
__________
王国の裏側の森についた私たち。この辺一帯は
「隠し通路は、この井戸を下りた先にあります。水は抜いていますので、ご安心を。コケが生えていて、滑りやすいので気をつけて下さいね」
ルナちゃんは言いながら、井戸のロープに手をかけ、耐久チェックをしている。
「よく分からないけど分かったー! ありがとう! どんどん進もう!」
私たちは薄暗い井戸を下りる。
日が当たらないからか、少し寒さを感じる。
「フラッシュライト」
ルナちゃんが魔法を唱えると周りが明るくなった。
そして、壁に近寄り。
「確か、この辺に…………。ありました!」
ゴゴゴゴッと、大きい音をたて、壁の一部が崩れていく。
「では、参りましょう。ここを抜けたら王室です。敵プレイヤーと戦闘になるかもしれませんね」
「だね! でも、極力戦闘は避けよう! ユナちゃんもいるし。いのちだいじに!」
「「はい!」」
二人は勢いよく返事してくれた。ルナちゃんを先頭に地下道を進んでいく。
「こんな森に、王室に続く道があるなんて知らなかったなぁ」
「グーファーさんが、知らなくて当然ですわ。わたくしもお母様から聞いた話ですし」
「そうなんですか。なら、王室に入ったらここから、トロン王とティアン王妃を避難させましょう」
「ですね。無事だといいのですが」
二人の会話を聞きながら私たちは進んでいく。だいぶ歩いた。すると、上の方から微かな光が見え始めた。近くには木製の階段がある。ルナちゃんは足を止め。
「この上ですね。父上の玉座の近くに出ます。父上たちはその近くにいると思います」
「よし、ユナちゃんののパパとママを連れて脱出。そして、国民を避難させながら、ザーハックさんと合流だぁ!」
ルナちゃんが微笑みながら言う。
「ヒロ様は勇敢ですね。わたくしは怖くて、震えています。そんなヒロ様を見ていると、自然と勇気が湧いてきますわ」
「勇敢かなぁ? 自分ではそう思わないんだけど、そう思ってくれてるなら嬉しいな。みんなに安心してもらうために私、頑張るよ! 大丈夫! 問題ない!」
でも、本当は嘘。本心は怖いと思っているし、今にも泣き出しそう。私の悪い癖だ。
周りが暗い空気になるのが嫌で、みんなに心配をかけたくなくて、いつも空元気している。
「俺も覚悟を決めました。いつでもいけます」
「わたくしも大丈夫です。ユナは大丈夫?」
「はい、お姉様」
「みんな、大丈夫そうだね! 突撃だぁ!」
そういって、私は階段を上り、古びた扉を押してみると、キイぃっと、金属の嫌な音をたてた。
周りを見渡すと、地には赤と金色の
上を向くと、天井もとても高く、そこから吊るされている、シャンデリアの数々。そこは、女の子は憧れてしまう場所だった。
私は見惚れながらも、敵プレイヤーがいないか、『感知スキル』を使う。
「『感知スキル』対象、プレイヤー。ーー大丈夫。誰もいない。先を急ごう」
「俺が先頭に立ちますよ。ナイトなのでそう簡単には倒れませんし」
「分かった! グーファーさん頼んだよ! 後ろは任せて」
グーファーさんが先頭に立ち、王室から外に出ようとすると、
「きゃぁっ! お姉様ぁぁ!」
突然、ユナちゃんの声がした。
「え? 何!? どうしたの? 大丈夫!?」
「ユナ! ユナぁぁぁ!」
ユナちゃんは宙に浮き、ものすごいスピードで部屋からいなくなった。何が起こったのか、分からない。
敵がいたの? でも、感知スキルにも引っかからなかった。ユナちゃんが飛んでいった方向に向かうと、ユナちゃんを抱えた、忍者のような格好をした男がいた。
「はい、チビ姫ゲッチュ〜。ジュラの言う通りだったなぁ。簡単な任務だったぜ」
一同パニックになる。
「ユナちゃんを返して!」
私は言葉をはっし、武器を構えると男は。
「おっとぉ。今の状態で魔法を放ったら、チビ姫が苦しい思いをするだけだぜぇ? まあ、いいんなら構わねぇけどよ」
ユナちゃんを盾にされ、私は魔法を使えなかった。ステータス確認をすると。
名前はオボロン。レベル26のアーチャー。ギルドは『強欲者の縄張り』とあった。どうやら、ドミニデスの手下のようだ。
すると、ルナちゃんが、
「人質ならわたくしがなります。わたくしもこの国の姫です。ユナを返してください!」
「だめだねぇ。ドミニデスさんに、ちっこいのを連れてこいって言われてるからな。こちら、オボロン。王室にてチビ姫を確保した。他にでか姫と知らんやつが二人いる。お前らもこっちにきて手伝え」
オボロンと名乗った男はボイスチャットか、なにかで、別の者の連絡を取り合っているようだ。
「お前たちの目的はなんだ! 人質なら俺で十分だろう?」
グーファーさんがオボロンに向かって言う。
「お前、自分に人質の価値があると思ってんの? それに、俺の糸は体重制限があるんだよ。あんまり重い物は持てないんだよ。お前らと戯れている暇はない。またな」
そう言い残すと、何かを地面に叩きつけた。煙玉だ。煙が晴れた頃には、オボロンとユナちゃんの姿が見えなかった。
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