第18話 神が齎す奇跡 その名は恩寵
※ゲームマスター視点
彼らがギルド会館を出て、数分たった頃の私の研究施設にて。
「報告します。彼らは先程、王国奪還作戦のため、ルルード王国とアーティダル王国へと旅立ちました」
私は忙しい身で、ここの世界にそこまで干渉できない。だからこうして、部下から報告を受けている。それで今の状況を把握しているのだ。
「ありがとうございます。あの子も一緒ですか? まああの子なら着いていきそうですがね」
「はい。同じパーティーです」
「そうですか。それは安心しました。どうなるんでしょうね。結果が楽しみです」
「お言葉ですがマスター。これはマスターが仕組んだ事なのですか? それでしたら、流石にやり過ぎかと」
「さぁ、どうでしょうね。この世界の行く末は私が決めるのではない、彼らは、なんて言いましたかね? 現住人でしたっけ? そんな彼らとプレイヤーである皆さん。そして、私が研究している、この子です」
私は近くにある、部屋の一割を占めるであろう、縦にでかい巨大なコンピューターを触ってみせる。
この子は今、力を使い果たし深い眠りについてしまっている。
この子を目覚めさせるには大量の経験値が必要だ。
プレイヤーが死亡すると『デスペナルティ』として、経験値を少し失う。その量はレベルが高い程多くの経験値を失う事になる。
「彼らが戦っている間私たちは、何をしたらいいのですか?」
「私たちに出来る事は神に祈る事だけです。祈りましょう。そうすれば、神も答えてくれるでしょう。あなたにも素晴らしい【恩寵】を授けてくれますよ」
「……はい。承知しました」
恩寵とは、神が創り出した奇跡と言われている能力の事。
俗に言う『特殊能力』や『チート』の類いになるだろう。
私の研究結果では、『太陽の恩寵』、『月の恩寵』、『強欲な恩寵』の三つが確認できている。
祈り続ければ神がその姿を顕現させ、恩寵を与えてくれると言うのだ。
研究の一つだが、私はその神がどうすれば現れるのか、恩寵は現実の体に一体どんな影響があるのか、そもそも恩寵とはどこからやってきたのかを研究している。
私はその力を思い通りに支配してみせる。そしていつか、その力を自分自身の手で作ってみせる。
そんな事を思っていると。
「ねぇ。マスター? あーしもそろそろ外に出たいんですけどぉ? いつまでこんな所に居なきゃいけないのぉ? 暇なんですけどぉ?」
彼女は旧エタニティ・ドリーム・ワールド。そう、ゲームの時代からいる、マスコットキャラクターの一体であるハニポンだ。
「もう少し待ってください。この戦いが終わったらイベントクエストを用意しております。そちらの説明の時には外に出ていいですよ。まああんまり、自由にされると困りますので、約束は守ってくださいね」
「わぁい! 分かったー! マスターありがとぉ。そう少し我慢するねぇ」
「こらこら、ハニポン。マスターを困らせてはいけませんよ。マスターはとてと忙しいの。ちゃんと仕事はしなさい」
「分かったよ、ママァ」
彼女はマスコットキャラクターの一体、カンガルーがモチーフのガルポン。とても優しい彼女はみんなのお母さん的存在である。
私の良き理解者で助かっています。
そして突然、私の携帯に着信が鳴り響く。
「さて、そろそろお時間が来たようです。私は現実世界に戻るとします。報告ありがとうございました。私は心の底からあなたにあった恩寵を授かる事を祈っております。また時間が出来次第こちらに参りますね。頼りにしてますよ、マリーさん」
私はマリーさんにそう告げると現実世界に戻った。
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