第11話 作戦会議
ギルド対抗戦・模擬戦中の間、ユナちゃんはメルさんが、面倒を見ててくれるみたいだ。
ギルド対抗戦はクエストなどで使用する、ワープゲートを使って専用のスタジアムへと転移するのだ。
観戦は、ギルド会館にあるテレビに中継されるのを視聴するか、直接見たい人はワープゲートを使ってスタジアムの観客席で見ることが可能だ。
僕たちはギルドロビーで作戦会議を始めようとしている。
時間は15分と限られている。作戦会議は主に、相手によって、守護獣を変更したり、フォーメーションの確認などをする。
5分前になると、守護獣の設定などがロックされ変更などが出来なくなる。僕は確認のため、話を始めた。
「そういえば、
「あーこれか。先程、メルさんから『この中から一体選んで、使ってください』と渡されていた。俺には良く分からん。好きに選んでくれ」
僕は、数種類ある守護獣のカードをザーハックさんから預かった。すると、ヒロさんが割って入り一枚のカードに指を刺した。
「わー! この子可愛いから、この子にしよう?」
ヒロさんが指さしたカードは『フェアリー』型の守護獣だった。フェアリー型はバフ効果や回復などを得意とする。ステータスはHPが極端に低く、MPと素早さは少し高い。
フェアリーのカードを見るなり、ルナさんも微笑みながら、
「うふふ、可愛い子ですね。わたくしも気に入りました」
「ほう。これが守護獣。みなさんのお話を聞いてる限り、この守護獣とやらを、護り通せばいいのですね?」
不思議そうにカードを見つめ、グーファーさんが呟いた。
「そうだよー! 勝利条件は相手の守護獣を倒すか、相手全員をキルすればいいの! 簡単でしょ? 作戦はトワ君が考えてくれるよ」
キルをすればいいとか守護獣を討伐すればいいと聞けば、簡単に聞こえるが、実際は相手の作戦を読んだり、裏をかいたりと、色々奥深いのがギルド対抗戦だ。司令塔はとても頭を使わないといけない。
「ふむ、相手を全員キルだな。簡単でいい」
脳筋スタイルのザーハックさん。まあ、初めてだからそんな感じでいいけども。
僕は、ザーハックさんのステータスを確認した。
ザーハック レベル31
職業 ドラグーン
HP 3300
MP 250
物攻 500
物防 400
魔攻 200
魔防 250
素早さ 170
装備1
武器 紅蓮の大鎌
頭 紅炎の兜
体 紅炎の
脚 紅炎の
装飾品 爆炎の首飾り
レベルたっか! さすがは元団長。すごく強い。装備も良いものばかりだ。火属性を得意とするんだな。
『爆炎の首飾り』には自分が使用する『火属性のアクティブスキルの威力が50上昇する』という、パッシブスキルが付いている。
それに続けて僕はザーハックさんに質問をする。
「そういえば、ザーハックさんはドラグーンみたいですが、どんなスキルを使えるんですか?」
「火属性攻撃を得意としている。範囲技から接近技まであるぞ。槍も一応使える。まあ、あんまりスキルは取っていないがな」
「ありがとうございます。参考になります。では、作戦を決めていきましょうか。あんまり気乗りはしませんが」
「えー! せっかくなんだし楽しもうよー! ゲームの世界なんだし、ね? なにか戦えない理由とかあるの?」
そうは言うけど、僕個人としては人を攻撃したりはしたくない。モンスターにだったらまだ、攻撃できるんだけど……。
まあそんなこと言っている暇はないのは分かっている。
この世界から出られない以上は、実際の人間と戦わないといけない日が来ると分かっていたはずだ。
「まあ、そうですよね。まあ少し現実世界でありまして……そのトラウマがありまして。すぐに気持ちの整理ができるか分かりません。足を引っ張るかと思いますが、やれるだけやってみますね。すみません」
「うん! 分かった! 何かあったかは今は聞かないけど、いつか聞かせてね、今はみんなで楽しもう!」
ヒロさんは優しい笑顔を向けてくれた。その言葉に僕は勇気を貰えた。
「坊主、初めてだから人と戦えないっつーのは、分からんでもないが、半端な気持ちで戦闘に参加するなよ? 実戦だったら、悩んでいるうちに大切なものを失う事に繋がる。戦闘中はお相手さんは待ってくれないぞ」
ザーハックさんの言う通りだ。相手は待ってくれないだろう。アニメなどで見たことがあるから、分かる。すると、ルナさんが、不安そうな声で言う。
「わたくしも、人様と戦うのは初めてですので緊張します。トワ様のお気持ち、お察ししますわ。わたくしも足を引っ張らぬように頑張りますわ」
「ありがとうございます。同じ境遇の人がいたので安心しました。では、作戦を伝えますね」
みんなに作戦を伝えた僕は、PvPをする覚悟が決まらないまま、模擬戦へと向かう。
______
一足先に、ワープゲートでフィールドに着いた僕たち。そこは、ゲームの頃と同じで、白をベースとしたスタジアムが目の前にはあった。まあ、場所によって色は変わってくるんどけどね。
冷たい風が吹き、微かに匂う土の香り。見上げると、空は暗く、無数に付けられた照明が僕たちを照らす。
観客席からは、黄色い声援が聞こえる。
しばらく見上げていると、突如として僕たちを煽るようにアナウンスが流れる。
「青コーナー! チームトワが入場しましたー! さぁ! 熱い戦いを期待しましょう! どんな試合になるか楽しみです!」
アナウンスが終わった後、ワープゲートから、ギルド『紅の炎』の人たちがやってくる。
「皆様、大変長らくお待たせしました! 赤コーナー! 人気沸騰中のギルド! 『紅の炎』の、みなさんのご登場です! 今回は5vs5の模擬戦ですので、ギルドロビーにある、システムの使用はなしとなります」
スタジアムの観客席は、ギルド『紅の炎』を見にかなりの人が集まっている。周りからは紅の炎を応援する声が響く。
「頑張れー!」
「きゃー! 紅葉様ー! こっちむいてー!」
当たり前だけど、僕たちは完全にアウェー状態だ。ザーハックさんは、少し不機嫌そうにしている。
相手のステータスを確認する。レベルは僕より10近く高い。装備も整えてないので厳しそうだ。
真正面から戦って勝てるのはザーハックさんくらいだろう。ヒロさんは五分五分くらいかな。
「相手の守護獣はゴーレムみたいですね。動きは遅いですが、一撃は重いです。気をつけて行きましょう」
みんなは頷き固唾を飲む。そして、静かにアナウンスが再び流れる。
「準備が整いましたので、ギルド対抗戦・模擬戦を開始します」
「トワ君。いよいよだね。楽しみだよ。勝っても負けてもいいから、とりあえず楽しもうね」
「そうですね。楽しみましょう。皆さん! よろしくお願いします」
アナウンサーがカウントダウンを始めた。
10、9、8……
もうすぐ始まる。僕の初めてのPvPが。
3、2、1……。そして0になると試合開始の合図が出た。
「試合開始!」
_______
長くなりそうなので、模擬戦で戦闘を行う5人のキャラクター紹介
『紅の炎』ギルドマスター
紅葉 30歳 178センチ 赤髪 男
レベル 26 職業 パラディン
使用スキル・武器 炎属性の剣スキルを得意とする。 大剣を使用する。
『紅の炎』のギルドメンバー(一部)
ダルバル 27歳 174センチ 茶髪 男
登場時レベル 25 ウォリアー
使用スキル・武器 カウンターを得意とする。拳を使用する。
向井優樹 22歳 168センチ 茶髪
登場時レベル 24 スナイパー
使用スキル・武器 影に潜り込み、敵の背後に回って攻撃する。不意打ちを狙う。弓を使用。
登場時レベル 24 パラディン
使用スキル・武器 土属性攻撃が得意。地面を盛り上げてフィールドを変えたりする。でかい斧を使用する。
グリーナ 25歳 173センチ 紫髪
登場時レベル 26 ウィザード
使用スキル・武器 バインド系の魔法を得意とする。 杖を使用する。
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