第12話 ギルド対抗戦・模擬戦 ザーハックvs紅葉
試合が始まって、紅の炎のギルドマスターの紅葉さんは、剣を、ポンポンと叩き余裕を見せる。レベルからしてかなりの実力があるのだろう。野放しにするのは危険だと思い、みんなに伝える。
「紅葉さんがレベル26で、レア度の高い大剣を使用していて、物理攻撃もかなり高かったです。アクティブスキルを受けるのは極力避けましょう。右にいる、杖を持った人が持っている杖は『
「随分と詳しいな、坊主。なら、お前さんの実力見せてもらおうじゃねえか」
と、ザーハックさん。実力なんてないんだけどね。ただのゲームの時の知恵だし。
ザーハックさんは紅葉って野郎は俺が相手をすると言いながら、紅葉さんの方へと駆けていった。何か因縁でもあるのだろうか。
それに続くように、グーファーさんとヒロさんはウィザードのグリーナさんの元へと走りだす。
僕とルナさんは、
最初に戦闘が始めたのは、ザーハックさんと紅葉さんだ。
ザーハックさんは大鎌で斬りかかる。それを紅葉さんは大剣でガードする。鍔迫り合いながら紅葉さんが、
「いいですねぇ。血の気の多い方、僕は好きですよ。早く戦闘が終わってしまうと盛り上がりに欠けますので、すぐに倒れないで下さいね。期待してますよ」
「ほぉ? この俺相手にして余裕だな。その余裕がいつまで持つかな?」
二人は武器を激しくぶつけ合う。ぶつけ合うたびに火花が散る。かなり力が入っているんだろう。
紅葉さんは2mくらい後ろに飛び距離を取る。剣を両手に持ちかえ。
「後ろの奴ごと葬ってやろう。【
その炎の熱風はザーハックさんを巻き込みながら、僕たちの方へと飛んでくる。
【
僕はルナさんを護ろうと剣を盾にする。
「ルナさん、フェアリー! 僕の後ろに隠れて!」
「はい、分かりましたわ。失礼します」
ルナさんは申し訳なさそうに後ろに隠れる。フェアリーもキャハハハっとひらひらしながら僕を盾とした。
ザーハックさんは両手を組み、仁王立ちをしている。
やはり、火属性には耐性があるようでまったく効いてない様子。
すると、ザーハックさんは煽るように。
「ーー今の風……とても気持ちがいいものだったぞ。俺の専属扇風機にならないか?」
その言葉に紅葉さんが徐々に本性を見せ始める。
「あ? 強がってんじゃねぇよ。お前らは俺たちが目立つように踏み台になっていればいいんだよ。踏み台
さっきまでの笑顔や余裕がなくなっているようだ。
「ふん。余裕がなくなった途端、本性を現したな。俺は、お前を以前から気に入らなかった。うちの女性スタッフを弄び、イラつけば八つ当たりで暴言や暴力で泣かせ、自分の評判を落とさないよう、脅していたお前を……俺は許さない」
「許さない? 誰が許しを
「分かりやすい小物だな」
ザーハックさんが機嫌が悪かった理由がわかった気がする。その話を聞いていた、ルナさんも少しばかり怒っているようだ。
すると、紅葉さんは剣を地面につけ、剣に炎を纏わせる。ザーハックさんに向かって剣から火花を散らしながら走り出した。
「俺を怒らせた事を後悔させてやる! 【フレイムザッパー】!」
そう叫びながら、下から上へと突き上げる。
決まったかのように見えたが、ザーハックさんはそれを簡単に片手で掴んでいた。
「こんなもんか。次はどうする? 次の攻撃は通用するといいな」
「ムカつく野郎だ。なら、俺の必殺技を見せてやるよ。これでお前は……」
「何でもいいから、早くこいよ」
「ーー絶対に後悔させてやる」
そう小さく呟くと。紅葉さんの体から湯気が出てくる。熱が上がっているようだ。
「俺の『フィナーレスキル』を見せてやる。これで終わりにしてやるぅぅ!」
再び、剣の先を地面に当てたまま走り出す。ザーハックさんに近づき、
「消え去れ! 【
叫びながら、力の限り切り上げた。
すると、轟音が鳴り響くのと、同じくらいのタイミングで、大きな火柱が発生し爆発を起こす。その爆発で黒煙と白煙が交互に上がる。
『フィナーレスキル』はこの世界での必殺技の事だ。高威力の攻撃スキルや強力なバフを掛けたりとさまざまだ。
一発逆転を狙える可能性があるので打つ場面は選びたい所だ。
フィナーレスキルはゲームパッドで設定ができる。僕はまだ使えないけれど。
僕はザーハックさんに呼びかける。
「ザーハックさん! 大丈夫ですか!?」
煙が晴れると。ザーハックさんは剣を足で踏みつけているのが見えた。
「ふん、これがお前の全力か? 口ほどにもない。もう十分目立っただろ? 次は俺のターンだ」
「ば、馬鹿な……俺の技が通用してない……だと……」
ザーハックさんは剣を踏んづけたまま、鎌を両手に持ち構える。鎌から炎の牙が現れる。
「剣が抜けねぇ! くそっ! 退けよ! ぐはっ!」
ザーハックさんが一蹴し、紅葉さんは真っ直ぐに転がっていく。
大勢を整えた紅葉さんを確認した後。物凄いスピードで紅葉さんに近づく。
「すぐに終わってくれるなよ?」
鎌から炎が放出され、その炎は獣の牙のように形成される。そして、ザーハックさんはスキル名を叫んだ。
「噛み砕け! 【
振り下ろした瞬間、炎の牙が紅葉さんを噛み砕く! それと同時に炎が周りに拡散し爆発する。
「ぐぁぁああ!!!」
その一撃を受けた紅葉さんは、ガクッと膝を落とし、うつ伏せに倒れる。
「お前も火耐性あるだろうに、情けないな」
ザーハックさんは紅葉さんを踏みつけると。
「これじゃあ、俺らじゃなくてお前が踏み台だな。お前もフィナーレスキル使ったんだ。特別だ。俺のも見せてやるよ」
次の瞬間、ザーハックさんの影から何者かが現れ、弓矢を放つ!
ザーハックさんは、すぐさま反応し、その弓矢を叩き落とす。再び確認すると、その場に紅葉さんの姿はなかった。
「大丈夫ですか! やっぱり、2人で戦いましょう。あの人は強いですよ」
弓矢を放ったと思われる人物は向井さんだ。向井さんは紅葉さんを抱えて、僕たちとザーハックさんとの中間辺りの場所に移動していた。いつの間にあんなところに移動していたのか。
「助かった。ありがとう。頼む、
「分かりました!」
向井さんは元気よく返事をすると、空高くジャンプし、ザーハックさんを狙うように矢を放つ。
「影縫い!」
放たれた矢は闇に染まる。あれは厄介なアクティブスキルだ。攻撃がヒットすると、移動制限が掛けられる。ゲーム時代の嫌がらせスキルの一つでもある。
「ザーハックさん! あれが影に当たると移動が制限されます! 気をつけて下さい」
「そうか。それは面倒だな」
鎌に炎を纏わせ、矢を焼き払った。
「そんな……あのスピードの弓矢に反応するなんて……」
「二人まとめて相手してやる」
「紅葉さん、走れますか? 僕が援護します」
「あぁ、大丈夫だ。頼んだぞ」
紅葉さんが走り出す。向井さんは紅葉さんの影に潜り込む。
ザーハックさんに近づいた、紅葉さんは攻撃を仕掛ける。
そして、二人の武器がぶつかり合う。その瞬間、影から向井さんが飛び出す!
「ミサイルアロー!」
ザーハックさんの死角を取った、向井さんが攻撃を仕掛ける。
攻撃に合わせて鎌で弾き返そうとするが、鎌が当たった反動で爆発を起こす。
「ほぉ、影から攻撃を仕掛けるといい、爆発する弓といい、面白いな」
本当は僕も参加した方がいいのだろう。だが、足が震えて動けない。自分が情けない。
ザーハックさんは、鎌を空に向かって大きく切り裂く。
「特別だ。もう一つスキルを見せてやろう。降り注げ! 火の雨よ。【
引き裂いた、空間から無数の火の雨が降り注ぐ。その無数に降り注ぐ火の雨は、広範囲に広がり敵プレイヤーにダメージを与える。一人を除いて……。
そう、ザーハックさんの攻撃を凌ぐ者がいたのだ。それは巨大な斧を持った橘さんだ。
橘さんは守護獣を守っているのだろうか、戦わずにじっと待っている。
橘さんは地属性を得意とするようだ。地面を盛り上げ、土のかまくらを作って火の雨から、守護獣と身を守っているようだ。とても頭が切れる人なのだろう。
先程の攻撃で、向井さんと紅葉さんほ二人は倒れていた。そして、ザーハックさんは、向井さんを掴み、紅葉さんの近くに投げ飛ばす。
武器を鎌から槍に変え大きく跳躍し力を貯める。
「これが、俺のフィナーレスキルだ。二人まとめて終わらせてやる。紅き龍よ、流れる星となりて地上に降り注げ!」
ザーハックさんの背中に、炎の龍が現れる。炎の龍は威嚇するように咆哮する。
その咆哮は地響きを起こすほど激しいものだった。炎の龍を纏ったまま、二人に突っ込むように加速し降下する。
「【
ザーハックさんはまるで隕石のように、二人がいる場所に落下し、広範囲で爆炎を起こしながら轟音が鳴り響かせた。
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