第5話 初戦闘、戻れない現実
面接を受けられる事になった僕は、街を観光をしていた。
「ここが、『ウガルンダ中央通り』か、食べ物のいい匂いが漂ってくるね、ログインしてから何も食べてないしお腹空いてきたなぁ。現実世界では今何時くらいなんだろう?」
「現実世界とこの世界の時間は変わらないよぉ、だから、今と同じ12時40分だねぇ、あーしはダイエット中だからいらなーい」
「時間の進みは一緒なのか。どうりでお腹が空いてるはずだ。なら何か食べに行こうか! お店が多いから迷うなぁ」
僕とハニポンは商店街を歩いていると、何かを焼いている音といい匂いが漂い、その匂いに釣られる。
そこには、白い鉢巻を巻いたスキンヘッドのおじちゃんが、肉巻きおにぎりを作って販売していた。
「肉巻きおにぎりだぁ。美味しそうだ。ここにしよう、すみません、肉巻きおにぎり1つお願いします」
「へい、らっしゃい! 肉巻きおにぎり1つね! 1つ300ドリーだよ! 毎度ありー!」
「ありがとうございます!」
僕は肉巻きおにぎりを購入し、中央通りの噴水に腰を掛ける。
こっちに来てから初めての食事だ。
「いただきます」
一口食べると肉汁が溢れだす。とても美味しい。
タレの味が焼肉のタレとは少し違う味がする。
「ちゃんと肉の味やタレの味が分かるな。流石はフルダイブだ。お腹いっぱいにはならなかったけど、他のも食べてみたい、観光しながら回ってみるか」
僕とハニポンは町を回っては、食べ物を買って食べたり、ゲームセンターに行って楽しんだりした。
「よし、町の事も分かった事だし、せっかくゲームの世界に来たんだ! そろそろモンスターと戦ってみるか」
「待ってましたぁ! やっと戦闘する気になったんだぁ、外に出てモンスターと戦う? それとも、クエストに行くぅ? ギルド会館に行ったら依頼があるかもよー?」
基本的には、ギルド会館からでないと、クエストや依頼は受けられないので、今、ギルド会館に戻るのは気まずいし恥ずかしい。今日の所は、クエストと依頼は後回しだ。
『クエスト』は、ネトゲやソシャゲなどによくある『ストーリークエスト』や『サブクエスト』、『素材クエスト』、『緊急クエスト』など、色々な名前のクエストがあるように、これらを含めた総称を『クエスト』といい、クエストはギルド会館などにある、【ワープゲート】というものを使い、そのクエストの目的地へと、ワープする事が出来る。
目的を達成すると、一分後に元々居た場所に戻される。
モンスターを討伐したりクエストを完了すると『冒険者カード』に記録されるので参加したパーティ全員に基本報酬などが『ゲームパッド』に贈られるみたいだ。
『依頼』は住人やギルド会館たちからの直接的なお願いみたいなもので、掲示板に貼られている紙を持って窓口に行って受注出来るみたいだ。
『依頼』の報酬は直接、アイテムやドリーを渡されるらしい。
どちらにしろ、ギルド会館に行かないと受けられないので、今日の所は辞めておく。
「クエストと依頼は今回は辞めておくよ、そうなると、残る選択肢は街の外に出て、モンスターと戦闘かな?
ハニポン、ここから近くて比較的弱いモンスターが出る所に行くにはどっちに行けばいい?」
「んんーとぉ、確かぁ、ここの街の周りのモンスターは全部弱いよぉ?
始めたばかりのプレイヤーたちが来るから強いのはいないからどこでもいいんじゃなーい?
あ、綺麗な景色がある場所があるから、そこの近くにしよぉ! その景色のいい場所は、街を南側の門を出て西側に進めばあるしぃ、少し登る事にはなるけど、景色は最高だよぉ!」
「弱いなら安心だね、前作やってるにしろ実際の体を使ってモンスターと戦うわけだから、不安しかなかったから助かるよ。じゃあレベリングのついでに、その綺麗な景色を見に行こう」
僕とハニポンは南の門を出るとそこには、空は青く、地は緑が広がっていた。
「うわぁ、風が気持ちいいなぁ。空が綺麗だし、空気もうまい。街の中だとあんまり分からなかったけど、こんな空だったんだ。ちょっと感動しちゃった」
「なにこんな所で感心してるのよぉ! 感心するのはまだ早いんですけどぉ? 西に見える、白い建物が見えるっしょ? あそこを目指すの」
ハニポンが指さす方を僕は振り向くと、白くて大きい天文台らしきものが見えた。
距離はあまりないみたいだが少し登るようだ。
「あの高台にある、天文台っぽい所を目指すんだね、了解。モンスターを倒しながら進んじゃおう」
広い野原を僕とハニポンが進んでいると。
たくさんの花の中から、小さな蜂型モンスターが数匹飛び出してきた。その蜂型モンスターは僕を見ると、襲いかかってきた。
「小型モンスターの『チェンビー』だ」
チェンビーは吸った花の蜜の成分で、属性と性格が変わる面白い性質を持つ蜂型のモンスターだ。
目の色が赤色だと攻撃的になり、青色だと守備的に、緑色だと穏やかな性格、などがある。
さらに、『チェンビー』の羽の色を見れば属性が分かる。
羽の先端にある通常だと黒い部分の色が、赤色だと火属性、青色だと水属性、黄色だと雷属性などと変わる。
この世界の基本属性は、火属性、水属性、氷属性、雷属性、風属性、土属性、光属性、闇属性の8属性で構成されている。
「この、『チェンビー』は目の色が赤色で、羽には何の変化も見られない。これは、攻撃的な性格で属性はないみたいだね」
「あいつの解説はいいから早く倒しなよぉ、戦闘は初めてでしょぉ? 油断してると痛い目に遭うよぉ」
「大丈夫、油断はしないさ」
チェンビーが針を前に突き出し刺そうと襲ってくる。
そのチェンビーの行動を読んでいた。僕は剣を抜いて構える。
「初戦闘だからといって負けないよ! さぁ、勝負だ」
一匹のチェンビーが、僕を目掛けて、針を突き刺そうとして、飛んでくる。
僕は剣を横に構え、盾のように持ち替える。そして、チェンビーの針が剣に当たり、針が剣に突き刺さる。
「よし、成功だ! 今がチャンスだ!」
チェンビーが突き刺さった状態の剣を下に置き、身動きが取れないチェンビーに馬乗りになり、僕は攻撃を続ける。
それを見ていたハニポンが怯えながら。
「あんたの戦い方、めちゃくちゃよ……。ファンタジー世界の戦い方を知らないの……? こんな戦い方、初めてなんですけど……これじゃあ、ファンタジー台無しだよぉぉ」
攻撃すると、緑色の体力バーがあり、その上に白い文字で5や8と出てきた。
これはダメージを与えられている証拠だ。
何度か攻撃を繰り返す。
すると、チェンビーの体力バーが空になると。
チェンビーが消滅し、茶色の宝箱がドロップした。
「やったー! 倒したぞー! とりあえずここにいる、チェンビーを先に、全部倒しておこう」
僕は残りのチェンビーも同じやり方で倒す。
《レベルアップしました》
チェンビーを数匹倒した事により、経験値が貯まったみたいだ。
レベルが上がり、スキルポイントも獲得した。
宝箱にも色があり、茶色、赤色、銀色、金色、虹色があり、右に行くほどレア度の高いアイテムや装備などが落ちる。
「いきなりナイトになったから、魔法とか覚えてないから……。アイテムを使うのも勿体無いと思うしね。最初だから仕方ないよ。そんな事より、ドロップした宝箱を確認しよう」
ドロップした宝箱を開けて確認すると、『20D』『チェンビーの羽』、『チェンビーの針』などと書かれたカードが入っていた。
「お、ドロップアイテムゲットしたねぇ、じゃあここで1つ、ハニポン様からの、ワンポイントアドバイスゥゥ! ドロップしたアイテムを、自分の所有物にしたい場合はねぇ、ゲームパッドあったっしょ? ゲームパッドにそのカードを挿れる場所があるから、カードを挿れると自分の所有物に出来るよぉ、取り出したい場合は……」
あぁ、ゲームパッドの機能で収納したり、取り出したりする機能の事だよな…チュートリアルの時に聞いたけど、せっかく説明してくれてるから、ツッコむのは良くないかな…
「って聞いてるのぉ? せっかく説明してあげてるのにぃぃ」
「ごめんごめん、ちゃんと聞いてるよ。ゲームパッドにカードを挿れたら、自分の物になるんだよね? 便利だよね! ありがとう」
説明の通り、ゲームパッドにカードを収納する。これでいいのか、ゲームの頃とは違いちゃんと、自分で回収しなきゃいけないんだなぁ、なんだかワクワクするな。
「よし、戦闘も収納も終わったし、先に進もう」
僕たちは、高台に向かいつつ、出てくるモンスターを倒しながら、先に進む。
「着いたね、ここが、ハニポンが言ってた景色がいい所か、確かにとてもいい場所だ」
そこは、ウガルンダの町を一望できる。
遠くにある、街や村などが微かに見え、景色や空気はとても最高だ。
僕は、高台の草原で体育座りになる。
「でしょぉ! あーしは、暇な時いつもここに来てるんだぁ、嫌な事とか疲れを、忘れられるからねぇ」
「そっかぁ、マスコットキャラクターって色々大変そうだもんね。色んなプレイヤーがいるだろうし、教える方も楽じゃないよね。
しかしここは、いい場所だな。そうだ、僕が、連れてきたいと思った人が出来た時、教えて連れてきていいかな?」
「そうなのよぉ、分かってるじゃぁん! いいけどぉ、あんまり連れてこられると、意味ないからねぇ」
「うん、分かったよ、約束する」
「暗くなってきたし、そろそろ、晩御飯の時間だと思うから、落ちるね! 今日はありがとう! 楽しかったよ、また明日!」
「おっつー! ログインした時はぁ、最後に寄った街とかの教会からスタートになるからねぇ。あーしも戻らなきゃだしぃ、またねぇ」
そういうと、ハニポンは消えていった。
ログアウトしようと思い、メニューにある、『ログアウト』を選択すると、
ブブーッという、効果音が鳴り響き、AI音声で、《ログアウト出来ません》と聞こえた。
「ログアウト出来ない!?」
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