第4話 冒険者登録
ここがギルド会館か、白いレンガとツタの感じがお洒落だな。二階建ての、ギルド会館の大きさは、ライブハウスくらいだろうか。
僕はワクワクしながらギルド会館に入る。すると銀髪でハーフアップの髪型の、お姉さんが話しかけてきた。
「いらっしゃいませー! 何名様ですか? あ、初めてのお客様ですね! 何をお求めですか?」
「一人とギャル蜂1匹でお願いします。冒険者登録をしたくて参りました」
「ギャル蜂ってなによ! あーしにはハニポンって可愛い名前があるんだからぁ!」
ハニポンが何かブンブン言っているが気にしない。
「冒険者登録ですね。かしこまりました。①ーAの窓口へお向かい下さい」
僕はお姉さんにお礼を言うと言われた通りに①ーAの窓口へと向かう。発売日より2週間経っているからか、冒険者登録する人はいないように見える。
そのまま二つある窓口のうち一つはガタイが良く、ギザギザした短髪の赤髪の男性職員が一人。もう一つの窓口には、笑顔が素敵な青髪のポニーテルの女性職員が座っている。特に意味はないが女性職員の方へと向かう。
「すみません、冒険者登録をしたいんですが…」
「冒険者登録ですね、ありがとうございます。冒険者カードをこちらの機械に読み込んでください」
お姉さんの言う通り、冒険者カードをタブレットの様な機械に乗せる。
「ありがとうございます。もう大丈夫ですよ、【TOWA】さんですね。登録が完了しましたので、これでワープゲートを使用したクエストなどに出撃できる様になりました。
他にも、ギルドの結成、ギルドへの加入などができる様になりましたよ。
①ーBの受付でギルドの結成や加入申請、ギルド対抗戦などのギルドに関する窓口になっておりますので、ギルドをお探しの場合などは行かれてみてはいかがですか?」
「ありがとうございます! 今は自分の事で精一杯で……ギルドはまたの機会にしますね」
「分かりました。初めてで分からない事だらけだと思いますが、こちらの窓口では冒険者さんの相談所でもありますから、お気軽にお越しくださいね。他に質問などがありますか? 何でも仰って下さいね」
「では一つだけ……。アルバイトをしたいのですが、募集しているお店とかありますか?」
僕が真剣な顔で言うとずっとどこかに行っていたハニポンがふと戻ってきて口を開く。
「えぇー? やっと自由になれてクエストとか素材集めとか、パーティー組んだり出来るのになんでアルバイトすんのぉ!? まじありえないんですけどぉ?」
今までどこに行ってたか聞きたかったけど、今はアルバイトを探すのが優先だ。
何で僕がアルバイトをしたいかというと、このゲームのアクティブスキルは、自分がこんなスキルを使ってみたいと、運営に送ると作ってくれる。
取得できる条件などはそのスキルの強さによって変わる。取得可能状態になったら、スキルポイントを使って開放すれば使用できるようになる。
だが、スキルの書を使えばスキルポイントを使わずにすぐに開放できる。そのスキルの書を購入するには、莫大な金額が掛かってしまう。
最初はレベル上げだと、みんなは思うだろうし、普通のゲームはそうなんだろう。だけど、このゲームは少し違う。最初のスキルの書で覚えれるアクティブスキルは、あんまり強くないのも多いのは確かだ。
しかし、このスキルの書は覚えているアクティブスキルに重ねがけする事ができる。重ねがけすると黒枠から始まり、白枠、銀枠、金枠、虹枠へと色の枠が変わっていき虹枠がMAXで1番強いことになる。
枠の色が変わる事により、スキルのクールタイムの減少や、技の威力が上がったりする。
序盤でこの作業をするのとしないのでは中盤辺りで躓く事になる。もちろん、アルバイトがない時間はレベリングに励んだりはする。
「まずは、アルバイトをしてD《ドリー》を稼ぐ、スキルの書を買うのももちろんあるんだけど、ゲームの世界で寝泊まりしてみたいのもあるしね」
「アルバイトですね、どういった条件でお探しですか?」
アルバイトはしたことはないけど、目立つのがあんまり好きではない僕は、接客業は合わないだろうと自分でも思う。
「アルバイトの経験がないですし、接客とかは苦手だと思うので、事務作業とかありますか? パソコンとか裏方のお仕事なら得意だと思います。まあやった事がないので何とも言えませんが」
するとお姉さんが笑顔で手を合わせる様に叩いて言った。
「それなら、丁度いいお仕事がありますよ! 人手が足りずに困っていたんです!」
お姉さんがそういうと、窓口の後ろの方を指を指しながら言う。
「別の支部から応援が来るまでは、うちのギルド会館のスタッフの人数が足りなくてですね。
ギルド対抗戦の結果を掲示板に貼りだしたり、事務関係のお仕事が溜まってまして。良かったらですがうちで働いてみませんか? お給料はいい方だと思いますよ?」
まあ掲示板に張り出すくらいならいいか、あんまり目立たないと思うし、この性格も直したいと思うし良い機会かもと思う。
「ほんとですか! ありがとうございます! 人手不足って大変ですね。こういった所は人数不足とは無縁かと思っていました」
「そうなんですよ、別の大陸のギルド会館支部からも応援が来るはずだったのですが、別の案件で来られなくなったと……。そしてうちのギルド会館は、【ルルード大森林】の調査に短期雇用の冒険者さんたちと、一緒にうちのスタッフ数名で向かっておりまして……」
「そんな事があったんですね、冒険者さんが行くのは分かるのですが、何故ここのスタッフの方まで行かれるのですか?、モンスターの調査などは冒険者さんに任せればいいと思うのですが…」
「ギルド会館と言っても色んな部署があって、冒険者さんたちのお仕事のサポートをしたり、冒険者さんたちや、一般の方の安全を守ったり、安心できる街づくりなどもお仕事の1つなのです。こちらにいらっしゃる『ザーハック』さんはここ、【アーティダル大陸】ウガルンダ支部の『防衛警備団』の元団長さんなんですよ?」
防衛警備団は分かるけど、アーティダル大陸? ウガルンダ支部? 聞いたことのない単語ばかりだ。僕は、AIが新しく作られた大陸って言ってた事を、ふと思い出す。
防衛警備団は現実世界の、警察と自衛隊が混ざったようなお仕事なのだ。
ゲームの時も頻繁に関わってきたりしていた。
侵入してきたモンスターから、街を守ったり、王様やお姫様の警護など行っている。
ギルド会館のお仕事の内容って、ゲームではそういった所は語られなかったな、面白い裏話だけど大変なんだ。
そういえばここに来てからここはどこでなんの街かも聞いてなかったな…
「ここがアーティダル大陸のウガルンダって街なんですね、色んなお仕事があって大変ですね……あとその防衛警備団の元団長さんがなぜここに?」
「はい、そうですね。色々と大変で……。猫の手も借りたい感じです。ザーハックさんは、本来は窓口ではなくて、モンスターの調査や討伐や街の見回りなどを行ってくれる所の部署なんですが、人手が足りずにここのお仕事をして頂いてるんです」
「分かりました。長々と質問してしまいすみません。力になれるかはわかりませんが、良ければ面接を受けたいです」
僕が言うとお姉さんは笑顔で。
「ありがとうございます! この街は今日が初めてなんですよね? 冒険者や街の方たちから、道を聞かれる場合とかあると思いますので、観光ついでに、場所の把握をしてもらえると助かります。
今日はゆっくりされて、面接は明日のお昼の、14時からどうですか? こちらの窓口に来て、お声を掛けて頂ければ大丈夫ですので」
「14時ですね、僕は大丈夫です! 分かりました、その時間にお伺いしますね、お仕事頑張って下さい、本日はお時間頂きありがとうございました。失礼します」
僕はお姉さんに頭を下げ、ギルド会館を後にした。
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