第14話 動いちゃうぜワトソン
火曜日。昨日はそのまま長谷川と別れて家に帰った。
5時以降は事務所を閉めると聞いているので、それまで学校に残ってスマホをいじったり、部活をしている友達と遊んだり練習を眺めたり…あっという間に時間が過ぎた。
「長谷川ー!」
…ちゃんと家入さんに付いていったらしい。
夜の9時に「松岡商店」で落ち合う予定なので、とりあえず家に戻る。松岡商店がなんの店かは知らないが、いつもシャッターが閉まっていて、店先に自動販売機が2台ある。
8時50分。お風呂から上がって、そろそろ松岡商店に向かおうと思い上着を羽織る。
松岡商店は西園探偵事務所の近くにあり、私の家からは500メートルほど離れている。
家を出ようとしたところ、どこに行くのかと母さんから聞かれたが、コンビニだと嘘をついて納得させ、予定より少し早いが松岡商店に着いた。
「こんばんは〜」
長谷川は幽霊のようにフラフラと出てきた。
…幽霊で間違いないのだが。
「おー、長谷川。さっそくだけど、家入さんに付いてった感想を聞かせてよ」
「感想を言いますね。…あの人の運転は心地いい!」
「その気持ちは分かるけど、そうじゃなくて。旦那さんはどうだった?」
「スーツの似合うハンサムガイ!」
「おー…そいつは是非とも見てみたい…じゃなくて!」
いつまでもふざける長谷川に少しだけイラッときたが、空気は意外と読めるようで、自分から話し始めた。
「結論から言うと、特に怪しい動きはなかったです」
「本当に何もなかったの?」
「はい。まず昨日の夜に観察したときは、旦那さんは会社から出たあとそのまま寄り道もせず帰りました」
右手を肘置きに、左手を顎に添える長谷川。
「今日はどうだったの?」
「今日は、昨日より少しだけ会社を出るのが遅かったけど、特に異常はなかったです」
まさか本当に潔白なのだろうか?
「怪しいところは本当になかったの?」
「…強いて言えばですよ?今日のことなんですけど、ネックレスを買ったみたいで。うーん…それくらいかなぁ?あー、あとですね。ネックレスを買ったあと、店から出てすぐに誰かと電話してました」
「誰と電話してたの?」
「そこまでは分かりませんが…でもあの浮かれたような話し方、たぶん話し相手は女の子ですよ!きっと!」
人差し指を立てて楽しげに話す長谷川。
「果たして真相はどうなるのやら…すべては明日、水曜日に分かるわけだね?」
「ええ…そのためにも、今から明日の予定を説明しますよ?」
「ああ…聞かせてもらおうじゃないの!」
自動販売機の灯りの前で、2人で…いや、はたから見れば1人で、計画を話し合った。
次の日。どうして人間、楽しみなことがその先で待っているとなると、こうも1日が長く感じられるのだろうか…
長い長い1日を経てようやく放課後となった私は、時に駆け足、それに疲れたら歩いたりして帰宅した。
なるべく地味な服を選び、ジーンズを履き、普段まったく被らないキャップを装着。ついでに、母さんが家でかけているブルーライトをカットするメガネを拝借。
はっきり言ってこの姿はダサいし、タクシー代も自腹だ。しかしこれも仕事のため…
疑惑を確かめるため…スキャンダルのため!
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