第3話 面接開始だワトソン

「あー…とりあえず、そのあたりも含めて話がしたいんですけど、お時間大丈夫ですか?」

「幽霊と話をしていた」こうしたとっておきの話は残しておくに限る…


「僕は構わないけど、君は大丈夫なの?もうじき暗くなるけど、親御さんが心配しない?」

「大丈夫です。こっそり退部届は出したけど、未だにオカルト部続けてると思ってるので」

家入さんは少し黙った。


「それは…うん、バレたら大変だね。それに、ここらへん街灯が少なくて危険だと思うんだ」

「それも大丈夫です。私をつけ狙う不審者がいたら半殺しにしますから」

「はんご…うん、無茶はしないでね」

自信はあるのだ。空手を習い始めたのが小学1年生の頃だから、もう10年になる。

…中学に入学して以来やらなくなったので、実質5年ほどだが。


「…とりあえず外は寒いし、中で話そうか」

「あ、はい」

「あのー…僕はどうしたらいいですかね?」

「…」

幽霊の言葉は無視しつつ、私は家入さんの事務所にお邪魔することにした。


「おー…」

「ごめんね、古臭い事務所だよね」

「いえ、なんていうか、ノスタルジック?な感じがして私はいいと思います」

「そうかな?ありがとう。ミルクティーとレモンティー、どっちがいい?」

「ミルクティーで」


ノスタルジック…これはお世辞ではない。

茶色いブラインドで外からは見えなかったが、内装はなかなか洒落ている。

本棚は部屋を取り囲むように立ち並び、高級感のある焦茶のソファに年季が入ったローテーブル。淡いベージュのテーブルランプに木目調のフローリング…まさに探偵のそれだ。


「お待たせ」

「ありがとうございます」

家入さんがこの部屋で淹れてくれたミルクティーをいただきながら、さっそく私は話を切り出した。


「家入さん。探偵の助手はいりませんか?」

「なかなか唐突だね。君も探偵業に興味があるのかな?」

「興味があるというか、ここでなら私の能力が活かせるような気がするんです」

「助言をしたのはあくまで僕ですけど!」

就職アドバイザー的幽霊が、家入さんの後ろの窓から「顔を透かせながら」出してきた。


「具体的にどういった能力を?」

「念のため聞きますけど、家入さん。あなたの後ろに違和感はありますか?」

「後ろ?…いや、普通にブラインドが閉まってて…違和感という違和感はないけど…」

「やっぱり見えないんですね」

「見えない…?」


私はここにきてようやくネタばらしをすることにした。


「実は私、幽霊が見えるんです」

「ゆうれい…えっ…!?」

「そう!幽霊!まさに僕!」

ハロワ幽霊、両指で己を「ボクボク」と。


「…てことは…まさか僕の後ろに…?」

「そうです。幽霊がいます」

「いますとも!ふふん!」

誇らしげな幽霊、青ざめる探偵。


「しかも、顔だけニュイっと」

「顔だけ…ニュイっと…幽霊…ああ…」


「…家入さん?大丈夫ですか?」

「いいリアクションですねぇ!幽霊冥利に尽きる!…的な!?」


ガクッ…


「家入さん?あれっ?…気絶した!?」

「家入さん、ダンディなくせして幽霊ギライ…メモメモ…」

「いやメモなんかしてないじゃん。それに幽霊なんて大体みんなから嫌われてるよ」

「しょぼーん」

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