第2話 仕事探しのワトソン
「え、私のために仕事を探してくれたんですか?」
「はい!あなたは幽霊が見えるらしいから上手く活かせそうですし、僕も魂を削ってまで人の役に立とうとしてるから天国行きの可能性が高まります!」
(本当によくぶっちゃけるなこいつ)
本音を話す人は信用できるとはいえ、あまりにも正直に話されるとかえって疑ってしまうものだ。
「幽霊が見えるのを活かせるって言ったけど、ここってどんな仕事をする所なんですか?」
「よくぞ聞いてくれました!あなたにピッタリ!…かもしれない仕事、それは…」
「それは?」
「探偵です!」
腰に手を当て、もう片方は
あれに似ている。
「あたりまえ体操みたいなポーズですね」
「そうですか?あーそういえば、あたりまえ体操が流行ったのと同じくらいの時期に死んだから、たぶんそんな感じです」
(どんな感じだよ)
白いシャツに黒いボトムスというシンプルな服装。真面目な性格かと思いきやこの男、さてはかなりのテキトー人間だな?
「ここって探偵の事務所なんですか?ボロいけどなんかかっこいいですね」
「そうでしょうそうでしょう!探偵業と事務所のボロさはイコールなんですかっこいいんです!ちなみにここには家入さんという探偵がいます」
「家入さんっていう人の他にも探偵さんはいますか?」
「いえ、どうやらこの事務所は家入さん個人でやってるらしく…だから雇ってもらえるかどうかは分かりません。どうします?今からでも話つけてみますか?」
私は悩んだ。雇ってもらえるかは分からないし、何より個人で探偵をやっている人物だ。
路地裏の先のボロっちい事務所で、一人。
きっと変人に決まっている。
「家入さんってどんな人なんですか?」
「人柄は良さそうですよ。事務所こそこんな感じで古臭いですけど、近所の人にも気さくに挨拶をしたりとか…」
「ちゃんと挨拶する人なんですね。変人かと思ってました」
こうして話している間にも、ぶっちゃける性格については私も人のことは言えないなと、自覚し始めたそのとき…
「あのー…なにかご用かな?」
幽霊の後ろの古びたドアを軋ませながら、中から男性が出てきた。
30代くらいだろうか?髭ともみあげが繋がっていない次元大介のような顔をしている。
「あの、もしかして家入さんですか?」
「はい、家入です。ところで君…こんなことを聞いていいかどうか分からないんだけど…」
「なんですか?」
「誰もいないのに誰かと話してるように見えたんだけど…」
そう見えても仕方がない。大多数の人間には幽霊が見えないし、彼もそのひとりらしい。
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