第三話 協力者と証拠集め

「それで、お前が俺の協力者ってことか?」

「ああ、そうだ」


 学校に来て、いつも通り綾小路たちのグループに暴力を振るわれていると、屋上に蔵田義盛くらたよしもりに呼び出された。

 コイツ、スクールカースト上位の綾小路と二位の位置に立つ男だ。


「雪姫に頼まれたわけじゃないのか」

「俺はメシアに指示された通りに動いているだけだ」


 義盛の言っているメシアが誰なのかはよくわからないが、協力者なのは間違いないのだと推察した。


「……とりあえず、何をすればいいんだ?」

「瀕死レベルでボコられろ」

「は? 嫌だよ!! 今と何も変わらないだろ!!」

「必要なことだ。そのためにお前に協力してもらわなければならん――――フールを気取れよ弱者。未来を掴めるのは、お前の演技力次第だ」


 肩にポンと手を置かれ、すっと去っていく義盛。

 何を考えてるんだかよくわからないが、もしかしてコイツ脳筋か?

 俺はその後渋々義盛の指示を従うようになり、殴られながら他の男子や女子の情報を探ることにした。他の生徒たちから証拠を少しづつ集めていきながら、雪姫とデートしたりする日々を過ごす中、義盛がなるべく俺が殴られている時にいるようになり、スマホを構えて何かしているのをよく見るようになった。


「おい、義盛何やってんだよー」

「コイツの顔を録画してる。見ていて気分がいいんだよ」

「ホント、ドSなお前」


 金髪不良の龍之介に首に腕を回される義盛。

 ……いい加減、風呂に入る度にしみるのが耐えられなくなってきたんだが。

 龍之介と義盛は、その場で足音が遠くに行くのを感じて起き上がろうとした時、腹に思いっきり衝撃が走る。


「起き上がっていいと思ってんの? ブサカキー」

「いっ――――!!」


 金髪のツーサイドテールの女子がニタニタと笑っている。

 彼女は汚らしい笑みで俺の腹を踏みつけていた。


「最近ヨッシーに気に入られたみたいだねぇ? キッッッモいんですけどマジで」

「……っ綾小路……!!」

「あぁいいねぇその顔、でもぉ? お前みたいな人間の屑、生きてる価値ないから!!」

「っぐぁあああああああああ――――!!」


 綾小路は思いっきり俺の顔面を蹴り飛ばした。

 俺は頭を抱えあまりの痛みに涙が出てくる。


「あぁーすっきりした! んじゃ明日こそ死んで? それでぇ、遺書には『綾小路さんにご迷惑をおかけしましたので、死のうと思います』って書いておけよー? ばぁーい」

「…………っ」


 機嫌良さそうに綾小路は去っていった。

 ……今日も、無駄に暴力振るわれただけで終わったか。

 ピロン。


「……?」


 俺は学ランの胸ポケットから、スマホを取り出す。

 そこには、義盛からメールが送られていた。

 内容を見るに、今日は一度帰れ、というメールだった。

 俺はしかたなく、今日も家へと帰ることにした。

 俺は学校帰り、家で晩御飯を取っていると義盛からメールが来た。

 適当にカレーを口の中に流し込んで自室で確認することにした。

 中身は、俺が今日綾小路に暴力を振るわれている映像だった。


「……よし!!」


 俺は決定的な証拠にガッツポーズした。

 ようやく殴られることが実を結んだと思って、浮かれてすぐに雪姫に電話した。


『はい、もしもし? マモルー? 元気―?』

「やっと大きな証拠、ゲットしたんだ! 俺が綾小路に暴力されてる動画!」

『ホント? じゃあ……!』

「ああ! これで、俺がいじめられることがなくなる……!」

『じゃあ、クリスマスデートしよ! お祝いってことでさ!』

「もちろん!」

『それじゃ、クリスマス予定空けててねー!』


 プツン。


「ふぅ……楽しみだな」


 俺は休日にあるクリスマスの日を思いっきり楽しむことにした。

 しかし、俺は当日にあんなことになるなんて予想していなかった。

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