第8話
※レマイア領内
父であるレマイア伯爵様に街中の警ら強化の進言を上げてから、かれこれ4日目程過ぎている。その為街中は慌ただしく少しばかりの緊張感も沸いている。
人の流れに左程の変わりはないが、騎士や従士の装備は厳つい物に変更され、回りが受ける印象はいつも以上の緊迫感があった。
そんな中従士兵ではない俺だが少なからずの風評被害が発生している。極一部の従士兵からだろうが俺への不満が告げられたのだ。領主の家の者が騎士職にも就かず、従士兵でも無いのだから。
ほんと何様なの?文官の振りは解りずらかったらしい。だが解れよ、騎士に向いてないんだから無理じゃね?そこはお察しになれや。
直接に問いに来た者達には、今回の派遣先導者であると説明をしておいた。そういう仕事を請け負っている立場なんだよ、いい加減だかな。
俺の記憶が正しければ、この世界は不安定な過渡期を乗り切っていたはずだ。ここから暫くはこんな文明でも黎明期と呼ばれるだろう。
奴等が言っていた戦乱は最早歴史で知る位か。この国の領地の殆どが安定の為の領地経営へと向かったらしい。
我が領地もそれに倣っていて、土地の開拓や他領の移民云々にそれでの財政の圧迫など許されてはいない。肥大させても保護出来る文明が無いからだ。
「農村の視察も仕事の範疇なの?」
余りにも大雑把な俺の行動に、メイサリスも流石に訝しいと思ったようだ。うろついているだけでお金に成るのだから良いだろうに。俺は無賃だけど。あれ?良く無くない?
「農政課の方で確認が行われているから、こっちはそれらしくのついでかな。その近くに公共で作られた畑があるから、実務環境の様子もみないと何も返事が出来ないからね」
俺の言い回しが少し柔らかく成っているのは、傍に2つ年上のお姉さんしか居ないからだ。勿論メイサリスの事だけど。場所場所で使い分けするのが男の甲斐性、夜の攻めは野獣に成り下がるが。子作り上等!先走りである。甲斐性なしなのに。
「ふ~ん、公共のもあるんだ」
そこはありまくりだ!俺も初めて知ったけど。ここの従事者は協会預かりの孤児達だ。そこそこ領地経営は誇れる程度に成っているが、それで全ての孤児が無くなる訳ではない。
医療関係が俺の知り得る技術を持ったとして、病が絶滅される事はないからな。ましてこっちは・・生き抜くのもひと苦労なのだよ。
公共の畑を従事させる為に指導者も雇った、それは身を粉にするのが無理に成った近くの農民である。只飯喰らいの侘しい立場は、お先真っ暗なので非常に喜ばれた。
成り立ち云々を問いて、今の現状もそこそに説明を済ませる。あまりの重い話を受けるメイサリスが、俺を崇めそうに見て来るから早くに切り上げた。
それにこの政策を続けているのは、俺の身内なだけだからだ。その見本は国な訳だし。
領の政策を程々に手伝うのは、前の俺が育てられた恩義を幾らかでも返そうと思っていたからだ。それで返せていると思うのは、自己満足でしかないが。
目的地の現場で指導者や孤児たちの現状報告を聞き、その場て多からずの遣り取りを終える。そこそこの順調があるのなら、無理強いの改善案をひけらかすなどない。考えても無いからな。
その後は指定地域に雑木が植林された、そっちの公の場所に目を向ける。これも公共事業の一つだ、散布した畑の最奥の隣辺りに展開されている。
地域にもよるが森林近くまで畑が伸びている所は、壁代わりに雑木も多目に植林される。そのまま防壁がわりな訳さ。火など放つ奴は、一緒に燃えてしまえばいい。腐葉土となれ。
雑木は森林に異変が合った場合の対応用で、いざとなっては出来る事は少ないが最後は火力頼みになる訳だ。一か八かの引火に怯えてくれたら、ラッキーな程度だけどな。因みに燃料に成る雑木拾いの仕事も、ここの孤児院の子供達に斡旋している。
両手一杯の半分を一抱えとして、その1束をお一人様3束までが1ロッドになる。1日の上限が一人Ⅰロッドまでで銅貨Ⅰ枚の取り決めだ。それに人数の制限も付いてたかな?雑木も有限なのでハゲ地には出来んのだよ。
行く行くは孤児達の教育にも手を掛けるつもりだ、彼等彼女等は将来の領の担い手に成るだろう。その下地くらいは遣るつもりでいる。お金稼ぎの目算が付いたから。だから誰かに本気を出させよう。
そんな農地から街の方へ戻れば、手前に倉庫がそこそこに建ち並んでいる。雑木だけでなく、倉庫もそれなりに壁として活用する事に成る。
この辺の区画の配置は、地味に織り込む事で形になりつつあるが、そこを活用出来ても喜べそうにはない。
ぶらり途中で昼食を取ったのだが、メニューに肉たっぷりのスープと書かれていた。それの対抗に肉少な目・・あったら嫌過ぎ。
対抗はなしで相変わらずの料理だ、何処も同じスープばかりだ。何々焼きとかもあるのだが、酒の肴の単品扱いだったりする。何々とのパンのセットも、あったらいいのに。
そんな俺の願望は尽きないが、少しは冒険者の肩書きにあった仕事をしょう。まあフリもいい所だが、それから冒険者ギルドに顔を出した。
現状の把握は初歩の初歩だからな。この場が差し迫った雰囲気に包まれてなければ、俺がしゃしゃり出る必要はまずない。
何も無い事を祈りつつ、そろそろ文官のお仕事を推しすすめなければ。回りに迷惑を巻き散らしながら、手前味噌な計画を実行しなきゃならん。この世界に味噌は無いけど。腐り物は食べるべからず。
◆
※レマイア領中央冒険者ギルド
「あんた、何だいそれ」
おふぅぅ、会ってはいけないというか、見られちゃ不味い奴に遭遇しちまったよ。
「この格好か?冒険者駆け出しで小生意気な事を言っても、俺程度じゃ全くの役立たずだからな。こんな時は都合よく使われる身なのさ」
どんだげ卑下てると思われても、彼女へのこのアピールは大事だ。このシュウールは、俺達の勧誘をまだ諦めていないのだ。
彼女のチームの半分は、Cランク保持者が揃っている。そこからの勧誘なのだから、それは中々に珍しい。メイサリスのチームからすれば、その経験値は幾らか低いらしいが。
それも噂程度で真相は解ってないが、俺と冒険者活動を続けて行きたい訳じゃ無いらしい。まああれだ、そろそろ身を固めて新しい人生計画を練るつもりだとか。
俺の頑張りから何かを掴めると思われても、平民街道は果てなきなんだぞ。メイサリスにも話てはいるが。
はっはっはっー、だが何かの捻った返しが思い付かなかったのか?俺に返事に軽く流されて離れていった。
メイサリスが危ない視線で不味い所を凝視していたが、変な反応をしないように上の空を貫いた。妄想もストップ高だな。
いや中々良いスタイルのシュウールは、黒目黒髪のボンキュンで女としては引く手数多だろう。俺としては・・ちょっとお姉さんが過ぎる・・かな。
歳じゃなく達観が過ぎるというか、そっちの度胸にも載れないもの。貴族の子供は貴族じゃないのよ、そこは解ってほしいな。
別に歳上云々で嫌った訳では無いが、姉的な雰囲気の知り合いが多かったので新鮮味が沸かないのだ。その姉ポジは足りてるといいたい、メイサリスだって可愛い感じだけど2つ上だからな。
因みに可愛い感じと表現したが、顔は丹精に整っている・・そこは短髪をずっと貫いているから、幼さも持ち合わせているって奴だぞ。臆面の無く惚気てしまったよ。綺麗可愛いは今夜も頑張れる。
短髪・・その辺の様相は冒険者に有り勝ちで、長髪のせいで危険回避が遅れると思われている。異世界アルアルなら、大抵はロン毛が超ロングを主張した物が多いけどな。その髪が勢いよく揺れたら視界を損なう筈が、目で見ている訳じゃないから問題無いと宣うのさ。
そして常時発動スキルなんて当たり前だから、よそ様の何も確認済みなんだと。相手の見てくれを気にしないのに、あれはしっかり気にしていそうだ。大きいのと元気なのは必須項目で、耐久と持続も加味するとか。
自信が無いなら隠蔽の魔道具は必須になるな、将来の安定した旦那稼業の為に。その辺の括りに透視も出て来るんだが、妄想を拗らしてないだろうか。弱さを暴露されたら失業だよ。
建物や壁を透視して先を確認出来るのに、肉体の透視はどうなのだろうか?標本の説明は面倒だと省いているのかも?上から6本目の肋骨の裏に心臓があるーー的な。
肉は透加しても骨のそれはない、壁より固い骨だがハンマーで砕かれたりする。骨密度の問題なのだろう。老化すれば先が見えるかな?ハンマーVSハンマー?
ここは妄想より必要な情報収取だ、大森林の調査がどの程度まで進んだのか?今日は冒険者個人では無く、領公館の方から来たと伝える訳だ。しっかり制服は着ているので、怪しい所は全くない。方角も間違いなく合っている。何も売れないけど。問い合わせ先は教えない。
予想通りの展開いで、森の浅場には目立った異常は無いとの事だ。知ってたよ、俺がぐんぐんと奥まで突っ込んで、何が出来るかの検証をしたからヤバそうな獲物を取ってしまっただけだ。とはいってもせっかくの獲物な訳だから、そこはしっかりと換金したさ。お金欲しいしお金は大事。
もう数日の様子見が終れば、以前の日常に戻すらしい。それを経たら、警邏も緩む事になるだろう。なら俺の仕事も、予定に入れて片付けるとするか。
何か・・フラグにしてもセコイ。夜じゃないと振れないし、旗じゃなくて竿だけど。このまま買い物無双と洒落込むか?
その辺も時間との戦いだよ、夜の帳が下りれば賑わう店が替るからだ。昼間に稼ぐ商店には、灯りを付けてまで稼ぐ者は少ない。その辺も売れるか解らない客待ちに、灯り代が載せられたら苦労はしないからな。
客の方でも昼間の価格を把握しているから、余分な出費に納得するのは緊急案件なものだけさ。
さらに暗がりに見る物は、上物と思わせない訝しい空間が作られる。
その辺を上手く利用する
そこも惜しむらくに話のタネ・・本当にタネだけの事だからなあ。ちょっとした酒の席でその手の話題を振られたら、其れ也のお付き合い会話が欲しいじゃない。あーそうねーそうそうとか、うんうんそこは知ってる店だーとか。
男のだらしない付き合いには、下世話の存在が打ち解ける鍵に成りそうでしょ?そんな友達も居ないから、夜の飲み屋にも行かないけどな。
その程度のお付き合いをしてくれる人も居なくないが、気軽に付き合ってくれそうなのは女騎士隊のメンバー・・あれ?二度と頭が上がらなくなるからそれはなしで。
あいつらってめちゃくちゃフレンドリーで、抱き付きがダッキングじゃなくておっぱい圧縮だからな。
中にはデカいのも数人いて、呼吸困難を何度か経験している。鈍器女子もそこそこ居るが追及は死あるのみ。そんなダッキングは止めて、そこそこの感触を保って欲しい・・俺の生存意義の為にも。
鈍器に使える物じゃない、自爆テロじゃないか?精神は壊滅しちゃうだろう。
メイサリスは大きい筋肉保持者で、俺は球技を思い出した。勿体無いからずっとドリブルを維持したら、ファールを取られたけど。ピィィィィィ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます