同性愛者に育てられた子供の悲痛な叫び
1.同性カップルに育てられた子供たちの声。【前編】
同性カップルに育てられた子供は既にいる。
両性愛者ならば、異性を愛することは出来る。また、同性愛者なのに異性と結婚していた人もいた。彼らの中には、離婚し、子供を連れ、同性パートナーと暮らし始めた人々もいるのだ。
そんな環境で育てられた子供には、辛い経験を告白した人も多い。
これから紹介する証言は、断りがない限り原文は英語である。翻訳は全て私が行なった。私自身、英語は得意ではない。ゆえに機械翻訳に頼った部分が大きい。
最初に紹介するのは、Public Discourse というサイトに載せられたケイティ゠ファウストという女性の投書だ。(翻訳元:https://www.thepublicdiscourse.com/2015/02/14370/ )
二〇一五年――同性婚を認めないのは憲法違反かどうかがアメリカ連邦最高裁判所で審議された。最高判事は九人。うち、同性婚賛成派は四人、反対派も四人、中立が一人だった。判決の鍵を握るのは、中立の判事・アントニー゠ケネディだと考えられた。
そんなケネディ判事に、ケイティは公開状を送る。
ケイティの母親はレズビアンだ。しかし、同性愛者に理解のない社会的事情から男性と結婚したという。そうしてケイティは産まれる。当然、上手くいくはずがなかった。母親はすぐに離婚し、女性パートナーと暮らし始める。そんな「二人の母親」の元でケイティは育てられたのだ。
同性愛者たちの集会で、ケイティは何度も演説した。
「両親は離婚したけれども、貴女たちのような素敵な人々と出会えて本当に良かった。」
ケイティは称賛を一身に受ける。母の周りのレズビアンたちは、ケイティの成熟した世界観にうっとりした。何度も何度もケイティはこの言葉を繰り返した。そのたびに技術も上がってゆく。これこそ、彼女たちが聞きたがっている言葉だった。
「いま思えば恥ずかしいのですが、あれは嘘でした。」
ケイティはそう語る。
「私の三十八年間の人生の中で、両親の離婚は最大のトラウマだったのです。母のパートナーや友人を私は愛していました。しかし、父が再び私を愛してくれるのであれば、彼女たち全員とでも交換したいと思っていました。」
母親のことは今でも愛している。ゆえに、このような告白はケイティにとって難しいものだった。それでもあえて告白したのは、大勢の他の子供たちも同じ経験をしているからだ。
「レズビアンカップルに育てられた人に、二人の母親を愛しているかと尋ねれば、恐らく『もちろん!』と答えるでしょう。一方、父親のことを尋ねれば、辛い沈黙か、父親が欲しかったという胸が張り裂けそうな告白か、あるいは、もっと会いたいと思っている父親がいると知ることになるかのいずれかになります。」
二人の母親に対して恨みはない。むしろ、育てられたことに感謝している。ケイティが子育てをするとき、母親を参考にすることが多かったほどだ。
それでも、父親と母親が子供には必要だという。
「子供が出来ない関係の大人が子育てをしたいと思ったとき、赤ちゃんはどこから来るのでしょう? 父親と母親の自然な関係によって子供は産まれます。同性愛者の家庭に預けられた場合、少なくとも一人の親との大切な関係と、両性による大切な影響を受けられなくなります。これは、カップルの組み合わせの問題です。養子縁組であれ、離婚であれ、代理出産であれ、このような状況は大人たちの欲求を充たしますが、大きな傷を子供には負わせます――実の親の片方か、両方を失わせるのですから。」
父親が子供に与える影響と、母親が子供に与える影響では全く異なる。ゆえに、父親と母親が愛し合い、両方に愛される権利が――両親を知り、両親に知られる権利が子供にはあるというのだ。
「私は今、親になりました。子供に与える影響が、夫と私とで違っていることがはっきりと分かります。両親が一緒に暮らし、愛してくれているからこそ、子供たちは健全で健康な生活を送ることができます。父親としての役割がいかに重要であるか、そして母親としての私がいかにかけがえのない存在であるか。子供たちの人生を補う役割が私たちにはあります。しかし、どちらも捨てられるものではありません。それどころか、どちらも重要なのです。」
一方、同性婚賛成派の中には、「異性愛者の元で育った子供より、同性愛者の元で育った子供の方が健全に成長している」という研究を提示する者もいる。
これについてもケイティは批判する。
「実の親に捨てられたとき、両親が離婚したとき、片方の親が亡くなったとき、代理母出産で生まれたとき、子供たちが大きな苦しみを味わうことが、もし社会科学的に認められたとしましょう。その場合、同性カップルに育てられた子供のほうが『より健全に成長している』という結果を出すでしょうか? 『二人の母親』『二人の父親』の元で育てられた子供たちは、みな、このようなトラウマを経験しているのです。片方の親を失い、平穏な日々を奪われたことによる悪影響や苦痛が、虹色の旗の下で育てば奇跡的に全て取り除かれるのでしょうか? そんなことより、同性愛者の友人を愛していると証明しなければならないという、私たちと同じプレッシャーを研究者が感じていた可能性の方が高いでしょう。」
父親と母親の元で育てられる権利が子供にはある――そう主張する者はケイティだけではない。
『フェデラリスト』というウェブサイトには、ヘザー゠バーウィックという女性の文が投稿されている。(翻訳元:https://thefederalist.com/2015/03/17/dear-gay-community-your-kids-are-hurting/ )
ヘザーもまたレズビアンカップルに育てられた子供の一人だ。
同性愛者に対する差別が激しいアメリカでは、同性愛者たちは都市部の一か所に集まって暮らしている。ヘザーが生まれ育ったのも、そんな同性愛者の集落だ。
「私は、あなたたちの娘です。」
同性愛者のコミュニティに、ヘザーはそう語り掛ける。
ヘザーは、同性愛者たちから様々なことを学んできた――辛いときに勇気を出す方法も、共感の仕方も、ダンスの仕方も、他人と違うことを恐れないことも、たとえ一人でも自分のために立ち上がることも。同性愛者たちのことは仲間だと今でも思っている。
子供時代から二十代までのあいだ、ヘザーは同性婚を支持していた。
しかし子供時代から時間が経ち、自分の経験がどのようなものだったか振り返るようになる。加えて、自分自身も母親となり、子供たちのことを考えてゆくうちに、考えを改めるようになったのだ。
「同性間の結婚や子育てでは、母親や父親を子供から奪いつつ、『他の家族と同じだよ』と言います。しかし、そうではありません。私たちの多くは――貴方の子供たちの多くは傷ついています。父親がいないことで私は心に大きな穴が開きました。父親が欲しいと毎日思っていたのです。母のパートナーを私は愛していましたが、二人目の母は父の代わりになりませんでした。」
「男性を必要としない――あるいは必要ではないと言う女性たちに囲まれて私は育ちました。しかし、幼い頃の私は、どうしても父親が欲しかったのです。」
「男性を必要としないコミュニティの中で、心の底から父親や男性を求める気持ちを抱えて歩くのは、奇妙で、困惑することでした。私は、自分のそばにいてくれない父親に腹を立てたこともあれば、そもそも父親が欲しいと思っている自分に腹を立てたこともありました。今でもそのことを嘆いている部分があります。」
二人の母親を愛しているという点では、ヘザーもケイティと同じだ。母親ばかりではない――同性愛者のコミュニティも愛しているという。
「同性愛者は良い親になれないと言っているわけではありません。なれるのです。私には最高の親がいました。また、異性愛者の親に育てられても、上手くいくとも言い切れません。離婚・育児放棄・不倫・虐待・親の死など、家族の絆が崩れて子供たちが苦しむ可能性はたくさんあります。しかし、一般的には、母親と父親の両方に子供が育てられている家族構成が最も良く、成功しています。」
そして、自分と同じ子供は一人だけではないとヘザーは主張する。しかし、彼らの声がなぜ聞こえてこないのか。あるいは、耳障りのいい声しかなぜ聞こえてこないのか。それに対してはこう忠告する。
「私たちの多くは、怖くて声を上げられず、自分の傷や痛みを伝えられません。そんなことは言えないからです。同性カップルに育てられて傷ついていると言うと、無視されるか、嫌われ者のレッテルを貼られてしまいまいます。」
「あなたたちを憎んでいるわけではありません。あなたたちは、見当違いなレッテルを貼られる痛みや、自分を悪者にしたり黙らせるためにレッテルを貼られる痛みを理解していると思います。あなたたちが本当に憎悪されていることも、傷ついていることも私は知っています。」
「『神はホモを嫌っている』『エイズは同性愛を治す』というプラカードが掲げられたデモも間近で見たことがあります。私は、あなたたちと一緒にその場で泣き、怒りで熱くなりました。しかし、私はそのような人ではないし、他の子どもたちも同じです。」
「難しい話なのは分かっています。しかし、私たちは話す必要があります。難しいことを話せる人がいるとしたら、それは私たちです。あなたたちがそれを教えてくれました。」
(後編へ続く。)
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