第8話
狼王子と話してみると私を本の趣味が似ていた。彼も純愛モノの恋愛が好きみたい。それならあの本は好きかな、それともあの本と王子に薦める本を考えている自分がいた。
王城から帰り部屋にいるとコンコンと扉が鳴り、返事を返すとお母様が手のひらサイズの箱を持って部屋に入ってきた。
「ミタリア、リチャード王子殿下から贈り物が届いたわよ」
(王子からの贈り物?)
いつも届く薔薇の花束ではなく、手のひらサイズの箱をお母様から受け取った。箱を開けると王子とお揃いの銀製の腕輪と手紙が添えられている。
その手紙には『これなら簡単に外れないから、普段の時に使って』と一言、王子の直筆で書かれていた。
「さあ、ミタリア。リチャード王子殿下にお礼の手紙を書きなさいね」
「はい、お母様」
「私達もお礼しなくてはね」
私達? 王子のプレゼントは私だけではなく、お父様には高価な万年筆と高級なお酒。お母様には王都で夫人達に大人気の手鏡、化粧筆などがセットになったお化粧ポーチをいただいたみたい。
私のお腹をモニモニするだけの意地悪王子だと思っていたけど、素敵なプレゼントは嬉しい……な。ブレスレットを箱から出してニマニマ見ていた。
は、いやいや、王子が優しいのは今だ。
ヒロインに会えば王子は変わってしまう。
でも、プレゼントを貰ったのだから、お礼に恋愛の本と狼の絵柄を刺繍を施したハンカチをお礼の手紙と一緒に王子へ送った。
翌日の昼下がり、この日も王子の部屋でお茶をしていた。
「ミタリア、本と可愛い刺繍入りのハンカチをありがとう、大切に使うよ」
「私も素敵なブレスレットをありがとうございました」
お礼を言うと笑った王子のイケメンスマイルに、照れて目を逸らしてしまった。それを見てクッククと笑い。
「ミタリアは平気で俺の前でへそ天するくせに、なに今更照れるなよ』
「それはそれ、これはこれです」
「そう? そうだミタリアから貰った本を読んだよ。俺の好きな話で不覚にも涙ぐんでしまった……」
たくさんの本を読んでいる王子もこの本は知らないだろうと、古い作品で私の好きな恋愛の本を渡したのだ。
(王子もその本で泣いたんだ)
「なんだよその顔、俺が泣いたのがおかしいのか?」
私は違うと首を振った。
「私もその本で感動して泣いたから……リチャード王子殿下も同じだなって……嬉しかったんです」
そう伝えると、うっ、王子は眉をひそめた。
「お前って……か、可愛いな。ちゃんと俺がやった、お揃いのブレスレットもつけてくるし」
手を伸ばせば相手の手が掴めるほどの小さなテーブルで、王子に手を取られて手の甲にキスされた。
「リ、リチャード王子殿下?」
「リチャード、リチャードでいい……そう俺を呼んでミタリア」
(えっ、ええ?)
びっくりている間に王子の手はプチっと、私のブレスレットを外してしまい私はポフンと獣化した。
(なっ、何?)
「ミタリアの獣化は俺の手の中にある、俺の知らないところで獣化はさせない」
猫になった私は王子に抱っこされて、ぽん、とオフトゥンの上に放り投げられた。
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