第12話 倉持は逃れられない
倉持は山へ向かった。
山と言っても、険しい森を切り開いたものではなく、ちょっとした森林公園程度の山である。
装備もリュック一つで事足りる。
そこまで有名なスポットではないので、人が少ない。
平日ならば、誰一人いないという状況も珍しくない。
それが倉持にはありがたかった。
人に囲まれるのは好きな方であるが、人に迷惑をかけることは悪いと思ってしまう。
そのため、定期的に一人きりの時間を作る。
そうすれば、ラッキースケベが起きる可能性は低いからだ。
だが、この時も、倉持は自身のラッキースケベ力を侮っていた。
というよりも、女性たちからの好意が倉持の想定を超えていたといった方が良いだろう。
街では、桜と宇美が買い物をしている。
喫茶店が修理工事のため、お休みなのだ。
二人は来る夏に備えて、水着を見に来ていたのだ。
桜「ねぇ、これはどうかな?」
セパレートタイプの水着である。
ピンクを基調にフリルで装飾されている。
宇美「確実にポロリすると思います。 あと、下が空いているので、そこから手が入ると思いますよ」
桜「やっぱそうかぁ… 可愛いと思うんだけどなぁ」
宇美「まあ、水着の時点で布一枚、倉持さんの前では全裸と一緒ですよ」
桜「だよねぇ。 この上下ついたのはどうかな?」
宇美「スク水タイプは、めっちゃ危険ですよ。 上からのずり落ちやポケットからの侵入、最悪全身はちきれる恐れもあります」
桜「だよね。 そうすると、やっぱりセパレートタイプの方がいいのか…」
宇美(まあ、全部倉持さんと行く前提での話ですけど… でも、桜さん誘う気満々だし… 地味に積極的なのに… 報われないなぁこの人… あ!)
宇美「せっかくですから、倉持さんに聞いて見てはいかがですか?」
桜「ええっ! 倉持さんに… うーん… そうだね。 聞いてみようかな」
近年水着の試着は不可であるが、この後の展開のため、リアリティよりもエロをとることをご容赦いただきたい。
桜は最初に選んだ、セパレートタイプの水着を試着する。
慣れない手つきで、手を高く上げ、全身が入るように自撮りする。
桜(て、手がつる。 こ、これでいいかな)
桜(撮れた。 早速送ってみよう!)
倉持サイド
倉持(ん? 桜さんから? なんだろ? 水着の感想… うーん。 私そういうの疎いからなぁ…桜さんなら、どれでも可愛いとは思うけど… ん? ん?)
倉持に送られた写真。
自撮りの時に水着がずれてしまったのか、桜の片方の乳房の頂点が映りこんでしまっていた。
倉持(生だとなるべく顔をそむけるようにしてるけど… 画像…じっくり見てしまった… しかも、ここには人がいない… うわああああ… どうする? 指摘すべきか?)
倉持が苦悩していると、さらに連絡が入る。
桜 メール「どうかな? ちょっと、過激かな?」
マイクロビキニである。
しかし、ぽろりはしていない。
倉持(さっきの方が過激でしたああああ。 いや、これもエッチですけど… ああ、連絡しないと…既読スルーはご法度…えーっと…)
倉持 メール「どちらも可愛いですよ。 しいて言うなら、もう少し控えめが良いかもしれません。 ずれると大変ですから」
倉持(これで、気付いてもらえるか?)
写真が送られる。
桜「これなら、控えめかな?」
全身タイプの水着である。
倉持「これは… 身体のラインが… けど、露出していない分… これが一番安全…」
倉持の手が止まる。
倉持「……」
倉持 メール「少々お待ちください」
倉持は桜にそう返すと、ネットで水着を探す。
倉持(違うだろ倉持。 桜さんは水着を真剣に選んでいるんだ。 私も真剣に探すのを手伝わないと…桜さんに似合う水着…桜さんに似合う…)
倉持(!! このクロシェタイプの水着…綺麗な紋様だ…きっと…似合うだろうなぁ)
倉持は画像のURLを添付した。
桜 宇美サイド
桜「…あ、カワイイ…」
宇美「決まりました?」
桜「うん… 倉持さんが調べてくれたの、これにしてみる」
宇美「へー いいじゃないですか」
桜は倉持の添付写真と同じようなものを選び、試着後倉持に送った。
倉持(そうそう、こんな感じ… うん、やっぱり似合いますね)
倉持 メール「とても似合いますよ。 可愛いと思います」
桜「これにする!」
宇美「はは、良かったですね」
宇美❘(さて、私はどれにしようかな…私もついでに聞けたらよかったなぁ)
桜「宇美ちゃん。 一緒に来てるって言ったら、倉持さんが宇美ちゃんに似合いそうなものも送ってくれたよ」
宇美「え? ホントですか」
桜「うん。 ほら」
宇美(…セパレート… パーカーとのセット… 下も短パンタイプかぁ… 似合いそう… )
宇美はチョイスの的確さを賞賛しながらも、自分の、桜たちと比べると決して豊かとはいえないバストやヒップを呪った。
倉持サイドへもどる
倉持(二人とも、いい水着があったようでよかった。 さて、もう少しで開けたとこに出るぞ、そこでお弁当を広げよう)
職場サイド
白銀と赤井が倉持のデスク前に来ている。
白銀「倉持さん。 あれ?」
赤井「倉持さん…ん」
白銀「赤井さん… 先日はどうも」
赤井「こちらこそ… お騒がせしましたぁ」
そこに、トコトコと青野がやってくる。
青野「どうしたんですか? 倉持さんなら、しばらくお休みですよ」
白銀「え。 休み? なんで?」
赤井「聞いてないわよ」
青野「まあ、急でしたしね。 ここ最近、倉持さんずっと働きづめだったんで、早めの夏休みを取ったんです。 山に行くって言ってたので、今頃山頂でお弁当を広げているころでしょうね。 ん? お二人とも、お弁当持って… これからお昼ですかぁ?」
白銀(誤算… こないだので、距離が縮まったと思ったから…お昼に誘いたかったのに…)
赤井(マジかよ。 昨日そんなこと言ってなかったのに… 倉持めぇ)
青野「そうだ。 良かったらみんなでお昼にしません。 ねぇ緑谷さん」
緑谷「は、はい。 え? お昼ですか? ご一緒していいんですか?」
白銀「…」
白銀(まあ、いいか… 彼女達とも、話してみたいことがあるし)
白銀「そうですね。 せっかくだから、屋上に行きましょうか、鍵を借りてきましょう」
倉持サイド
山頂でお弁当を広げる倉持。
この後どうなるか、知る由もなかった。
頬がほころぶ。
一人になるため山に登ってはいるものの、連絡が来ると嬉しいものである。
倉持は先ほどのたわいのないやり取りをうれしく思っていた。
人とのつながりがあることに幸せを感じていたのだ。
しばらくして、山頂に着いた倉持は食事を始める。
倉持「いただきます」
シェアハウスで握ったおにぎりと前日にスーパーで半額で購入したおかずである。
それでも自然の中で食べると、また格別であった。
おにぎりを三口ぐらい食べたところである。
携帯電話にアプリからの通知が来た。
倉持はおにぎりを口に含みながら通知を確認すると、白銀達からの写真が送られてきていた。
白銀が映しており、赤井、青野、緑谷が食事を広げている。
まるで女子高生がピクニックにでも来ているかのような、そんな表情である。
思わず笑みがこぼれる。
倉持(白銀さんと赤井さんは、手作りのお弁当か、青野さんはお弁当箱二個… よく食べるなぁ。白銀さんと赤井さんと入れ物が似てるなぁ。 緑谷さんはパンか。 それだけで足りるんだぁ」
等としみじみしていると、通知が届く。
倉持「おおう」
次の画像では、赤井のスカートがめくれ下着があらわになり、青野の胸のボタンがはじけて胸部が出ていた。
倉持「ちょっと… した」
立て続けに通知が届く。
※倉持サイドと会社サイドが混在します。
倉持メール 「めくれてますよ」
※会社
白銀「やばい、送ってしまった」
赤井「え、ほんとですか! やば」
青野「キャンセルしてくださいー」
白銀「分かった… えーっと、あ…」
白銀は誤って青野の胸元のドアップ写真を撮った上に送信してしまった。
青野「キャー、ちょっと待ってくださいよ」
赤井「まあ、今更感はあるけどね」
青野「写真と生は違うんですー」
白銀「ほ、ほら消したぞ」
白銀「あ…」
※倉持
倉持「で…でかい…」
先日の女体盛りが想起される。
倉持「いかんいかん…忘れろー」
倉持「ダメだ目を閉じるとアワビの食感が…」
※会社
白銀「やばいもの送っちゃった」
白銀「プロポーション維持のための自撮り写真があああ」
※倉持
通知が届く。
倉持「今度は何だ… え!?」
倉持の手元には白銀が鏡の前で全裸でポーズを
とっている写真が送られていた。
倉持「あわあわ…ま…丸見えじゃないか…」
※会社
しかし、白銀はこのミスを利用する。
白銀メール「クラさん…おかずにしてくれ」
赤井「白銀さん。 何やってるんですか」
白銀「不可抗力だ… まあ、仕方ないさ」
白銀(ムダ毛処理してるやつで良かったー)
※倉持
倉持メール「そんなわけには…」
綺麗な全裸である。
倉持は消すのを躊躇した…
それほど、魅力的な画像で会った。
しかし、知り合いをおかずにするのは、
倉持の美学に反する行為である。
故に、倉持は血の涙を流しながら、
消去に手を伸ばす。
※会社
緑谷(白銀さん…なんて大胆なことを…)
緑谷(私も何か送れるものは…)
緑谷(…これは…こないだノリで撮ったあの下着の写真…さすがに…)
青野「緑谷さん。 何見てるんですかー」
慌てた拍子に緑谷は件の写真を送信してしまう。
緑谷「きゃあああああ」
青野「そんなに慌ててどうしたんですかー」
緑谷メール「消して…消してくださいイイ」
※倉持
倉持「あれ? 緑谷さんから…」
姿見を使った自撮り写真である。
あの下着のため、当然大事な部分は隠れていない。
それどころかかえって強調されている。
倉持「ああああ」
苦悩する倉持。
倉持も男の子である。
このような写真が送られてきて反応しない訳がない。
※桜と宇美サイド
桜と宇美は買い物を終えて、食後のデザートを楽しんでいた。
桜「このパフェ美味しいねー」
宇美「ですね。 あ、写真送ってあげましょうか、倉持さん甘いもの好きでしたよね。うまくいけ
ば、誘う口実にもなりますよ」
桜「もう、宇美ちゃん… からかわないで…でも写真は撮らせてね…私結構食べちゃったから」
宇美「いいですよー。 どうぞ」
上からのアングルで宇美とパフェをとる桜。
※倉持
倉持「あれ? 今度は桜さんから…」
倉持「おいしそうなパフェ…チェリーとか、フルーツも新鮮そ…ん?」
パフェのすぐそばに宇美のチェリーが覗いていた。
倉持「宇美さあああん…桜さん…写真送る前にチェックしてくださーい」
※桜宇美
桜「あ!」
宇美「どうしたんですか?」
桜は恐る恐る宇美に画像を見せる。
桜「ごめん… 宇美ちゃん…」
宇美「ぎゃあああああ」
赤面する宇美である。
桜メール「倉持さん。さっきの消してください。 いけないものが映りこんで…」
桜(はっ… もしかしたら、宇美ちゃんのチェリーには気が付いていないかも…
それなら、かえっておっぱいのこと言わない方がいいかも)
桜メール「倉持さん。 さっきの写真呪われてるの。 だからすぐに消して」
※倉持
倉持「呪いだって…あ!」
写真の人の顔のようなものが映っている。
それは桜の肩に乗っている。
倉持「本当だ、お祓いしないと」
倉持には解呪の心得があった。
この程度の簡易な霊障なら写真越しでも
簡単に祓うことができる。
倉持(んんんん… よし、消えた。 これで大丈夫)
倉持メール「お祓いしたから大丈夫ですよ」
※桜宇美
桜「え…あれ? 肩が軽くなったような…」
そうこうしているうちに会社メンバーからの通知が異常なことになっていた。 ※会社
白銀「きゃあああ、止まらない。なんかいっぱい送ってる」
赤井「青野さん。 連射機能と送信機能がバグってるって」
青野「すみません! エッチなのいっぱい撮っちゃってますううう」
緑谷「誤爆が止まらない」
※倉持
倉持の手元には、
白銀がその肢体を惜しむことなく見せつける写真。
赤井のローアングル写真。
青野の胸の接写。
緑谷のエロ自撮りが届く。
白銀の白い綺麗な肌、その双丘の頂点には綺麗なピンク色の乳頭。
陰毛はストレートに整っている。
伸びる足は細く引き締まっており、抜群のプロポーションである。
赤井のヒモ下着は下から見ると、ほぼ大事なところを守れていない。
ヒモと平行に日本のセンがすっと通っている。
青野の胸は言わずもがな。
ちょうど胸の合間がそこに突っ込んでくれと言わんばかりにクパッと空いている。
緑谷の自撮りは、芸術的というよりも、大衆的な写真集のようなエッチさがあった。
みだらな下着をつけていやらしい気持ちになった緑谷は、姿見の前で足を開いたり、胸を強調してみたり、挑発的なポーズをしていた。
倉持メール「みんな待ってください。 ひとまず、メールを閉じましょう」
倉持メール「サーバの情報も消しますので、しばしお待ちください」
倉持は冷静に指示をする。
全員に送信したファイルを消去させ、自分もエッチな画像は消し去った。
さらに、とある筋に連絡し、サーバに保存されているデータも消去することに成功した。
倉持メール「みなさん… 気持ちは嬉しいのですが… 気を付けてくださいね」
全員から「はい」と通知が届く。
倉持はやっと落ち着いて、おにぎりの4口目をほおばった。
倉持はネットバンキングを使い。
桜に300円、宇美に300円、白銀に1,000円、赤井に1,000円、青野に100円、緑谷に2,000円振り込んだ。
帰宅後、倉持は携帯電話からPCへ画像データを移していた。
倉持❘(…これぐらいは…いいよな)
水着の桜の写真。
笑顔で食事を広げている白銀たちの写真。
PCの思い出フォルダに移す。
思い出フォルダの一番下。
髪の長い女性と学生服の倉持の写真がある。
満開の桜の木の下で、笑顔で並ぶ二人。
倉持の逃れられない過去が、そこには眠っていた。
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