第11話 倉持とゆめ

「お前明日から休みな」




昼食から戻るや否や、倉持は部長室に呼び出され、金剛にそう告げられた。




倉持「え? お休みですか?」


金剛「ああ、休め。 というか休んでくれ」


倉持「いえいえ、そんな…休めませんよ」


金剛「労働基準法… 有給休暇5日… 罰金…」


倉持「あ…」


金剛「というのもあるが、最近お前は働き過ぎだ。 私が仕事を振りすぎたのがいけなかったんだが…」


金剛「新人研修のマニュアルも完成。 緑谷と筑紫の件も解決。 正直しばらく休んでも、誰も文句は言わんよ」


倉持「ですが…」


金剛「週末実家に帰るんだろ? 土日なんて休まらんだろ… 7日ほど有給休暇取って、来週末までゆっくり休め」


倉持「実家の話… ご存じで」


金剛「ああ、千夏から、速攻で連絡回ったぞ。 というか、実家周辺の人間は皆知ってるだろ」


倉持「はは、なんか警報みたいですね」


金剛(その通りなんだがな… ただ、悪い意味じゃなくて、いい意味でだけどな… まあ言わんけど)


金剛「それにだ… 下心もある。 お盆はみんな休むだろ? そこで出勤してほしいってのもある」


倉持「あー」


金剛「だから、気兼ねなく休んでくれ。 というか、頼むから休んでくれ」


倉持「…分かりました。 お言葉に甘えて、お休みをいただきます。留守中に困らないように伝達事項まとめておきますね」




金剛「ああ、頼んだ」




倉持は会釈して立ち去ろうとする。




金剛「ああ… それと…霞が会いたがってたって…」




倉持の表情が曇る。




倉持「霞が…? 冗談でしょう」


金剛「私も…個人的には会わんほうがいいと思うがな」








倉持はその日、少し残り、連絡事項を済ませた。


この日は下着程度のラッキースケベだったため、シャアハウスに帰った時点でトータル1,000円であった。




倉持は部屋に戻ると、すぐにシャワーを浴びて、寝る支度を整えた。


すでに倉持は明日以降のプランを考えていた。


足の捻挫も完治し、体調は健康である。




しかし、精神的にひどくまいっていた。


桜や赤井の吐息がまだ耳に残っている。


白銀の熱い秘部の感触が、青野の恥部の映像が、眼を閉じると自身の身体を支配する。




ラッキースケベにはいくつか法則がある。


その一つに親密度とスケベ現象との比例法則がある。


仲が良いほど、よりエロいことが起きるのだ。




倉持は職場の人間との仲が急速に動いていることに、恐怖を感じていた。


ここ最近まで自分に近づいてくれる女性は入社以前の知り合いである金剛と黒田、同期入社の赤井ぐらいであった。


白銀とも、あの時の出会いがなければ、ここまで接近することはなかっただろう。




そこに今年、新人の青野や緑谷、筑紫が加わり、一気に周りの女性が増えた。


さらに、シェアハウスにおいても、最近、宇美や由紀からの誘いが増えている。




内心…倉持はうれしく思っていた。


しかし、これ以上距離が近づけば…自分を制御することができなくなってしまう恐怖があった。


いっそ付き合うか…という発想は倉持にはない。




倉持の思考はぐちゃぐちゃになっていた。


倉持は、思考を止めて、無理やり眠ることにした。










夢は深層心理を表す装置として優秀である。


しばしば夢の中にこそ自我の本質が現れる。


倉持は普段語らない。


倉持はその奥底に貯め込む傾向にあった。




故に、彼の夢は単なる夢ではなく、彼の、彼自身も自覚していない部分の集積と言える。


と、いうことで夢の話。




内耳に直接桜の舌がはい回る音が響く。


ちゅく、ちゅむ…


反対側からは赤井の甘い声が聞こえる。




赤井「倉持ィ… ねえ… 欲しいのぉ… もう、わたしの… 我慢できない…」




夢の中の赤井は、右手で自分の大事な部分をこすりながら、倉持の左耳を犯していく。




桜「倉持さぁん。 ねぇ、好きって言って… おねがい」




しかし、倉持は言えない。


口は青野の豊満な乳房を含んでいるためである。




青野「徹ちゃーん。 おっぱいでちゅよー。 そんなに吸ってぇ、お腹減ってるんでちゅねー」


青野「あぁん。 そんな強く吸われるとぉ… 感じちゃいますぅ… あ…あぁん」


青野「もぉう」




背中からは緑谷と筑紫、桃井に宇美が樹液を取り合うかの如くちゅくちゅくちゅっちゅと倉持の傷一つないすべすべの背中やピンク色の乳首付近を舐める。


この時倉持の体は、顔を下に、床から約1メートルの高さに、大の字で吊るされているのである。


限界まで隆起した股間は由紀に握られてた状態で上下にしごかれている。


情けなくむき出しになった、倉持の最もデリケートな部分には白銀の唇や舌が当たる。


先の頭さきのとうに柔らかい感触が何度も何度も触れる。




足は店長と紅葉によって、弄ばれる。


店長「足先まで、敏感だな。 とんだスケベだ」


紅葉「ふふ、倉持くん… 全身が性感帯ね」




倉持「く…あ、ああ… うぐ… う…は… はぁ…ああ… ぐ…ううう…う…う」




倉持の全身がくまなく官能の刺激に犯される。








「楽しそうね」




どこからともなく声がする。


瞬間倉持はひとり闇の中静寂に包まれる。




倉持「… 霞」


霞「幸せそうで、良かったわ」


倉持「霞… ちがっ… これは」


霞「何が違うのかしら… 気にしなくていいのよ… 昔は昔…今は今だから」


倉持「霞…」


霞「…」




霞の姿が露に消え


倉持一人取り残される。




倉持「霞っ… 待ってくれ、霞っ」




ハッと目が覚めると、ぶち抜かれた天井の穴。


倉持は上体を起こす。




倉持「…霞… そうだよな… 許されるわけ… ないよな…」




時刻は朝の4時である。


倉持はインターネットバンキングを使い、夢の出演者全員に2,000円ずつ振り込む。


その後、倉持は一度身に着けているものすべてを外す、背中には無数の傷。


その傷一つ一つを指でなぞると、新品の下着で下半身を包み、パンツとシャツ、ジャケットを身に着けていく。


最後にリュックを背負いシェアハウスを出る。

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