第1話前世
日本は古来より男尊女卑が激しい国だった。
特に明治時代までは女性の立場は低く、多くの人は表舞台に立つ事はなかった。
ただ、平安時代から高貴なる身分で業績を残した人は数名いたが、女性のほとんどは思う様に生きれないのがほとんどだった。
女性が表舞台に立つようになったのは明治時代。
明治初期でも女性が外に出て働き事業することをはしたないと言う声も多く、次代が大正から昭和に変わっても未だに男尊女卑は強い。
特に亭主関白気取りの夫が多い中、妻を家政婦代わりにしか見ていない。
仕事をする女性からすれば。
「専業主婦って楽よね?ぐーたらできるし」
「食べさせてもらって家から出なくても生活の心配はないものね」
等と嫌味を入れるも、彼女達は知りもしない。
専業主婦は逃げ場がないの事を。
そして仕事をしてない事から夫から虐げられている事を。
「おい、何だこの食事は!夫にこんな食事を食わせる気か!」
「でも…」
「口答えですな。誰のおかげで食べて行けると思っている。誰のおかげで生きていけると思っているんだ!この寄生虫が」
人としての尊厳もありもしない。
私が口答えをすることも許されず、耐え忍ぶ日々。
そして子供がある程度成長したら今度は。
「母さんが介護状態になったが、お前が介護すればいいだろ?」
「は?」
「妻なんだからそれぐらいしろよ!介護ぐらい家事と変わらないだろ」
定年退職した夫の傍若無人ぶりは悪化。
母親が介護状態になり、施設に入れるのはお金がかかるから私にやらせればお金はかからないという事だった。
「散々世話になったんだし、親孝行できるんだからな」
世話になったのはあくまで夫であり私ではない。
実家では私は家政婦扱いで親族が集まったら私は馬車馬の如く走らされ、存在はなかった。
文句も言えず私はストレスがたまり病気になってしまった。
そして――。
「残念ですが白血病です」
「え…」
無理がたたり、我慢ばかりしていた私は病気が見つかった。
だけど。
「こんな時に病気になりがって!なんて迷惑なんだ…この役立たずが!お前なんて離婚だ」
いざ、私が動けなくなったらあっさり捨てられてしまった。
行く当てもない私だったけど、無一文ではなかった。
家計をやりくりしたへそくりと保険を解約し、結婚指輪や婚約指輪を売ってお金にした後に、趣味でしていたハンドメイドをして生計を立てた。
病気になった私だったけど、まだ死ねなかった。
それは――。
「母さん、俺は母さんの味方だからね」
「お母さんは私達が守るから」
可愛い息子と娘がいる。
長男が高校生で長女が中学生だった。
二人共、優しい子に育ち。
今回の病気の事を知って真っ先に私の味方になってくれた。
「母さん、俺の晴れ姿を見たいって」
「お母さん私のウェディングドレスを作るのが夢って言ったわよね。じゃあそれまで死んじゃダメ」
私はこの二人の為にも死ぬわけには行かない。
どんなことをしてでも生き延びなくてはならない。
だけど、私の願いとは裏腹に病状は悪化してしまう。
「お母さん!しっかりして…」
「母さん!」
余命宣告から三か月後、闘病生活を繰り返すも病状が悪化した。
もう意識も保てず、かろうじて子供達の声は聞こえるけど。
話す事もままならなかった。
私はそのまま意識を手放したのだった。
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