第8話 運命的な再開

 俺はそんな少し冷めた感じで、大当たりを消化していたのだが、


「すいません、ちょっと宜しいですか?」


 と背後から誰かが突然声をかけてきた。


 俺は椅子に座って遊技中だったので、ハンドルを持つ手は離さずに顔だけを後ろに傾けた。すると俺と同世代ぐらいで、スーツを着た黒髪の女性がいた。正直、見覚えのない人だった。


「はい、どうしました?」


 俺は内面では困惑しながらも、外面ではついニヤケてしまった。何故なら、眼前の女性はマスク姿で、顔は目元しか分からないが、キリッとした二重瞼ふたえまぶただったのだ。それだけで、彼女は俺好みの美人さんだと分かったからだ。


「あの……昔、このお店で会いませんでしたか?」


「昔、貴方と? それって何時の話ですか?三年前までなら、このお店によく通っていたけど……」


「そう、その頃! お兄さん、私が大当たりしているのを店の外まで追いかけてきて、教えてくれましたよね⁉」


「ああ、あったなあ、そんなこと。じゃあ、貴方はあの時の金髪の子?」


「はい、当時、髪を金髪にしていました」

久しぶりに訪れたお店で予期せぬ再開。人間、何がきっかけで縁を結ぶかわからないものだ。


 その後、元金髪の子から、


「当時のお礼をしたい」


 と素敵な笑顔で言われたので、俺はニコッと微笑み返し、


「喜んで」

 と、快諾した。


 俺は大当たりを消化し終えると、元金髪の子と一緒にパチンコ店を出た。そして、濃密なSTを過ごすためのムフフな場所へと足早に移動した。


 ――そう、今、俺達はファミレスにいるのだ。


 今、テーブルを挟んで、俺と元金髪の子は向かい合って座っている。


 まさか、久し振りに訪れたパチンコ店でこんな運命的な出会いが待っているとは。マジでビバ、パチンコの神様だ。


  俺と元金髪の子……間宮理沙まみやりさ。ファミレスに来る途中で名前を聞いておいた。俺達二人は奇跡的にこの日に来店を選択し、導かれるように運命的な再開を果たしたのだ。

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