第1章 第10話


 ◇ ◇ ◇


「いやぁ! やっぱりどこの世界も、異世界に飢えてるんだねぇ!」

「まぁ、SFは根強いジャンルだし」

「ふふふ、現代社会がファンタジー社会ではお伽噺の世界か。面白いな」

 俺達はお披露目会の後、家に帰って豪勢な食事を楽しんでいた。

 というのもアカネさんが作ったヘリコプターが、臨時収入になったのである。

「それにしても、ヘリコプターがあんなに高く売れるとはなぁ」

「SF小説とか映画で出て来る様な魔道具で、科学技術が本当に入ってるんだから好きな人にはたまらないんじゃない?」

「まっ、ボクの発明が欲しいっていう気持ちは凡人としては当然かな?」

 そう。例の盗み見おじさんは重度のSFオタクで、アカネさんがガレージで怪しい開発をしている事を知り、気になっていたそうだ。

 その上で現われたヘリコプターが、彼の好きなSF映画の機械にそっくりだった事もあり、目を輝かせて売ってくれと頼まれた。

 頼まれたアカネさんと俺もヘリコプターには拘りは無かったので、中年おじさんから提示された金額で売った……というのが事の顛末である。

「にしてもこのシチューの肉。肉屋で買ったけど美味いなぁ。猪肉かい?」

「いや封(ほう)の肉だけど?」

「ホウ……? こっちの世界の生き物か」

 彼女が喜んでいる封の肉は、産地ではぬっぺふほふと言う幻獣の肉だ。

 ぬっぺふほふの肉は遠い土地の食材の上、珍しい上に高価だが柔らかくて美味い。

 脂っこくないスジ肉。食感が普通の肉のホルモンと言うべきか。

 なので煮込み料理にしてみた。

 野菜をゴロゴロ入れてたっぷり甘みを出した、クリームシチューである。

 味が濃厚で、色んな野菜の甘みが混ざったスープは食べ応えばっちりだった。

「さて大家君。改めてお礼をしよう……と思ったんだが、家賃はもう少し待ってくれないかな?」

「俺は君と居るのが楽しいから、別に良いんだけど……」

「ふふふ、言うじゃないか。だが何もしないのもボクの気がすまないんだ」

 中年おじさんから貰った金額は、中々な金額である。

 ……アカネさんのお小遣いや服に使うのかと思ったが、違うらしい。

「でも変な事とか、お金の無駄遣いはしないようにね?」

「無駄遣いはしないさ。無駄遣いはね……」

 その言葉に、俺は嫌な予感を覚える。

 だがアカネさんが稼いだ金を自分で使う分には、口を出すのも悪いと思った。

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