第七話 「キミまで届いて」
夜の雨は続いている。
雷雲は通り過ぎたのか、遠くに落ちる雷の音が聞こえるのみだった。
ドサリと座っていた落谷が倒れた。頭部を失った彼の肉体を支えるものは何もなかった。
その傍らに立っていた第三の魔法少女も、同じく倒れるように膝をついた。大鎌による切断の後、彼女の呼吸は荒くなった。肉体の負荷ではなく心の負荷が、彼女の呼吸を苦しめていた。
「やった…やった…」
彼女は自分がやってしまった事を確認するかのようにつぶやいた。
吐息は雨にずぶ濡れ泥まみれで座り込み、放心していた。落谷の体にも彼の頭にも目の焦点を合わせることができず、目線を左右にフラフラと彷徨わせていた。
堤防の上から降りてきたエリが惨状を確認し、体が震える。彼女は鎌を持つ少女を見つけ。
「何をしたぁー!」
と叫び、エリの持つ棍棒が凶悪な形に変形を始めた。
片膝を付いていた少女がエリの怒りに反応して大鎌を構える。一戦することも構わずといった様子だ。しかし
「彼女の行ったことは我々の最大の目的であった。それを理由に私闘することは許可できない」
吐息、エリ、第三の魔法少女。その三人のトーテムが現れ完全に同時に、まったく同じ内容で喋った。
これは、この三体のトーテムがまったく同じ判断基準と同じルールを有しているという事の証明だった。
「やらないよ…悪いのは私なんだから」
エリも魔法少女も動かなかったが、吐息だけがそう言うと、ゆっくりと起き上がり、落谷の方に歩いていった。
胴体を超えて彼の頭部まで歩き、両手で頭を拾い上げた。顔についた泥を拭い、雨と泥に汚れた彼の頭を胸に抱いて。
「私が殺さなければいけなかった!
私が殺してあげたかった!」
吐息は悲しい叫び声を上げた。
何もない、全てのビルを更地にしたような土地がはるか先まで続いていた。夕日は遠くから輝き、その不揃いな地面を赤く照らしている。
俺の前にあるのは一軒のファミレス、の廃墟。ポールの上についている看板に目をやると
「アメリカンダイナー・アビース」
という店名が見えた。看板も劣化が始まっていてポップな書体がさらに侘しさを感じさせる。
俺は、ここがどこだかわからなかった。
とりあえずこのファミレスだかダイナーに入ろう。なぜなら周囲を見渡しても、地平線の先まで建物が一つもないのだから。
ゴランガラン
ドアチャイムがひどい音を立てたが、店内もそれに負けないくらいひどい有様だ。廃墟化して何年たつのか。開店していた時は映画で見たような明るいアメリカンダイナーであったろう店内が、破れ、錆び、崩れ、ひどい有様である。
俺は客席に向かったが、そこもソファが破れてゴミが溜まっている。日に焼け傷だらけのテーブルの上にメニューが乗っていた。コースメニューが上から半分までマジックで消しが入っている。メニューの文字はどれも読めない文字だった。
調理場の方を見ると、巨大な魔物の頭蓋骨が打ち捨てられホコリが被っている。鍋も皿も床に散らばっていた。
窓から夕日が差し込んできた。あまりにも眩しい。カーテンもなにもないため。店内はどんどんと赤く染まっていく。
目を細めながら夕日を見ると。ずいぶんと近くに来ていた。五百メートル向こうといった感じだ。光を放っているにもかかわらず、夕日のディティールが観察できた。
夕日の円の内側に揺らめいて動くいくつもの影がある。うごめく影が全周に存在している。
「あれはアビスマル。数はまだ二十二万といったところだ」
俺の背後に立っている人物が親切にも説明してくれた。
「ずいぶん、夕日が近づいてきているな」
俺がそういうと、また親切に教えてくれた。
「ああ、どんどん近づいてきているよ、君に。君はもうすぐ君の世界に届ける。そして門が君の世界にアビスマルをバラ撒くようになる。そういう契約だ」
「契約?」
「やっぱり覚えていないか…でも契約は契約だ。未完成であってもね」
「そうか、でも覚えてないんだ」
「いいさ、契約書はもうあるんだから。ところでそろそろ帰った方がいい。時間がない」
「帰れないんだ、首が切れたからね」
「帰るための時間はまだ少し時間はあるよ。僕たちはかなり昔から契約者を見つけては、彼らの願望を叶えることを条件に門の設置を依頼してきたんだ。君の十何世代か前の契約者の願望が「修復する力」だったんだ。コレが便利だったから、その後の契約者への事前サービスに組み込まれたんだ。契約させるにはお客を魅了するお得感が重要だからね」
「ああ、便利だよ、コレ。みんなを助けられた」
「使い方は契約者に任せているから何に使おうが文句は言わないよ。ただ、君は君自身も治せるんだ…」
そう言われてようやく分かった。
「…なるほどなぁ、じゃあ帰るわ」
「それでは契約の件…」
「それ、本当に覚えてないんだ、ゴメン」
背後に立っていた美少年は、ヤレヤレという感じで肩をすくめた。彼の顔を見ると、高速で移動つづけているため、顔は全くわからなかったが、かっこいい顔だった。
俺は、帰ることにした。
「フンギャアアア!」
エリが悲鳴を上げた。
吐息が落谷の遺体の首と胴をつなげた形で横たわらせてから、一分が経過した辺りだ。
「首が!傷が!くっつき始めている!」
落谷の胴と頭の切断面がお互いを結びつけようとほぐれて絡み合う。ある程度組み合わさったところで、ズズっと首が少し引き寄せられ接続された。
吐息としても気持ちのいい光景とは言えなかったが、固唾を飲んでそばで見守っていた。
落度の体がドクンと一度跳ねた後、体に血脈が戻っていく。冷たくなっていた手足に赤みが戻る。
脳に生命が戻り、体に神経が戻る。やがてその姿は冷めた死体から、冷めた死にそうな病人にまで回復した。
「ゴハ!ゲフ!ゲフ!」
呼吸器官に入っていた異物を吐き出す。再生が完了したのだ。
「落谷さん!」
吐息が寝たままの落谷の肩を持って呼びかける。肩を揺らすようなことはしない。首がまた取れたら、という恐怖感がある。
「あ・・・あぁ・・・吐息?」
「落谷さん!落谷さん!」
ようやく目覚めた落谷は吐息の姿を確認した。
「そんな…」
大鎌を持った第三の魔法少女がその光景を見て後ずさる。大鎌を持った手が震えている。
「ここまでだ、状況を見る必要がある、一度引きたまえ」
第三の魔法少女の肩に止まる彼女のトーテムが主に告げた。
「あ・・・、キミ・・・」
落谷がその繋がったばかりの首を曲げて彼女を見る。その行為は彼女にも吐息にも恐怖を与えた。
彼女はそのまま後ろに振り返り、空に飛んで消えていった。
落谷は振る返る少女の目からこぼれた涙を一瞬みた。幻かと思った。
「生き返った~!気持ち悪い~!」
エリが喜びの声を上げたが、落谷は泥に転がされた重病人のような状態。雨は小雨の状態になったが、そこにいる三人ともにずぶ濡れ泥だらけだった。
落谷の血色の戻った肌は、再び寒さで青ざめはじめ、震えが体中に起こっていた。
「とにかく、早く家に帰りましょう」
吐息はそう言うと震える落谷を全身で抱きしめて飛び上がった。エリもそれに続き、落谷の自宅に向かって飛ぶ。
吐息は震える落谷を気遣い、ゆっくりと飛びながら、彼女の体温を分け与えるべく、彼の体を自分の腕と胸で強く優しく包み込んだ。
深夜、小雨の中、降り立った二人の魔法少女と落谷は、落谷宅の狭い玄関に倒れ込んだ。
泥まみれの二人の魔法少女はともかく、落谷は見た目にも衰弱し震え、弱りきっていた。
変身を解いた二人は変身前の姿に戻った。
「どうしよう、病院かな…」
弱気になっていたエリの隣で、吐息はいきなり服を脱ぎだし下着だけになった。
「お風呂に入れます。体は治っているはずです。まず温めます」
突然の行動と素早さにエリは目を丸くしていた。
玄関横にあるバスルームを確認した吐息は、下着姿のまま泥まみれの落谷を抱えて彼の服を脱がし始めた。エリはその泥まみれの服をどかして、タオルを探しに行った。
落谷を全裸にした吐息は、残っていた下着を脱ぎ去り、バスルームへ落谷を運び込んだ。今の彼は老人の様によろよろと立ち上がるのが精一杯で、その意識もはっきりしたものではなかった。
お互い全裸で向かい合って立っていた。まだよろつく落谷を抱えながら、吐息はシャワーヘッドを探して苦労してお湯を出した。彼を抱きかかえて背中からお湯をかけていく。やや熱めのお湯だが今の彼には丁度いいだろう。
落谷の部屋のバスルームは旧式なのでシャワーとお風呂のお湯貯めは同時にできない。吐息はもう一つ付いている蛇口から水を出し、お水を湯船に貯め始める。
「ソダリー、お湯に変えて」
彼女の髪の毛に住むトーテムの目が光り、溜まった水をすぐにお湯に変える。魔法生物の面目躍如だ。
背中にお湯を流しながら空いた手で丁寧になぞり、お湯の熱を体に染み込ませようとする。初めて触れる男の広くて硬い背中を、手に覚えこませるように何度もなぞる。その手は腰にいたり、男の尻の上部を撫でる。
落谷の体がぐらつき、押し倒しそうになる。
両腕を男の体に回していた吐息は、受け身が取れない。
落谷の腕が反射的に動き、壁にドンと手を突き、吐息を壁に挟み込むようにして止まった。その動きに安心したのか、吐息は動きを再開する。尻に至らなかった手は落谷の頭に伸び、その髪に指を這わせてシャワーを浴びせる。落谷の顔は彼女の肩に乗っているため、どんな表情をしているのかは見えなかった。
彼の肩に自分のアゴを乗せ、一つのシャワーのお湯を二人で浴びた。彼の髪をほどき泥を落とす。その泥を自分の顔にも浴びながら。
ようやく体温がもどり、全身の神経が復調し始めたのか、うめき声と共に、落谷が自立できるようになった。
彼を立たせたまま、その手足にお湯をかけ洗い始める吐息。腕も脇も洗う。躊躇なく彼の前に座り込み、太ももやふくらはぎも、お湯を当てて何度も手で擦り上げ、血脈を活性化させる。
献身的に動くその手は、なんの照れもなく彼の体の隅々をしごいていった。
俺の目の前にある壁、見覚えがある。
俺の部屋の風呂場の壁だ。
そりゃ見覚えもあるわけだ。
体の遠くの方からゴシゴシとした感触が伝わる。
記憶が朧気だ。たしかダイナーで…だいなー?なんだそりゃ。
たしか寝る前にエリちゃんが俺の上に乗って…えっとそこから…怪物、川があって、橋が見えて…鼻の中に焦げた匂いがして、光…雷?
やっと思い出してきた。俺は魔物になって、その体をさえつけようとしてたら、とんでもなく強い奴で、そして雷…鎌…あの子…泣いていた。
足を持ち上げられ、股間のそばをこすられている。丁寧に丁寧に。なんだこの感触?
尻も分けられ洗われている感触。
いや、記憶だ。思い出してきた。俺はたしか、自分の死んだ姿を見て、そして蘇った。
「死んで…蘇った?」
言葉が口に出た。
「落谷さん?」
自分の股間の位置から立ち上がった吐息の顔が目の前に現れた。
髪もお湯で濡れ、濡髪が肩に掛かっている。湯で赤くなった頬と涙で赤くなった目が、俺の目の前で輝いている。
「あ、吐息?ここ俺んちの風呂だよな?」
「そうですね」
吐息は照れながらも目線は俺の顔から外さない。
俺は自分が全裸であるのは分かっていた。 しかし彼女は。
目線を下に下げると。彼女のお湯に濡れたツヤツヤとした肌の上をこぼれ落ちる水滴の粒が見えた。その粒を目で追っていくと、急カーブをし、視界を塞ぐ吐息の二つの大きな胸があった。なにも付けておらず、その蒸気した肌の赤さと皮膚の下を走る静かな血管の青紫色が綺麗だった。
彼女の大きすぎる胸に邪魔されて、そこから下はカワイイお腹の一部と太ももしか見えなかった。彼女が下にも何も着てないのは明らかだった。
下から視線を戻すと、俺の視線を完全に確認していた吐息の顔があった。彼女は怒ってなかった、ただ俺が復活したことを喜んでいる顔だった。
「やあ」
俺は生き返った報告の挨拶をした。
「おかえりなさい」
吐息は受け入れてくれた。
「でもこの状態はまずくない、いろいろ見えちゃって」
風呂場の壁と吐息に挟まれた状態だ。俺の目線のやり場には全て吐息の裸体が入る。
「恥ずかしいから、こうしましょう」
吐息がそういうと、自分の体を俺の体に密着させた。胸に当たる二つの巨大な感触は、今まで経験したことがないものだった。
たしかに、こうすれば視界に入るのは濡れた髪の吐息の顔だけだ。体は密着していてまったく見えなくなる。その状態で吐息は俺の背中にシャワーの湯を当て続けた。俺は背中にあたる湯の温かさよりも、体の前面に広く接触する女の肉感に蕩けそうだった。
「たしかに見えないよ、だけど見えないけど大変なことになっちゃうよ?」
「お互い、何も言わなければいいんですよ」
吐息はそう言いながらさらに密着させ、お互いの熱をお互いに分け与えた。
生き返った俺の体を温かい祝福が包む。
二人の間に何者も存在しなかった。
「私も入るー!」
風呂場にエリちゃんが乱入してきた。あろうことか全裸だった。
「…エリちゃん、少し隠してくれないか?」
俺はとりあえずお願いしてみた。
「そんなことしてる人に言われたない」
たしかに、エリちゃんが乱入してきても俺と吐息は裸でくっついたままだった。
今まで精神が高揚しきっていた吐息が少し恥ずかしさを取り戻したようだ。
「じゃあ、お風呂入りますか、みんなで」
うちの風呂は三人が入れるほどの広くはない。
「せーまーいー!」
文句を言うのは最後に入ってきたエリちゃんだ。俺と吐息が体を重ねてなんとか入っている風呂場にエリちゃんが無理やり入ってきたのだ。彼女が胸まで入った時には、風呂のお湯は半分以上こぼれていた。
ぎゅうぎゅう詰めの風呂。お湯よりも人肌の暖かさだけを感じた。
「でもビックリしたよ、死んだし生き返るし。クマムシでももっと節操のある生き方してるよ」
エリちゃんがそう感想を述べる。お湯からはみ出ている彼女の胸を隠しているのは吐息の腕だ。本人には隠す意思が一切ない。吐息自身も湯に浮かんだ自分の胸を隠していない。
俺も当然もろ出しの状態だが女達の体が重なって見えない。
「修復の能力を自分にも使えたみたいだ」
俺がそう言うと吐息の顔は少し曇った。彼女たちの最終手段として俺の抹殺も含まれていたが、それが実現可能か怪しくなった。さらに俺自身もかなり人間離れしていることを示していた。
「でも良かった、ほんとに」
うつむいた吐息がそう言った。それが本心からの言葉だと分かっている。彼女がしてくれた献身がまだ体に残っているからだ。
小さな風呂桶に入った三人。
俺はすぐ側にある二人の顔を見た。その頭に腕を回して引き寄せて、三人でおでこを突き合わせた。
「ありがとう。君たちのおかげで助かった」
そう告げて離した。
二人共、言葉なくこちらを見つめてくれた。俺もそれを見つめ返した。
「あとは…あの子だな、」
「そう、あいつ!あの鎌の魔法少女。よくも殺したなー!」
エリちゃんが俺の体を突きながら怒りを表明するが俺は、
「あの子を、助けなくちゃな…」
俺の言葉に二人は意外といった顔をした。
「ところでこの風呂からは、いずれ出なくちゃいけないわけだが、誰から出るんだ?」
二人は当然といったように俺を指差した。
「それじゃあ上がるか」
俺は何も隠さずに湯から立ち上がって湯船をまたいだ。
少女たちはギャーギャー悲鳴を上げたが知ったことか。
俺の部屋に、布団がひかれている。その上に風呂上がりの三人、俺と吐息とエリがそれぞれ向かい合って座っている。明かりは薄暗く、これから起こることを予感してか、奇妙に濃い空気が流れている。
家主であり、ただ一人の男である俺が告げた。
「今日のところは、これでお開きにしよう」
口には出さなかったが、二人共に不満の色を顔に出していた。
「でも、生き返ったからって心配だよ」
エリがそういう気持ちもわかる。彼女らは俺が朝まで無事でいるのか、しっかりと確認したいのだ。もしかしたら朝にはまた俺が冷たい死体に戻っている可能性がないわけでもない。勝手に生き返ったのだ、勝手に死ぬ可能性だってまだある。
「大丈夫だ、自分で言っても怪しいが、俺の体は問題ない」
時計は深夜三時を回り四時近い。今日はもう帰ってそれぞれの家で休むよう、重ねていった。
「情を重ねすぎた」少女たちにこう言っても納得しないだろうから言わなかった。これ以上、彼女たちと情を重ねるのは危険だった。
とにかく、もう大丈夫だからと納得させて帰ってもらう。
玄関でもまだ不満そうだった吐息に声をかける。
「吐息」
そう言われた時、ハッとなり振り返る。彼女の瞳に浮かぶ輝きの色、耳と首筋の赤さは、俺にとって非常に危険な色であった。
「今日は、本当にありがとう」
心を込めていった。命を助けてくれた女性に。
返事もおぼろな彼女は別れを告げ、小走りに駆け出した。先を行くエリが私服のまま飛び立ち空に消えた後、吐息も私服姿で空に駆け上がった。浮かれたように舞い上がり、三階にある自分の部屋の窓を開けて、そこに足をかけて夜空を見上げる。
体の熱を冷まさなければ、部屋に入れないといった感じだった。
いつも通りの席に俺は座っている。
数十年ぶりらしい繁盛期に調理場は大忙しだ。作っても作っても追いつかない。手が足りない奴は手を増やして対応している。そのわりに店内に客は俺たち二人しかいない。
「また会ったね」
いつ聞いても美少年声のあいつが言った。
「またって、俺はずっとここにいるだろ」
ダイナーで、もう何日過ごしているのか。店員も追い出しに来ないのは、他に客がいないせいだろう。
「ああそうだった。今日はキミの色々な面が見れたよ」
「なに言ってんだお前?」
「いや、気にしないで。ところで契約書のことなんだけど…」
「前から言ってるだろ。契約書のことは…覚えてるって」
「そうじゃない、一箇所記入がないんだ。これが書かれてないと契約書は完成しない。すでに契約自体は成立してるが…ボクの気分が悪い」
「だからないって、『願い』なんて。俺の願いは唯一つ。それはもう、その契約自体で叶ってる」
「そうは言っても書面上に書いてもらいたいだけなんだ。バナナ一本でも良いんだ。なんでもいい、あるだろ? なにかキミにだって願いが」
「……ないよ……何年も探したけどない」
「じゃあキミの願いってのは、ほんとに一つだけなんだね」
「ああ、俺の願いはただ一つ、世界全ての破壊したい。ぶっ壊してやりたい…」
俺の願いはそれしかない。だってそうだろ?
この世界に、俺の幸せがないんだから。
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