第5話、王立学園の入学試験

成人の儀を終えて自宅に帰ると、孤児院の保母さんや孤児たちが迎えて呉れて年長の孤児が。


「ねえ、リュウトお兄さんどんな結果だったの?」


「剣士で火の魔法属性で能力が5だったよ」


「わぁー! 凄いなー! 僕もそんなになれると良いな」


最近は、僕も暇な時間に孤児たちと遊んであげるので、孤児たちは、リュウト兄さんと呼んで慕っていたのです。


その晩に、龍神教会の司祭長ザガントと豪商バリサンが訪ねて来て、成人の儀の結果を聞かれた。

天使教会の巫女に言われた通りに伝えて。


「でも、職業が僕の設定と違い。他の人を鑑定して見たのですが、その人の職業も違っていました。

もしかして、授けるのでは無く鑑定の結果を伝えているのではないでしょうか?」


僕の話を聞いた2人とも。


「やっぱり! リュウト様もそう思いますか?普通の鑑定士は薬草や回復薬などの鑑定は出来ますが、能力や魔法の属性などは見る事は出来ないはずです。天使教会の巫女と言う方には見えるのかも知れませんな」


僕は、2人に様と呼ばれるのが嫌なので。


「僕を様付け呼ぶのは止めてくれませんか」


司祭長のザガントが身を乗り出して。


「それは無理です。今は言えませんが、いずれ分かる時が来ます。私どもは、リュウト様に仕える身ですから、今は王立学園に入学して学園生活と青春を楽しんで下さい」


豪商バリサンが真剣な顔で。


「それよりも、リュウト様が龍人族と言う事は誰にも言わないで下さい。王立学園に入学したら、貴族の子供たちが多いので特に、貴族には絶対に知られないようお願いします。


学園長のハンライは、龍人族の子孫なのでリュウト様の事は知っております。何かあったら学園長を信用して相談してください」


「うん、分かったよ」


2人は僕の本当の素性を知っているみたいだ。今は教えてくれる気が無そうなので、自由にしようと思ったのです。


王立学園の入学試験の日が来て、お母さんが付いて行くと言ったが、成人に成っているのに母親に付いて来られるのは、恥ずかしいからと断り、1人で王立学園に行ったのです。


王立学園は、広くて建物も3階建ての大きく綺麗な建物で、まるで王宮みたいで驚いた。

学園の大きな門の入り口で係りの人に受験票を見せると、案内係りの人に同じ受験生と試験会場の講堂みたいな所に案内された。


試験の1時間前なのに、すでに、100人位が自分の受験票に書かれている番号の席にすわっていたのです。


僕も自分の番号の席に座り、辺りを見ると、着ている服が殆ど貴族の子供みたいで平民と思える子供は10人位だった。


受験が始まる時間には、500人の受験生が席に座って試験官が壇上から。


「今から学科の筆記試験を始める。制限時間は2時間で、1時間後に採点の結果を発表する。合格者は実技試験に臨んで貰う。何か質問のある者はいるか? ・・・いないようなので机の上に配られている用紙を表向きにしなさい。では、始めー!」


僕も試験問題を見ると、算数、国語、歴史の3科目で、国語と算数は前世の小学生の高学年生位の問題だ。

余りにも簡単過ぎて思わず、本当かと思い、見直したのだ。


20分位で答えを書き終わり、他の受験生を見ると必死で試験問題に取り組んでおり。

此の世界の学問は前世に比べてかなり低い水準だと思った。


試験が終わり、1時間後に試験の結果が掲示板に張り出されて見に行くと、成績の上位順に名前が書いてあり、僕は1位だった。


合格者は200人で、300人が不合格者になり、中には泣いている者もいたのです。

定員は100人なので実技で更に100人が不合格になるのだろう。


実技は1時間後なので僕は、日陰のベンチで休んでいると。


「隣に座っても良いですか?」


僕は、半分寝ていたので顔を上げて見ると、今まで見た事も無いサラサラのブロンドで青い瞳の綺麗な美少女が目の前に立っていた。


思わず見とれてしまい!


慌てて、ポケットからハンカチを出してベンチに敷いて。


「えっ? アッ! すみません、どうぞお座りください」


「クスクス、ハンカチを敷くなんて紳士ですね。私はナナファーナと申します。座学で1位のリュウトさんでしたね。私は1位を狙っていたのですが残念ながら2位でした」


「あっ、はい、1位に成ってしまいスミマセンでした。

僕はリュウトと言います。平民なので・・・・・・」


「知っておりますわ。此の王立学園の精神は平等ですよ、貴族の公爵、男爵、平民も学園内では平等なのよ。でも、悲しい事にやはり立て前で、実際は身分差が存在するわ」


「僕は、社会全体が身分差社会なので仕方ないと思います」


「そうね、でも、身分の低い貴族や平民にも優秀な人材はいるから、その人たちが活躍出来る社会が理想よね」


「僕も、そう思います。こんな話を王族や高位の貴族に聞かれたら大変なので、この話は止めましょう」


「ウッフフ、そうですわね。次は実技の試験ですが、今度は私が1位を頂くつもりよ。お互い頑張りましょうね」


彼女はそう言うと、待っていた侍女を連れて離れて行ったのです。


僕は、離れていく、ナナファーナの後ろ姿を見ながら。


「フゥー! 緊張した。世の中にはまるで人形みたい綺麗な美少女もいるもんだ。何処の貴族令嬢だろう・・・・・・」



実技試験が始まり、最初は魔法を20m離れた的に当てる魔法の試験で、座学が下位の受験生から始まり。

魔法を放つ詠唱をして、得意の水、火、風、土魔法などで、的に攻撃魔法を放つが、的まで届かない者もいた。

的に当たると拍手が起きる位のレベルの魔法が殆どだった。


座学が2位のナナファーナが、詠唱し、魔法で氷の槍を作り的に当たると、皆から拍手喝采を受けて、どや顔でリュウトを見ていたのだ。


僕は、火の魔法の属性と申告していたので、前世の火炎放射機を思い出して、詠唱せずに魔法を放つと、炎が噴き出て的を焼いて消し去り50m先まで炎が噴き出していたのです。


此の世界は生活魔法が殆どで、攻撃魔法を使えるのは魔法騎士などの少数なのだ。

見ていた受験生は拍手する処か、余りの魔法の凄さに、腰を抜かしたり、何が起きたのか理解できずに口をポカーンと開けていたのだった。


試験官の教師が我に返って。


「う、嘘だろう!! ・・・・あり得ない・・・・」


校舎の部屋で見ていた白髭の男性が。


「やってしまったか! 此れは騒がれて面倒な事になるな、わしが行かねば」


白髭の爺さんが試験場に現れて。


「静まれー-!! 騒ぐな・・・・・・」


試験官が老人を見て頭を下げ。


「学園長、申し訳ありません! 受験生たち静かにして整列しなさい」


騒ぎを起こした僕は、何で騒ぐのか分からずにいた。ナナファーナが、側に来て。


「リュウト君、あんな見た事も無い魔法を放ったら、大騒ぎになるのが分からなかったの」


「えっ? あの位の魔法は普通と違うの」


ナナファーナが頭を抱えて。


「あの魔法が普通の訳が無いでしょうに。魔法騎士団の団長クラスの魔法なのよ・・・・貴方は本当にもう! ・・・・・・」


ナナファーナに言われて、初めて自分は、もしかしてとんでもないことしたのかと、自覚したのです。


騒ぎが収まり試験官が怒鳴り声で。


「30分間の休憩にしてから次は剣の試験を行います」


白髭の学園長が僕に近づき。


「リュウト、わしに付いて来てくれんか」


僕が連れて行かれたのは、学園長室で、部屋に入るなり。


「わしは、ザガントから聞いておるだろうが、此の学園の学園長のハンライ・サバンルじゃ。バリサンから受験の時の魔法の使い方を聞いておらなかったのか」


「えっ? バリサンからは、魔法ついては何も聞いていませんが」


「バリサンの阿保が! ・・・・起きた事は仕方ない。リュウトよ、わしが許可を出すまでは、学園内で魔法を使う事は禁止じゃ! 所で剣は使えるのか」


「はい、自己流ですが練習はしました」


「そうか、それなら心配はいらないだろう、それでは試験場に戻って剣の試験を受けなさい。くれぐれも余り目立たんように」



試験場に戻ると、受験生たちから注目されてしまい、居心地が悪かった。

3人の試験官いて、剣の試験は試験官と木刀で戦って実力を見ると言い、試験が始まったのです。


受験生たちは、殆どが1~2分も持たずに試験官に倒されていたのです。


最後の方の受験者とナナファーナは5分位は戦ったが倒されて、今度も僕は、最後に注目を浴びて試験官と戦ったのだが、10分間くらい戦って試験官に木刀を飛ばされて降参したのだ。


試験官が分かれ際に。


『君は本当に誰にも剣を習った事は無いのか?』


「はい、毎日素振りをしていましたが、剣を習った事はなく、自己流です]


僕は、試験官と戦ってみて、自分が魔法で身体強化して戦ったなら、簡単に勝てると思い。

身体強化しなくても、前世で好きでしていた剣道の突きを使ったら勝てたが、これ以上目立っては駄目だと思い。


最後は木剣を緩く握り、わざと木剣を飛ばされる様にしたのだった。


試験の結果は僕が1位、がナナファーナ2位で合格した。

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