第4話、成人の儀で

 今日は引っ越しで、僕は興奮しているのだ!!


 貧民街にある狭くて汚い、住み慣れた家の中を僕が暑いので半裸の姿で片付けていると。

お母さんが大事に仕舞っていた箱を取り出して懐かしそうに。


「此れはね、リュウトが捨てられていた時に着ていた服で記念に仕舞って置いたのよ」


 お母さんが肌着の様な服を広げていると、その肌着に付いていた鱗の様な物が外れてひらひらと舞い上がり。


 勢いよくリュウトの額に張り付き、赤く光り出して身体中が鱗に覆われてまるで、龍の肌の様になり。


 親子が驚いていると、赤い光が収まって鱗が身体に吸い込まれて見えなくなり。

元の人間の肌になったのでした。


 二人は顔を見合わせて同時に。


「ええーー!!い、今のは何だったの! ・・・・」


 僕は、余りの出来事に驚いたのだ! 自分が龍人族なので16歳の成人になる日が近づいて来た為に大人の龍人に成る成長の過程だと思い。


 僕は、以前からお母さんに隠していた前世の記憶があり、人族で無く龍人族で創造の魔法が使える事をいつか話そうと思っていたのだ。


 今、話した方が良いと思い。

隠していた事、全てを話すとお母さんは絶句して驚いていた。


 司祭長からリュウトの事を色々聞いていたのか納得したみたいなので、最後に僕は。


「お母さん、心配ないよ。今の現象は僕が龍人族だから多分に成長の過程だと思うよ」


「そうだと良いけど。でも、リュウトがどんな種族で異世界の記憶を持っていてどんなに成ろうとも、私の愛する子供だから、それだけは忘れないでね」


「うん、分かっているよ。それよりも片付けも終わったから旅館の女将さんにお礼を言いに行こうよ」


「ウッフフ・・・・ そうね。リュウトを一番可愛がって呉れた女将さんですものね」


 僕たち親子が旅館に行き女将さんに今まで世話になった礼を言うと。


「何を言っているのよ。今生の別れじゃあるまいし。それよりも王国でも有名なあの豪商のサイラス商会の会長の世話になるのでしょう。もしかしたらマリシャーヌは見染められたのかい」


「女将さん、バリサン様には綺麗な奥さんと子供もいるのよ。私みたいなおばさんに興味を持つ訳が無いわよ」


「ふ~ん! そうかしら。マリシャーヌもまだ捨てたもんじゃ無いのにね。アッハハ」


「女将さん、お母さんは誰にも渡しませんから大丈夫です」


「アッハッハッハー そうだねリュウトが付いているからね。 アッハッハッハ」


 僕たち親子は、いつも明るく面倒見が良い女将さんに今迄の礼を言い。別れて新しい住まいに行ったのでした。


 新しい住まいは、今までと違いあの貧民街の住まいと違い、部屋数が30以上もあり。広すぎて戸惑っていた。


 僕は2階の庭の見える角の居間と寝室、トイレ、シャワー室のある広い部屋を自分の部屋にした。


 創造の魔法を初めて使ってみて、最初は失敗して上手く出来なかった。

魔法は想像力が大事だと思い出し。


 作る物の材料はどんな物で出来ているかなど正確にイメージして魔法を発動すると上手くいき。


 前世の知識でベッドや机を作ると何となく前世に住んでいた部屋みたいになり。

生まれ変わっても好みは変わらないものだと思い1人で苦笑いをしたのです。


 お母さんの部屋も僕の部屋と同じ作りで、好みを聞き創造の魔法で作り替えると感激するほど喜ばれ。


 屋敷の中も変えて特にお風呂とトイレを電気の代わりに魔石を使い。


 前世の様に変えて此の世界には湯舟が無くシャワーだけなので広い湯舟を作り、トイレは勿論ウォシュレットにしたのだ。


 初めてトイレを使ったお母さんは驚いて悲鳴を上げたのだ。

慣れると清潔で気持ちが良いと言い、お風呂も疲れが取れて癒されると喜んでいたのです。


 王立学園の入学試験は成人の儀が済んだ後の3日後なのだ。

それ迄は2か月あるので僕は豪商のバリサンが用意してくれた教科書を見て試験勉強と魔法の使い方等を訓練していた。


 幸いな事に新しい住まいの屋敷の裏側は、広くは無く。

丘の様な低い山の森なので、其処の森の中で魔法を色々と試していたのだ。


 僕は、前世が物理学の研究生だったので魔法を物理学的に考え、魔法とは自然現象を強制的に起こす事だと思い、試したのです。


 例えば風魔法で竜巻や真空状態をブーメランの様にして小さな動物の首を切り落とす事が出来て。


 火の魔法で高温の光線ビームを出すことが可能になり、水魔法で絶体零度の霧を作り植物や動物を瞬間冷凍出来。


 空間魔法で無限空間の何でも仕舞う事の出来るマジックバックを作る事に成功したのです。


 その他に、隠蔽魔法と鑑定魔法、土魔法も使えるようになり。


 空間魔法で瞬間移動と記憶にある場所に移転出来る移転魔法が使える様に成り。


 前世の物理学を研究していた事が役に立ち、まだ威力は弱いが此の世界には無い色んな魔法を使えるようになったのです。


 孤児院の運営も軌道に乗り、新しく雇った双子の保母さん2人も良い人で、お母さんも孤児院の名を【希望園】にして。


 運営に慣れて来て孤児たちからマリー園長先生と呼ばれて30人いる孤児たちから慕われている。


 成人の儀が近づいたので隠蔽の魔法で王立学園に入学する為と将来の事を考えて。


 魔力量500職業は余りいない火の属性の魔法剣士、能力は5に設定して、他のステータスは全部見られないようにしたのです。


 成人の儀の当日にリュウトは、お母さんに付き添われて指定された初めての天使教会に行くと、教会の入り口の門の前には天使教会の聖騎士が大勢並んでいて。


 僕は教会に騎士がいるのを見て、


(教会に戦う騎士がいるが何で?)


 不審に思いながら門の中に入ると、若い牧師がいてその人に待合室に案内され。


 待合室には、成人の儀に参加する16歳の子供が親に付き添われて20人位いて、成人の儀が始まる頃には50人に増え緊張して待っていのだ。


 暫くすると、中年の牧師が来て付き添いの人たちは其のままで、成人の儀を受ける子供たちだけが礼拝堂に連れて行かれたのです。


 礼拝堂の正面には黄金に輝く大きな天使の像があり。牧師が【手を合わせて拝みなさい】連れて来られた子供たちが拝むと。


 礼拝堂の椅子に座って待つように言われ、其れから一人ずつ奥に部屋に呼ばれて魔法、能力と職業を授けられたのです。


 終わって出てくる子供たちは高い魔法、能力を授かった子は喜び低い魔法、能力の子は俯いていたのでした。


 リュウトの番が来て牧師に案内されれた部屋に入ると、部屋には白い服を着た若くて綺麗な女性が水晶の前の椅子に座っており、案内した牧師が。


「天使教の神の声を聞く事の出来る巫女様だ。挨拶をしなさい」


「僕はリュウトと言います。よろしくお願いします」


「リュウトですね。では、此の宝玉に触ってください」


 リュウトが宝玉に触ると赤く輝き、巫女様が。


「私の手に触りなさい」


 手に触ると巫女様が。


「貴方の職業は剣士、能力5火の魔法の属性、魔力量500です」


自分が設定したのと職業は違ったのですが、巫女様と牧師が同時に。


「素晴らしい! 能力5で火の魔法の属性で剣士とは・・・・・・」


 牧師が興奮して。


「君は天使教の聖騎士に成るつもりは無いか?  いや、是非なって欲しいが」


 リュウトは少し考える振りをしてから。


「すみませんが、僕は王立学園に入学するつもりなので卒業する時に考えます」


「ほうー! 平民なのに王立学園に入学する気なのか。試験に落ちたらいつでも天使教会に来なさい」


「はい、分かりました。ありがとうございます」


 牧師が、平民が王立学園に入学する事が出来るはずが無いと言外に含ませた言い方に少し憤慨したが、礼を言って母親の待つ待合室に戻ったのです。


 待合室に戻ってくるとお母さんが。


「リュウトどうだったの?」


 周りに聞き耳を立てている人たちがいるので。


「悪くなかったよ。詳しくは家に帰って話すから」


 僕の前に巫女様の部屋から戻った少女が両親に報告しているのが聞こえ。


「魔力量100,職業は料理人、水魔法属性で能力2と言われたわ」


僕が鑑定してみると少女のステータスは。


名前、スラシャ、

年齢16歳、人族

魔力量、100

水魔法能力、2

職業は現在無職


 少女が言っていたのと数値は同じだが、職業は現在無職と表示されてやはり職業が違っていた。


 帰る道を歩きながら天使教の事を考えて、ステータスを知られなくてホッとしたが。やはり、自分の結果やあの少女を鑑定して見て。


 天使教会の成人の儀の職業の授け方に疑問をもち、もしかして魔力量と魔法、能力は授けるのでは無く、鑑定して結果を伝えて職業は見えないのではないかと思ったのです。

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