第3話

 没になってから数日が経った休日の早朝、『ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!! 』と連続でインターホンが鳴る。


 ピンポンダッシュとしてもイタズラの域を超えているので注意する気満々で玄関の扉を開けると青色のキャリーバックを持ったホワイトブランドの長い髪を適当に頭の上で束ねてポニーテールを作っている女の子・二ノにのせゆながいた。


 二ノ瀬は俺のデビュー作『空気の読めない妹VS空気の読めない兄との抗争!! 』と2作目の小説『空気の読めない妹は兄のことが好きなようです!! 』のイラストを担当した女の子だ。


 ペンネームはいちごみかんで活動している。


「ちょっと話あるんだけど、家に上げて」


「りょーかい」


 俺は二ノ瀬を家に上げる。


 二ノ瀬はリビングのソファーに座ると口を開く。


「悠、小説家辞めるって噂になってたけど、あれは本当なの? 」


「辞めないよ。ただ、プロットがね……」


「ふーん。なら、悠専属のイラスト担当の私が手伝ってあげる! 」


 ゆなは決めポーズをしながら言う。


「それはありがたいけど、青いキャリーバックは何のために持ってきた? 」


 ゆなは決めポーズしながら目を泳がせる。


「で、何のために持ってきた? 手伝うだけなら必要ないだろ? 」


 俺がゆなを問いただしているとインターホンが鳴る。


 俺は出ると宅急便の人が荷物を持って立っている。


「この住所でお間違えないでしょうか? 」


「あ、はい。そうですね」


「4個ほど荷物があるので玄関に置きますね」


 そう言うと手際良く玄関に荷物を置いていく。


 荷物を置くと「ありがとうございました! 」と言っていなくなる。


 俺はリビングに戻るとにこやかな笑顔でゆなに「これはどうゆうことかな? 」と聞く。


「し、仕方ないじゃん! 4日前に急に立ち退きしろって大家さんに言われたんだもん! そ、それに、私が頼れるのは悠しかいないんだもん……」


「立ち退きって、何かやらかしたのか? 」


「老朽化が進んでるから取り壊されるんだってさ」


「4日もあれば新しい家が見つかるだろ? 」


 ゆなは上目遣いで「悠は私と暮らすのが嫌なの? 」と聞いてくる。


「そうじゃないけどさ……」


 するとニコッと笑って「じゃあいいよね! 」と俺に言う。


 俺はしょうがなくゆなを住まわせることにした。



 今、俺とゆなは話し合っている。


 何を話し合っているかというと部屋割りについてだ。


「悠と同じ部屋に住む! 悠の部屋広いからいいじゃん! 」


「それは嫌だ。パーソナルスペースだから」


「ヤダヤダヤダヤダ〜!! 悠と同じ部屋に住むの〜!! 」


 しまいには泣きながら駄々を捏ねる始末。


 はぁ〜、本当に20歳かよ……。


 これ、俺が折れないと終わらないな。


「わかった。なら一緒の部屋でいいけど、何があっても文句言うなよ? 」


「うん! わかった!! 約束する!! 」


 ホントかよ?


「ほら、顔洗ってこい。涙で顔がやばい……、ってなんで俺の着てる服で拭いてんの?! おい! 」


「いいじゃん」


「よくねーよ!! 」


 俺のTシャツはゆなの涙で汚れてしまった。



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