第2話
屋上で初めて会ったのその日から少女はたまに屋上に来るようになった。出会った当初は教師にチクられたり、ほかの生徒にここをバラすのかと内心落ち着かなかったがそんなことは無かった。
少女はたまにここに来るとただぼーーっと街を眺めるだけである。この学校は町の高台に位置する。それゆえに屋上からの景色は遠くの海まで一望できる。
街を眺める少女の姿はまるで僕のようだった。
いや、そんなことを思っては失礼か。
ある日、屋上から帰ろうとすると見知らぬハンカチが落ちていた。そのハンカチには
翌日僕は屋上にやってきた東雲に声を掛けた。
「……あ、あのっ」
思えば東雲と会話をしたことは一回もなかった。初めて出会ったあの日も挨拶されても会釈しかしていないような……。
そんなことを考えていると言葉が詰まってしまって上手く喋れない。
「あっ、そのハンカチ……!」
東雲は僕が手で握っていたハンカチを見て喜びを露わにする。
「えっと、落ちてましたよ…」
「ありがとう!」
「……っ」
東雲の笑顔を至近距離で浴びた俺はまた胸の鼓動が加速する。東雲といると落ち着かない俺は屋上から退散しようと思い、東雲を通り過ぎて屋上の扉に手をかける。
その時───。
「名前、なんて言うんですか」
東雲の声が僕の耳に木霊する。僕は東雲と関わっていいのだろうか。その資格があるのだろうか。名前を教えてしまったら全てが変わってしまうような、そんな不安が僕に付き纏う。教えてしまったら後で後悔するかもしれない、それでも彼女なら或いは───。
「
僕はそう言い残すと屋上を後にした。
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