第25話 体育祭総練習

 今日は体育祭の総練習が行われる日だ。本番さながらに一連の流れで練習をする。総練習ではあるが、みんな全力で取り組む。ただし、この総練習で優勝すると本番では優勝できないというジンクスがあるそうだ。

 オレたちのクラスでは、そんなジンクスなんて関係ないというくらいに意気込んでいる。自分が出る競技で必死になって頑張るだけだ。外へ出る前に、みんなで円陣を組んだ。

 そして外へ出ると、いつものひな壇へブロックごとに集まった、他の学年の先輩方もちらほらと来ていた。ブロックの全員が集まったところで円陣を組むことになった。みんなで掛け声を出して気持ちを一つにした。



 そして練習開始の時間になった。一連の流れでやるので、開会式からになる。来賓の挨拶などは形だけになるが。さっそく入場行進の場所に移動した。開会式の入場は最初の見せ場なので、グラウンドを半周歩くことになる。手足の動きや列の綺麗さも求められる。

 行進もしっかりと練習してきた。最初の頃の動画を見た時にはすごくグダグダで、自分でもカッコ悪いと思うくらいだった。だけど今は動きが揃っているし、腕がしっかりと伸びて前後に振れている。きっと保護者や先生に凛々しい姿を見せることができるだろう。

 入場した後は、校長先生や来賓の挨拶だ。そして選手宣誓がある。宣誓の代表は1年と3年から一人ずつ、立候補で選ばれる。立候補がいないと、推薦とか指名とかになるそうだ。まあ今年に関しては、賢斗が立候補した。昔から全体に通るしっかりとした声の持ち主だ。賢斗なら心配ないだろう。



 開会式の後はそのままラジオ体操だ。第一だけかと思っていたが、この高校では第二までするらしい。もちろん練習の段階で知っているが、やっぱり大変だと思う。体操だけでもそれなりに疲れてしまいそうだ。

 しかもただ体操をすればいいだけじゃないのだ。手をしっかりと伸ばしたり、動きを止めるところはしっかりと止めるなど、注意すべきポイントがたくさんあるのだ。体育科の先生が体操熱心だからなのだそう。

 体操の後は駆け足でひな壇へ戻る。そしてすぐに徒競走の招集がかかった。競技補助や事前の招集など、生徒が係をしている。なお、係全員が協議に参加するという可能性もあるので、先生と協力して進行していく。係の生徒にとっても、今日は本番さながらの練習というわけだ。



 ひな壇で待機している間はもちろん応援を頑張る。応援の力は、スポーツデイなどで重々承知していることだ。もちろん水分補給や友達との会話もダメというわけではない。思い出作りは大事なことだし、この時期であっても脱水症状を起こす可能性はある。

 オレは侑衣と一緒に観戦している。侑衣が出る競技は団体競技とリレー、それにダンスだ。侑衣の踊るダンスはとても上手で、衣装がすごく可愛いのだ。ますますゾッコンになってしまうだろう。

 そんなオレが出場するのは騎馬戦とリレーだ。リレーにもいくつか種類があって、男女別リレーや混合リレー、スウェーデンリレーがある。また得点には関係ないが、部活動対抗リレーもある。やっぱりリレー競技は最後の花形、逆転がかかって盛り上がる場面だ。

 次はいよいよ女子のタイヤ奪いだ。侑衣の頑張る姿を見て、しっかりと応援したいと思う。女子たちはみんな真剣に練習してきたし、体力トレーニングも頑張っていた。男子みんなで応援しなければと思っている。お互いに応援しあって、団結できるのが理想だろう。



 いよいよ女子が入場してきた。総当たりだと試合数が多くなってしますので、偶数クラスと奇数クラスでまず戦い、その勝者同士で優勝を争う形式だ。タイヤは全部で7個あり、より多く獲得したクラスが勝利となる。

 大きいタイヤが4個、小さいタイヤが3個ある。大小で個数のカウントが変わるわけではないので、どの順番で獲っていくかも戦略になるだろう。うちのクラスは準優勝だった。でも女子が頑張っている姿を見て、すごいなと思った。それにオレたちも頑張らなければと思った。

侑衣が戻ってきて、満足げな表情をしていた。オレは褒め言葉をたくさんかけてあげた。侑衣の頑張っている姿は、すごく素敵でカッコよかった。ますますゾッコンになってしまったな。

 侑衣はオレに頑張ってと言ってくれた。侑衣が応援してくれるだけで頑張れると思うし、どんな壁だって打ち壊して乗り越えることができると思う。侑衣がいてくれるから幸せを感じることができるのだ。

 この先もずっと、侑衣を大切にしていかなければと思っている。改めて心に誓ったのだった。



 男子の騎馬戦が近づいてきた。招集がかかったので、侑衣とグータッチをしてから集合場所に向かった。みんな集まっていた。賢斗が張り切って仕切っているみたいだ。オレと賢斗は同じ騎馬で、上に乗るのは小柄な颯斗くんだ。

 騎馬戦ではみんな裸足でするので、集合の段階ですでに靴を脱いできている。裸足がちょっぴり嬉しかったりするのだが。入場の時間になった。駆け足で入っていき、グランドの左右に別れて整列する。やっぱり騎馬戦も総当たりではないようだ。まあ総当たりだと疲れてしまうから、ちょうどいいくらいかもしれないなとは思うけど。

 上に乗る人はプラスチック製の兜をかぶって参加する。それを取られたらその騎馬は負けになる。先に全滅するか、10分立った時点でより多くの騎馬が残っているクラスが勝ちになる。

 そして試合が始まった。敵に近づくのか、それとも距離を取るのか。考えることが色々とある。上に乗っている人は見通しがいいので、いろいろ状況を教えてもらって連携を取りたい。

 どの騎馬も血気盛んになっている。女子の甘い声援が聞こえて、カッコいいところを見せようと必死になっているのだろう。モテたいという一心で頑張っているのが見え見えだ。それでも頑張るというのは素晴らしいことだ。



 オレの騎馬は中盤くらいで負けてしまった。それでも他の人たちが頑張ってくれたおかげで準優勝になることができた。オレたちも最初の頃に比べると俊敏に動けるようになったし、連携も取れるようになってきた。それだけでもすごい進歩だと思っている。もちろん、それだけで満足はしない。最後まで生き残っていられるように頑張るつもりだ。

 この後はお昼休憩だ。午後は応援合戦と目玉のリレーがある。教室に戻ってお弁当の時間だ。みんな制汗剤を使っている。窓が開いていなかったので、慌てて開けた。これからご飯を食べるのに、制汗剤の臭いが充満していたら嫌だと思うのが普通だろう。

 ある程度換気ができたところで、お弁当を取り出した。みんなきちんと手を洗ってきたようだ。いつものグループで固まってお弁当を食べる。オレは侑衣や賢斗たちと一緒だ。オレもだけど、みんなそこそこ疲れているようだ。

 あれだけ必死に頑張っていたのだから、疲れないわけがないだろう。このお昼の時間にしっかりと休息をとって、体力を回復させなければならない。いつもみたいな休み時間の過ごし方ではなくて、まったりと、のんびりと過ごすのがいいだろう。みんなそのつもりのようだ。



 午後の競技になった。まずは部活動対抗リレーだ。オレは出場しないが、賢斗が出るらしい。文化部も参加するし、しかも帰宅部まで出場するようだ。帰宅部は流石にネタ枠なんだろうけど、もしも帰宅部が勝ってしまうようなことがあれば、それはそれで面白そうだけど。

 文化部では吹奏楽部と家庭科部、茶道部が出場するらしい。運動部はその面子にかけて勝たなければと思っているようだ。それぞれのユニフォームで走るらしい。第1走者がスタートラインについた。みんなグラウンドの半周、150mを走る。ピストルの音と共にスタートした。

 どの部もみんな走るのが速い。精鋭の陸上部に引けを取らないくらいだ。みんなバトンパスがすごく上手い。きっとたくさん練習したのだろう。あっという間にアンカーになった。白熱した戦いになっている。なんと今トップを走っているのは帰宅部だ。陸上部すらも遅れをとっている。そしてそのままゴールして、帰宅部が優勝になった。



 その後は応援合戦だ。練習の成果を存分に発揮したいところだ。オレたちの順番が回ってきた。みんなでタイミングを合わせて、息を合わせたいと思う。太鼓の合図に耳を澄ませて、次の動きを頭で考えている。

 周りの動きをうかがいつつ、タイミングを合わせることができたと思う。無事に終えることができた。実際がどうであったかは、後で録画を見て振り返ることになるだろう。



 この後は最後のリレーだ。みんなすごく意気込んでいるみたいだ。必死になって走った。ブロックのメンバー全員の思いを背負って、全力で駆け抜けた。応援している側も今まで以上に盛り上がっていた。

 最後の瞬間まで諦めずに、全力で頑張った。後は閉会式だ。ひな壇前に整列して、合図と共に駆け足で前に進む。整列した後は、あいさつの後に得点発表だ。あくまで練習だとは言っても、やはり優勝する方がいい。

 その結果は、応援と競技で若虎が優勝することができた。総合では残念ながら準優勝だった。本番までは1週間しかないが、できることをやっていこうと考えている。行進だって優勝できるように、より高いクオリティーにしなければならない。最後まで全力で頑張るのみだ。

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