第20話 文化祭当日
いよいよ文化祭当日を迎えた。あまりにも楽しみすぎて、いつも通りには寝ることができなかった。朝からテンションが上がってしまう。今日は日曜日ということで、父さんも母さんも休みらしい。だからオレたちのクラスも観にきてくれるそうだ。
昼食は2年生かPTAの露店で買うことができる。無駄が出てしまわないよう、前売り券を購入している。回覧板で地域の人にも案内を出して必要な数を把握している。当日分もいくらかは用意しているらしい。食品ロスを減らすという考え方が基礎になっているのがこの学校のようだ。
オレの当番は14時からで、侑衣と一緒だ。だからそれ以外の時間はいろいろと見て回ることができる。まずは体育館に全員集合して開会式だ。校長先生のお話などがあって、各学年や生徒会の企画が書かれたパンフレットをもらった。
生徒会でもさまざまな企画を考えているようだ。企画のタイトルを見るだけでも、すごく好奇心をくすぐられてしまう。気になるものを侑衣と一緒に見ようと思った。
あとは文化部の企画もある。吹奏楽部はミニ演奏会をするそうだ。他にも茶道部では実際に点てたお茶とお菓子をいただくことができるし、華道部では花を生けることが出来る。伝統文化を経験するのはとても良いことだ。
まずは1年生の他のクラスを回ってみることにした。パンフレットによると、お化け屋敷やアーケードゲーム、宝探しといったものがあるようだ。侑衣の希望で、まずはお化け屋敷へ行くことになった。
侑衣は怖い物が好きなようで、すごくノリノリだった。オレもなんとかカッコ悪いところを見せないようにしたいと思う。しばらく並んで待っていると、オレたちの順番がやってきた。1つの教室なのでそんなに広くはないが、パーテーションをうまく使って迷路になている。
おそらくお化け役も生徒の誰かなのだろう。声でわかる人もいるかもしれないが、クオリティーの高い衣装やメイクだと怖いものは怖いに決まっている。大きな声で叫んだりしないようにしないといけないな。
侑衣とはぐれないようにしながら暗い通路を進んでいく。目の前に井戸を模したであろうものがあった。中から人が出てくるのだろうと分かっていたのに、いざそうなるとやっぱり驚いてしまうものだ。悲鳴こそ出さなかったものの、早足で前に進んでいった。
無意識のうちに侑衣の手を強く握りしめていた。侑衣の顔を見ていると、癒しを感じていた。その結果、完全に油断してしまっていた。通路の壁が突然下に落ちて大きな音を立てた。思わず飛び上がって後ろに下がった。壁のあった場所からお化けが姿を現した。
怖くなったのか、侑衣が抱きついてきた。オレは侑衣の頭を撫でながら、強く抱きしめた。侑衣が怖くないように声をかけながら先に進んだ。何度もお化けと遭遇しながらも、なんとか出口まで辿り着くことができた。2人とも泣いてはいなかったが、かなりの疲労感を感じていた。
気分転換として2年生の露店へ行くことにした。各クラスが自分たちで考えたメニューを提供している。どのクラスも行列になっていて大盛況のようだ。最後尾に並んでいると、賢斗と彼女が仲良くやってきた。2人は体育館で生徒会の出し物を見ていたそうだ。
手作りのフルーツサイダーやパンケーキなど色々なものを購入した。近くに設置されている飲食ブースに座って食べることにした。それぞれが違うものを買って取り分けるようにしていた。そうすればみんなが全メニューを食べられると思ったからだ。
唐揚げや焼きそばなど、出来たてですごく温かくて美味しそうだった。高校の文化祭でこれだけ美味しく作れるのがすごいと思った。唐揚げは冷凍食品を使っているとはいえ、味付けを工夫していた。焼きそばは食材を調理しているし、来年はオレたちがすることになるんだよなと思いながら味わっていた。
お腹が満たされたので、今度は体育館へ生徒会の企画を見にいくことにした。この後にあるのは学年対抗歌合戦らしい。なんと賢斗は実際に出場するんだとか。他にもオレのクラスから参加する人は何人かいるようだ。みんなそれぞれが楽しめているのならいいと思うけど。
オレもカラオケで歌うことはあるが、誰かに披露するほどではない。そういった場ではもっぱら聞くこと専門だ。今回は賢斗が出場するということで精一杯の応援をしたいと思っている。
歌う順番は事前にくじ引きで決めたらしい。完全にランダムということだ。くじの結果、賢斗は中盤くらいに歌うらしい。何の曲を歌うのか聞いてみたが、それは順番が来てからのお楽しみだそうだ。
いよいよ歌合戦が始まった。学年対抗ということで、個人だけでなく学年での優勝も決まるらしい。みんな自分で選んだ好きな曲を歌っているが、やっぱり自信のある曲で勝負に臨んでいるのだろう。観客たちもその歌に聞き入って、手拍子までしている。
そして賢斗の順番がやってきた。アニメキャラのコスプレでステージに出てきた。もしかするとアニソンを歌うのかもしれないな。声真似もしたりして、そのキャラになりきっているようだ。
しばらくパフォーマンスをした後に賢斗の歌が始まった。カラオケとかでよく聞いているけど、やっぱり上手いなと思う。歌声がスッと心に入ってくるようだ。賢斗が歌い終わると、体育館内に大きな拍手と歓声が響いていた。
すべての歌が終わった。審査員5人が10点の持ち点で採点する。校長先生と教頭先生、生徒会長の他に抽選で選ばれた生徒2人が審査員だ。しばらく経ってから審査結果が出たようだ。
まずは学年の結果発表だ。なんと1年生が優勝になった。みんな手を取り合って喜んでいた。その後に個人の結果発表があった。賢斗は惜しくも準優勝という成績だった。だけど、20人が参加してその中で2位なら十分すごいと思う。賢斗自身はまだまだ大したことないと謙遜していたが、オレはす賢斗のことをすごい親友だと思った。
お昼過ぎになったので、みんなでご飯を食べることにした。
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