第19話 もうすぐ文化祭

 文化祭当日まではあと1週間になった。個別の動画編集は終わっている。今は各グループで動画を一つにまとめて、間の演出等をつけている。字幕は必須ではないが、耳の聞こえない人でも楽しめるようにと全てのグループが自主的に作業してくれている。

 オレたちもメイキングとNGの映像を無事に作り上げることができた。正直いって、あまりにも面白過ぎて編集中もずっと笑いっぱなしだった時もある。すごくツボってしまって、1時間くらい作業が止まってしまったこともある。

 面白くて楽しいクラスだなと思う反面、少なからずイラッとしてしまう時もあった。まあそれもいい思い出になってくれるのだろうけども。



 教室を会場にして上映するので、飾り付けなどの内装を考えることになった。予算の残りが1万円ほど残っていて、それで必要なものを買うことができる。プロジェクターでスクリーンに映すため、暗幕で暗くする必要がある。

 飾り付けが光るものだと、映像が見えづらくなってしまうかもしれない。理科の先生に相談したところ、サイリウムのような灯りであれば、そこまで明る過ぎないのでいい演出になるのではということだった。確かにライブなどで使われるのだからちょうどいいかもしれない。



 クラスで共有してみたところ、みんな賛成だった。天井から吊るしたり、壁に貼り付けたりというアイデアが出た。光が継続する時間はそれなりに長いが、念の為に交換用も用意した方がいいだろうということになった。100円ショップでも売っているが、それを実際に使ったことがあるという人がいたので話を聞いてみた。すると安くてもしっかり使えるということだったので、100円ショップで買うことに決まった。

 予算は残っているが無理に全部使う必要はないらしい。残った金額は返納しなければならないが、打ち上げのためにお菓子やジュースを買うのであれば使っても良いそうだ。それを考えて、必要最低限だけ買うことにした。

 いざお店に行ってみると、さまざまな色のサイリウムが置いてあった。あまり色が多すぎても派手すぎるし、かといって1色では物足りないだろう。みんなの意見を参考にしつつ、5色を買うことにした。形もスティックタイプや円形タイプなどを買った。



 サイリウムは一度光らせてしまうと使い切りなので、当日に開封する。ネットの動画などで色合いを参考にしつつ、レイアウトを考えることにした。みんなからさまざまなアイデアが出てきた。すごく熱心に考えてくれている。

 そのアイデアを組み合わせて、完成形をイメージしていった。無事にレイアウトも決まり、あとは各グループで動画の最終チェックを行う。誤字・脱字も避けなければならない。言葉の表現に誤りがないかは、国語科である山下先生が確認してくれる。誤りはないものの、この表現にしたほうがより伝わるのではないかなどといったアドバイスをもらうことができた。



 いよいよ文化祭前日になった。みんなで協力してレイアウトを作っていく。サイリウムも設置だけは済ませて、明日になってから光らせる。当日の当番など、流れを最終確認した。サイリウムは上映の最中に切れてしまわないよう、合間の時間に早めに交換することに決めた。

 当日は教室内に入れる人数も限られている。保護者や先生、他クラスなどには事前に整理券を配っている。あとは当日に入れる枠をある程度設けてある。その当日券もすでに作り終えていて、確認作業も終わった。

 全ての準備が仕上がった。あとは明日の本番を迎えるだけだ。当日は当番の時に動画を観ることができるだろうけど、集中しすぎて教室の状況を把握できていないということになってもいけない。まだ時間があるので、みんなで動画を観ることになった。



 先生も一緒に観たいということで、学年主任の丹原先生もやってきた。撮影などの様子を見にきていたこともあったが、いざ完成した作品を見るのは楽しみだとワクワクしている様子だった。

 全員が席に着いたところで、さっそく映像を流した。オレたちも撮影した映像のチェックをしていたが、編集後の動画を観るのは始めてた。アニメーションやテロップなど、各グループの個性が溢れていた。

 オマージュやパロディと思われる動画もあったが、まあ多少ならいいだろう。中には完全オリジナルのストーリーで劇をやっているものもあり、クオリティーの高さに驚いた。



 最後に流れるのは、オレと賢斗の力作だ。まずはメイキング映像から流れる。すごく楽しそうな雰囲気が伝わる動画になっていて、クラスの絆を感じられるのではないだろうか。

 その後にNGシーンだ。最後に笑ってもらって終わりにする。改めて観ると、みんなたくさんのNGがあったようだ。そりゃあプロでもNGを出すことがあるのだから、素人であるオレたちはなおさらだろう。

 みんなが必死に頑張った結果、努力の結晶として出来上がったのが今回の作品なのだ。だけどNGシーンはみんなで大いに笑った。中には狙っただろうと思ってしまうものもあった。NGを出してしまったからこそ笑いに走る人もいた。



 この仕上がりなら、きっと観てくれた人を満足させることができるだろう。明日を楽しみにしつつ、みんな家路についた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る