第18話 撮影も順調
どのグループも順調に撮影が進んでいるようだ。オレと賢斗のほうも、当日のタイムテーブルが出来上がった。あとはみんなと共有して承認を得るだけだ。さっそく今日の作業を始める前に、プリントを配ることにした。
まずはみんなに一通り見てもらって、用事が入っているところがないかなどを確認してもらった。そして、みんなに納得してもらえたので、これで確定になった。スムーズに決まってくれてよかった。
そして、各グループの作業へと別れた。オレたちは動画素材の事前チェックだ。だいぶ動画が届いているのでテキパキこなしたいところだ。みんな工夫を凝らして撮影してくれている。グループごとに個性があふれ出ている。
まじめな雰囲気のものもあれば、お笑いまっしぐらのものもある。何よりみんなが楽しんで撮影しているのが伝わってきて、オレたちもおもわず顔がほころんでしまった。様々な構図やカメラアングルを活用していて、臨場感を感じることができる。
昨日までの分はすべてチェックすることができた。中にはあえてNGシーンを見せるものもあった。面白くてメンバーが出すことに納得していればいいと思う。
少し手が空いたので、撮影風景を見に行くことにした。メイキング映像でも取れればいいかなと思っている。みんなにその旨を伝えると、初めからそのつもりだったようで、自分たちで撮ろうとしていたらしい。なので、オレと賢斗の二人でメイキング映像を撮ってまわると伝えた。同時に、メイキングやNGシーンで単独の1本でもいいということにした。
各グループの結束は確固たるものになっていた。性別を問わないグループになっているが、みんなすごく仲良くなっていて、周りから見ていても絆の強さがひしひしと伝わってくるのだ。先生もすごく嬉しそうだ。
少しずつ日が短くなっているので、撮影に使える時間もさほど多くはない。暗い中での撮影は照明等が必要になるし、周りも見えにくくなる。今日の撮影はこれまでになった。とはいっても、編集作業などは屋内でできる。
文化祭準備期間中の下校時刻は遅くとも19時までになっている。バスの時間等で早く帰らなければならない人もほかのクラスではいるようだが、うちのクラスの生徒はみんな自転車か徒歩圏内だ。それもまたありがたいことだ。
教室で編集作業をしていると、松田先生と山下先生がやってきた。どうやら差し入れにたい焼きとジュースを持ってきてくれたらしい。まあ帰宅したら夕食があるだろうからということでそんなに量は多くないけど。もちろんそのほうがありがたい。夕食を食べれないと親に迷惑をかけてしまうのだから。
それはもちろんみんな分かっている。だから、差し入れと気遣いの両方にみんながお礼を言っていた。先生たちはこんなに団結しているクラスは初めてだと、すごく嬉しそうに言っていた。
最後まで気を抜かずに、でも無茶しない程度に頑張ろうと励ましてくれた。どのグループもすでに先生を交えて動画を撮っている。まあ、その扱いはいろいろだけど。とはいえ、先生も悪役を楽しんでいるようなのでいいのだろうけど。
みんなでおいしく食べた後は片づけをして下校になった。オレはやっぱりいつもの4人組だ。賢斗は彼女と手をつないでいる。オレは侑衣と腕組みをしながら歩いている。それぞれで幸せな瞬間をかみしめていた。
賢斗たちと別れた後は侑衣と二人きりだ。少しでも長く一緒にいることができればいいのにと常々思っている。ふと侑衣のほうを見ると、夕日に照らされた横顔に思わずドキッとした。すごく可愛いのだ。いうまでもなくいつも可愛いのだけれど、それ以上に、いつにも増して可愛いのだ。
すると、侑衣と目が合った。お互いにニコッと微笑んだ。心からの幸せを感じていた。必ずや侑衣を幸せにしなければと、再び心に誓った。分かれ道についてから、周囲に人がいないのを確認して侑衣をそっと抱きしめた。
侑衣の体温と鼓動が伝わってきた。頭をポンと撫でてから、歩みを進めた。家に着くまでの間、オレはドキドキが止まらなかった。
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