第13話 夏休みの自由研究
夏休みの宿題で、自由研究がある。高校生で自由研究とは珍しいことだろう。1人でも、グループでもいいそうだ。なのでいつものメンバー4人で取り組むことにした。
みんなで集まってまずはテーマを決めることにした。高校生らしいテーマは何かを考えてみた。せっかくなら一番を目指して頑張りたいところだな。
ひとまずテーマは「昆虫の生態」に決まった。かなり大雑把に決めたので、もう少し範囲を狭めないと負担が大きくなってしまうだろう。図鑑などをいろいろ眺めながら、細部を詰めていった。
女子2人も昆虫が大好きだそうで、すごくウキウキしていた。1人ずつ担当する昆虫を決めた。侑衣はカマキリ、オレはトンボになった。賢斗と賢斗の彼女も決めたらしい。それとは別に、4人みんなでカブトムシを観察することにした。夜の観察なので、誰かの親と一緒に行くことにした。
まずは図書館で情報収集をすることになった。図鑑や学術書など、いろいろな本を読み漁った。昆虫の世界にも奥深いものが数多くあるのだと分かった。
学校教育において使用する場合は必要最低限のコピーができるので、図書館で図鑑の写真などをコピーしてもらった。それとは別に実際に写真を撮るつもりだけどさまざまなアングルやシーンがあった方がいいと思う。
家で書けるように文章もコピーした。図書館で模造紙を広げてスペースを占領するわけにもいかないからだ。
昆虫の観察をしながら、同時に記事の内容も考えることにした。みんな文章を書くのは得意ではないけど、できる限り頑張ろうとお互いに鼓舞しあって取り組んだ。
さっそく観察に出かけることになった。2人ずつ分かれて行動することに決まった。そうなると自然にカップルで分かれることになるのだが。夕方4時に再集合することにして、二手に分かれた。
侑衣と一緒に2人で観察に出かけた。近くの大きな公園に緑が広がっている場所があり、そこでカマキリを見かけたことがあるからだ。公園に到着するとさっそく草むらの中に入った。バッタが飛び跳ねた。カマキリがいないか注意深く探した。
すると、カマキリが数匹で群れを成しているのを見つけた。持ってきた網で捕まえて、かごの中に入れた。万が一のことを考えて、一匹ずつかごに入れることにした。エサは自身より体の小さい虫だそうだ。観察するためにはしばらく飼育しなければならない。エサを捕食するところも見ないわけにはいかないのだ。
詳しく調べてみると、虫以外にもソーセージやかまぼこでも代用できるようだ。なので、虫を与えた時と何か違いがあるか調べてみることにした。カマキリの食事はエサをそのままかじりつくそうだ。肉食といえるかもしれないな。
公園に居たので、少し休憩することにした。2人で裸足になって、ブランコを漕いだ。風が気持ちよかった。裸足だとなおさらだ。そのあとは裸足で公園内を走り回ったり、滑り台やジャングルジムで遊んだ。高校生になったとはいえ裸足で遊びたかったので、周りを気にせず思う存分に楽しんだ。
さらにオレたちはトンボを捕まえることにした。ヤゴの段階から育てることができればよかったが、そこまでの時間はない。成虫のトンボを捕まえて観察することにした。川や田んぼにいるかもしれないと思い、移動することになった。
すこし街の中心部を外れると、数多くの田んぼが広がっている。川の水もきれいだ。いくつかの種類のトンボがいた。一種類よりは多いほうがいいだろうと思った。最終的に捕まえたのは、シオカラトンボと赤とんぼ、オニヤンマの3種類だ。カラフルで綺麗になったと思う。
トンボのエサは羽のついた虫などだ。なんと驚くことにトンボ同士で捕食することもあるそうだ。少し残酷だが、自然界ではごく当たり前のことなのだろう。ハエの幼虫でもいいそうで、釣り餌でもいけるようだ。
集合の時間までにまだ時間があったので、川遊びをした。もちろんいうまでもなく裸足なのだがwww
裸足で川に入ると、冷たくて気持ちよかった。やっぱり裸足が最高だと思う。学校でも裸足でいられたらいいのになと思ってしまった。
川遊びを存分に楽しんだオレたちは、裸足のまま賢斗の家に向かった。もちろん足の裏が真っ黒になってしまうだろうけど。
賢斗の家に着くと、二人ともすでに戻ってきていた。オレたちは足の裏をきれいに拭いてから入った。二人はセミとバッタを捕まえてきたらしい。それぞれで写真を撮った。何度か試行錯誤した末に、納得のいく出来栄えで撮影することができた。アングルや距離感が大事なんだなと痛感した。
あとはそれぞれでしっかりと観察をすることになる。昆虫も生きている命あるものだ。軽々しく扱ってはいけないと思う。自由研究という人間の都合でしかないのだ。責任をもって飼育しなければならない。今日のところは解散して、家に帰ることになった。観察の状況はその都度、グループLINEで共有することになった。
家までの帰り道、サンダルを脱いで手に持って裸足で帰ることにした。途中でクラスメイトに見られたりもしたが、気にせず歩き続けた。家の近くになったときに、小学生のグループから裸足なのを言われて恥ずかしくなったが、その子たちも感化されたのか裸足になって歩き始めた。そして、裸足が気持ちいいと満足そうに帰っていった。かくいうオレもすごく満足していた。
家に帰ってご飯やお風呂を済ませた後、さっそくトンボの観察日記を書き始めた。やっぱり文字に残したほうが分かりやすいと思った。しばらく観察しているうちに、すごく親近感を感じるようになった。愛着が湧いてきた証なのかもしれない。
昆虫ってこんなにも可愛いものなんだなと思った。虫嫌いな人は世の中に少なくないことだろう。もちろんそれを悪いというつもりはない。だけど、こんなに可愛いのに好きになれないのはもったいない気がする。価値観を押し付けてしまうのは、さすがにやりすぎなことだと思うけれども。
眠りにつく前に、カマキリが逃げ出してしまわないようにかごのふたを閉めた。中から開けることができない構造になってはいるが、空気穴が開いているので窒息の心配はない。安心して飼育と観察ができる優れものだ。そしてオレは眠りについた。
翌朝、自分のご飯より前にカマキリにエサをあげた。まずは小さな虫からあげてみた。空腹だったのか、勢いよく食べていた。その後はかまぼこを与えて様子を観察した。特段違いはなく、元気にかじりついていた。
数日間にわたり観察を続けた。するといろいろなことが分かってきた。今回の自由研究をやってよかったなと心から思うことができた。
今日はみんなでまとめる日だ。午前中から集まることにした。さっそくみんなの観察結果を共有した。虫が違えば、その結果も大きく違っていた。種類が違うから当然といえばそれまでなのだが。
課題として提出する際はA4サイズの用紙にレポート形式で書くことになる。表紙や目次はすでに作ってある。あとは序論から結論の形で書くのか、各昆虫ごとにパート分けするのかを話し合った。事前に先生に聞いたところ、どちらでもかまわないとのことだった。なので今回は後者の形式にすることになった。
各昆虫ごとのパート分けであれば、順番を決めて数字を割り振ってしまえば、あとは個々に仕上げることができると考えたからだ。その決定が功を奏した。おやつの時間、15時を迎えることになって、みんなの文章が完成した。自分が書いた文章では間違いに気づきにくいので、お互いに読みまわすことにした。すると、みんな完璧にかけているつもりだったが、どこかしらでミスがあった。
お互いに校正を重ねた末、しっかりとしたものが出来上がった。完成した時には、とてつもない達成感と喜びを感じていた。すべてをやりきって一気に緊張がほぐれていった。みんな表情がつかれていた。侑衣のお母さんが、みんな頑張ったからということで、ご馳走を用意してくれた。それぞれの家には自分たちで電話をした。
牛肉のステーキを用意してくれていた。さすがに申し訳ない気持ちになったが、侑衣と仲良くしてくれているお礼だということで、ありがたくいただくことにした。肉汁たっぷりで噛み応えのあるお肉だった。みんな幸せそうな表情をしていた。今日一日頑張った分、よりいっそう美味しく感じられる。
その後、デザートもごちそうになった。そしてあまり遅くならないうちに家路についた。今日はすごく充実した一日だった。
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