第11話 キャンプ場にて
バスに揺られること数時間。無事キャンプ場に到着した。誰も車酔いすることなく元気いっぱいなようだ。大人たちも息抜きのつもりで楽しみだそうだ。
駐車場にバスを停めたあと、管理事務所でコテージの鍵を受け取った。注意事項等を聞いてからコテージへ荷物を運んだ。コテージがあるのでその中で寝ることも出来るが、今回はあえてテントを使う。大人たちもテントの方がワクワクするそうだ。
コテージの周り一面には緑がいっぱいあふれていた。川の水は透き通っていて、足を入れると冷たくて気持ちよかった。
コテージの中に入ると、木のいい香りが漂ってきた。子どもたちは裸足になっていたので木の床がとても心地よかった。天井には素敵なシャンデリアとシーリングファンがあった。とてもいい雰囲気のコテージだと思った。
まずはテントを張ることにした。寝床はとても重要だ。しっかりと設営しないと、途中で崩れてしまいかねない。暗くなってから建て直すのは大変だ。
みんなで協力してなんとか設営することができた。大人たちは夫婦ごとに1人ずつだ。子ども用は2つだけお願いした。男女別でもカップルごとでも、どっちでもいける。親がいるので気まずいかもしれないと思ったが、気にしなくていいと言ってもらった。ただし、イチャイチャが盛んになり過ぎないようにとだけ釘を刺された。
テントを張り終えると、達成感を感じた。キャンプでなければ経験することができないことだろう。この後もいろいろなことを経験できるだろう。いっぱい思い出を作ることができたらいいなと思っている。
今回のキャンプは2泊3日の予定だ。大人たちはまず、食材や日用品の仕分けをしている。その間に子どもは外で遊ぶことになった。芝生が生い茂っていてフカフカしている。
まずはみんな裸足になって走り回ることにした。小学生の頃まではよく裸足になって遊んでいた。久しぶりの感触だったがフカフカで気持ちよかった。
その後は持ってきたボールでバスケをすることになった 。1on1だが4人同時にやるらしい。詳しく聞いてみると、ゴールが4つあるので2on2ではなく4人の個人戦ということだ。しいて言うならば、1on1on1on1といったところだろうか。それもなかなか面白そうなやり方だなと思った。
みんなそれぞれが作戦を考えていた。ボールを持っている1人が他の3人に追いかけられるという構図になるわけだが、それの繰り返しになり常に全力で走り続けなければならない。みんな裸足で駆け回っていた。
バスケが終わる頃にはみんなヘトヘトに疲れていた。夕飯を作るまでにまだ少し時間があったので、その時間でかくれんぼをすることにした。高校生になってかくれんぼなのかと思ったが、たまにはそういうのもいいだろう。芝生がフカフカ過ぎるのか、みんなサンダルを履こうとしなかった。かくいうオレも裸足のままだった。
みんな隠れるのが上手い。たかがかくれんぼだと侮るのは危険だ。頭脳プレイ、戦略ゲームになりうるのだと思った。
夕飯を作る時間になり、コテージ前へ行った。みんな裸足だったので、足の裏が真っ黒になっていた。ご飯は外でだったので、そのままでいいやと思った。
今日の夕飯はカレーライスとコーンポタージュだ。みんなで材料の下ごしらえから始めた。ご飯は飯ごうを使ってかなり本格的だ。それぞれの得意なことを分担して準備した。
ご飯が出来上がって席に着いた。テーブルとベンチも木でできていた。みんな相変わらず裸足のままだ。4人とも裸足が好きだからいいのだが。テントやコテージに入る前に毎回拭くのであれば、外でずっと裸足でもいいと言ってもらえた。もちろん中に入っても裸足のままなのだけど(笑)
みんなで作ったご飯はいつも以上に美味しく感じた。苦労を分かちあった分、よりいっそう美味しく感じるのだろう。それに、いっぱい動き回ってお腹が空いているからというのもあるだろう。
みんな完食した後、片付けをした。食器類は全部使い捨てだったので、大人で鍋などを洗っている間に、オレたちがゴミを捨てにいった。キャンプ場内にゴミ捨て場があるのはありがたいことだ。
帰る途中に泥が溜まっている場所があった。言うまでもなく裸足だったので、みんなで足を突っ込んだ。足が汚れてしまうが、泥が一番気持ちいいと思う。みんなで泥の感触をひとしきり楽しんだ。
コテージに戻ると案の定、大人たちに怒られたが、ちゃんと綺麗にすると言ったら納得してもらえた。
お風呂の時間になったが、さすがに男女別で入ることになる。屋根や壁がなく、見晴らしのいい露天風呂だ。空を見上げると、満天の星がキラキラと輝いていた。すごく綺麗な光景で、心が洗われる気持ちだった。
みんながお風呂に入り終わったあと、ビンゴゲームをした。大人もすごく盛り上がっていた。そこそこお酒で酔っているようだったが、面白いことを言って場の雰囲気を明るくしてくれた。
夜11時を過ぎたくらいにそれぞれのテントに入った。侑衣と一緒のテントになったが、さすがに周りに声がつつ抜けなので変なことはできない。手を繋いで眠りに落ちた。
何事もなく2日目の朝を迎えた。みんなぐっすり眠れたようだった。朝は大変なので、レトルト食品を使うそうだ。すでに湯せんをして用意されていた。
朝食の後にみんなでラジオ体操をした。のびのびと体を動かすことができて、すごくリフレッシュした。やっぱり体を動かすのは気持ちいいことだ。
その後はコテージとテントの掃除をした。テントの掃除をしている時に、ほうきで侑衣の足の裏をこちょこちょしてみた。どうやら足の裏が一番弱いらしい。しかも裸足なので、よりいっそうこちょばいようだ。でも侑衣はなぜか嬉しそうだった。ただ、すぐに侑衣に反撃されていまい、足の裏をこちょこちょされてオレも笑い転げてしまった。もちろんオレも裸足だったので、我慢なんかできなかった。恥ずかしさなんて気にならないほど笑い転げてしまうくらいに、すごくこちょばかった。オレもこちょこちょは足の裏が一番弱いのだ。でもなんだかいい気持ちだった。
少し時間があったので、足の裏文字当てゲームを二人でした。二人ともこちょばしに弱いのだから正解なんてできっこないのだが。もはやお互いにこちょばすための口実でしかないのだろう。案の定、二人とも笑い転げてしまった。だけど、大好きな侑衣との戯れがすごくうれしくて、気持ちよかったのは間違いない。
今日の午前中は、みんなで釣りをする予定だ。釣った魚がお昼の食材になる。もし釣れなかった時に備えて、食材を用意してあるらしいが、せっかくなら自分たちで釣った魚を食べたい。なかなかできない経験だからだ。
釣り竿とエサ、ルアーをレンタルして川に向かった。水が澄んでいて綺麗だった。山の湧き水なので飲めるらしい。さっそくみんなで一口飲んでみた。市販のミネラルウォーターよりもはるかに美味しい気がした。
裸足で川に入ると気持ちよかった。なので、そのまま釣りをすることにした。子ども勢はみんな裸足で歩いてきて川に入っている。その点でも、すごくキャンプを楽しめていることだろう。
魚はすぐに釣れるものではない。じっくりと待つことも釣りの楽しみのひとつだ。しばらく待っていると、浮きが小刻みに動いた。魚がしっかりと食いつくまでは待ったほうがいい。浮きが完全に沈んだのを見て、勢いよくリールを巻いた。逃げられないよう素早くしなければならない。無事に釣り上げることができた。「ヤマメ」という魚らしい。すごく綺麗な魚だった。
お昼までにみんな少なくない数の魚を釣ることができた。無事に食材を調達することができた。その場で串焼きにすることができる。塩と醤油、二つの味があるが贅沢にも両方を選んだ。しだいに脂がしたたりはじめて、あたりに香ばしいにおいが漂ってきた。賢斗が思わずよだれをたらしていた。
無事に焼き上がり、みんなで食べた。外はカリカリに焼けていて、中はジューシーだった。家で食べるのとはまた違った美味しさだった。新鮮なうちに食べるのも普段は経験できないことだ。串焼きの魚にかぶりつくというのも、キャンプだからこそ経験できることだと思う。
昼食が終わった後、大人たちはコテージへ戻った。オレたちはアスレチックをすることにした。くもの巣や丸太渡りなど、さまざまあるようだ。
管理人から裸足はだめだと言われたが、自己責任でやると言ったら認めてもらえた。このキャンプ中にオレたちはずっと裸足でいるつもりなのだ。裸足でアスレチック、野生児のようだからいいのだ。
アスレチックといっても、かなり本格的ですごくいい運動になる。普段は使わない筋肉を鍛えることもできた。遊びながら鍛えることができるというのはとてもいい。楽しみながらできるので、飽きない。継続しやすいのだ。
最後に、一番成績の悪かったオレがみんなからこちょこちょされることになってしまった。パンツだけを残してあとは全部取られてしまった。三人からこちょこちょされるなんて想像しただけでもやばいことだ。全身が弱いのだから。
30分以上こちょこちょされて思いっきり爆笑してしまい、涙とよだれで大変な状態になっていた。足の裏という弱点を知られてしまい、真っ黒な状態の足の裏をきれいにするという名目で三人からの集中砲火を受けてしまった。そうなったらもうオレはどうしようもない。おもらししながら罰ゲームを受け続けた。
結局オレは1時間以上にわたりこちょこちょされていた。みんなやりすぎたと謝ってくれたが、オレはうれしかったとお礼を言ってしまった。無意識だったが、きっとそういうことなのだろうと自覚した瞬間だった。
この後は夕食作りだ。今日のメニューは何だろうか。毎回違うものを用意しているといっていたので、カレーではないだろう。オレたちは真っ黒な足の裏のままコテージへと走っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます