第9話 プール日和
夏という季節はやっぱり暑い。家の中に居るというのに、たっぷりと汗をかいてしまう。こんな時にはプールで泳いで涼むのが一番だ。
うちの街には公営の屋内プールがあるので、日焼けを気にせずに泳ぐことができる。冬は温水を使用するので一年中泳ぐこともできるようになっている。なので、多くの人から人気を得ている。
しかも公営ということで市民は無料で利用できる。また市民以外でも、在学・在勤等の条件に当てはまれば同じように無料で利用できる。健康の維持および増進のための施策なんだそうだ。
みんなと誘い合ってプールへ行くことにした。みんな同じように暑さをかんじているらしい。即決でOKしてくれた。侑衣の水着を見ることができるんだなんて思ったりする。きっと可愛いに違いない。だって世界一の天使である侑衣なのだから。侑衣の水着姿を見て、癒されたいと思う。
それと同時に、侑衣がいてくれれば頑張れる気がする。いや、絶対に頑張れるという確信しかない。ぜひともかっこいいところを見せたい。失敗したりといったかっこ悪いところなんて見せれるはずもない。
オレが到着すると、すでにみんな来ていた。オレもそうだけど、みんな泳ぐのは久しぶりらしい。そんなに深くはないらしいので、なんとか泳げるだろう。小さい頃は川でよく泳いでいた。その時の感覚が少しでも残っていればいいなと思う。
当然ながら更衣室は男女別になっている。それはいうまでもないことだろう。男女で別れて着替えたら、シャワーを浴びた後にドアを開けてプールサイドに出る。もちろんプールサイドを走ることはあってはならない。飛び込みも安全確保のために禁止となっている。
髪の毛が絡まったりしないように、また、抜け毛が水の中に溜まらないようにという理由でスイムキャップの着用が義務付けられている。人間は誰しも、毎日自然と毛が抜けているそうだ。
さまざまな年代、老若男女を問わずたくさんの人が来ていた。みんな暑さをしのぐために涼みに来たようだ。中には競泳水着の人もいて、本気度が伝わってくる。かなり高齢の人がスムーズに泳いでいるのを見て、すごいなと思った。それと同時に、若いオレたちが負けてはいられないなとも思った。
けがをしてはいけないので、しっかりと準備運動をすることにした。全身をストレッチで伸ばして、軽く筋肉に負荷をかけておく。そのほうがよりよいパフォーマンスを発揮することができる。ついでに多少の筋トレや体幹トレーニングもやっておく。鍛え上げられた肉体を目指している。
さっそく水の中に入った。たいして寒くはなかった。ちょうどいいくらいに冷たくて気持ちよかった。侑衣の水着は水玉だった。思わず見とれてしまった。賢斗も彼女の水着に見とれているようだった。二人ともオレたちが見とれていることに気づいたようで、「泳ぎに来たんでしょ」と一喝されてしまった。
その後は泳ぎに夢中になっていた。久しぶりでも泳ぎ方は体に染みついていた。賢斗とどっちが速いか競争することになった。女子もお互いに競争するようだ。オレだって負けてはいられない。100%以上の力を存分に発揮するつもりで臨んだ。
女子のほうは侑衣が勝ったようだった。オレたちはというと、勝敗を決めかねるくらいに同時だったということで、再戦になった。まだまだ体力は十分に残っている気がしたので、間髪入れずにスタートした。賢斗はかなり疲れていたようで、今度はオレの圧勝だった。
侑衣がお祝いの言葉を言ってくれた。思わずオレは侑衣を抱きしめた。賢斗たちに悪いかと思ったが、二人も抱きしめあっていた。プールの中で抱き合っているのはあまりよくなかったかもしれないが。周囲の目はあったが、すごく幸せな時間だった。侑衣と喜びを分かち合うことができるということが、何よりもうれしいことなのだ。
だいぶ泳いだので、少し休憩をはさむことにした。体が冷えないように用意しておいたTシャツとハーフパンツを着た。売店があるので、そこでお昼ご飯を買った。みんな同じノリ弁当だった。オレはプロテインも買った。
ノリの下にはおかかも入っていた。おかずもバラエティー豊富で色鮮やかだった。温かい出来立てを食べることができて、とてもおいしかった。みんなお腹いっぱいで満足そうな表情をしていた。
ご飯の後はしばらくお腹を休めた。食べたものを吐いたり、おなかが痛くなってもいけないからだ。そのあとは、また泳ぐことになった。午後からもみんなすごく熱心に泳ぎこんでいた。表情がいつも以上に真剣だった。
水泳部並みに頑張っているといってもいいくらいなのではないかと思う。下手をすると水泳部でも一日中ずっと泳いでいるということはないのかもしれない。水泳部以上に頑張っているといっても過言ではないのだろう。
今日の一日を真剣に頑張ったことで、かなり向上があったのではないだろうか。タイムや綺麗なフォームなど、泳いだ意味があったと思う。みんなで来たことで、励ましあうこともできた。一人では途中で投げ出していたかもしれない。改めて、仲間の大切さを実感した。
みんな泳ぎ終えたころにはもう営業終了の時間になっていた。それだけ泳ぐことに夢中になっていたということだ。こんなに時間を忘れるほど夢中になったのは珍しいと思う。同時に、それを意識すると一気に疲れを感じるようになった。同時に今日の頑張りを感じてすごく満たされた気持ちになった。
真剣に泳いだ分、だいぶ疲れているようなので、今日は寄り道せずにまっすぐ帰ることにした。賢斗たちは学校に忘れ物を取りに行くそうだ。一緒に行こうかと提案したが、オレがすごく眠そうにしているのが伝わってしまったようだ。無理せずに休んでいいよと言われてしまった。なので、侑衣と二人で先に帰ることにした。
帰る前に、プールの玄関前で侑衣と唇を重ね合わせた。賢斗たちは学校まで走っていった。オレたちは自転車で来ていた。サンダルを履くのが面倒だったので、侑衣と相談して二人とも裸足のまま自転車置き場まで歩いていった。そして裸足のまま自転車に乗って家路についた。侑衣との裸足サイクリングという、ちょっと変わった時間を楽しんでいた。
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